そのポーター、実はダンジョンマスターにつき

G.G

文字の大きさ
上 下
18 / 32

第十七話 屋台を始める

しおりを挟む
僕とターニャがダンジョンに潜っている間に、オルトとダインはすっかり屋台を完成させていた。
売り物は角兎の串焼き。日持ちの関係から香りの良い樹木で燻蒸してある。
僕の前世の記憶から、甘辛いタレを試行錯誤して完成させた。これに漬け込んで炭火で焼く。
試食すると絶品だった。これは売れる。
炭はブートキャンプの森の木を使って作り溜め、串は竹林から。

屋台を出すとなると、浮浪児の汚れた格好ではまずい。
ある程度清潔感のある擬態にしないと売り上げに響くし、難癖付けられやすい。
しかしそうなると誘拐の危険性が増す。
護衛が要るな。どうしたものか。

ターニャと僕はダンジョンで狩りとレベルアップをする予定で、護衛には付けない。
カティとミルカはまだ十一歳と八歳の少女だ。実力も足りてない。
むしろ、誘拐の危険性大だ。

考えた末、従魔を召喚する事にした。
冒険者にはティムのスキル持ちが居て、よくモンスターの従魔を従えている。
良く居る雷狼で良いか。少しステータスを盛っておくと、少々高位の冒険者でも相手に出来る。
これなら誤魔化せるだろう。

―――――――――――――――――――――――
名前:アルファ
種類:雷狼(オルトの従魔)
体力:120
攻撃:250
敏速:250
防御:180
器用:87
知性:100
魔力:100
スキル:雷撃LV4・撃牙lv2・言語理解lv2
―――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――
名前:ベータ
種類:雷狼(ダインの従魔)
体力:120
攻撃:250
敏速:250
防御:180
器用:87
知性:150
魔力:100
スキル:雷撃LV4・撃牙lv2・言語理解lv2
―――――――――――――――――――――――

命名は安直だが、自分が呼ばれた事が判別出来れば良い。
マスター・カスタマイズのモンスターなので完全に制御できる。
知性を上げておいたのは、オルトやダインの命令を理解するためだ。
雷撃はLV4なので致命傷を負わせる事が出来る。
とにかく、二人の安全が第一なのだ。

皆の前に召喚する。
「うわあ、雷狼だ!」
言ってあるのに、皆及び腰だ。まあ、でかいからな。牛くらいある。
「だからこいつらは擬態スライムと同じだよ。ちゃんと言う事聞くし、危なくもない。こっちがアルファ、こっちがベータ。呼んでみて」

「あ、アルファ」オルトがおずおずと手を出す。
「わふっ」アルファが尻尾をふりふり近付いて、その手をぺろっと嘗めた。
「きゃー、可愛い!」女性陣から嬌声が上がる。
そうか?女性の感覚ってどうも分からん。
ダインも同様にベータを呼んで、手を嘗めさせた。

「となると、ギルドで従魔登録だな」
「三層から上がろうか」
「三層でティムしたって事にするんだね」
入り口にオルトとダインを待たせておき、合流してからギルドに向かう。

アルファとガンマを見て受付嬢が引きつっていた。
「この子達、従魔登録したいんだけど」
「えー、ターニャさん、ティム出来たんですか?」
「ティムしたのはアッシュだよ。あたいは弱らせただけ。ウチのオルトとダインの従魔で登録してくれる?今度、この子達が屋台を出すんでね。その護衛代わりなんだ」
「か、かしこまりました……」

これで少し噂になるかな?
雷狼を従魔にした少年にちょっかい出そうとする奴は激減するだろう。
ギルドの従魔鑑札を首に取り付け、見せびらかすようにギルドを出た。

翌日はいよいよ屋台開店。
雷狼はでかいので、背中に屋台の資材を負わせた。荷車を借りる予定だったが丁度良い。
屋台は組み立て式で、これも前世知識の応用だ。
組み終わると細長い炭火焼きコンロに炭火を熾す。生活魔法で着火は簡単。
やがて、良い匂いが漂い始めた。
特製のタレと肉汁が混じって実に食欲をそそる匂いだ。

一人、二人と客がつく。順調な滑り出し。
それを確かめて、僕とターニャはダンジョンに向かった。
「雷狼はもう良いかな。六層の火蜥蜴狩らない?お金になるし」
「そうねえ、この間の調査でかなりステータス上がったし」
「じゃあ、ブートキャンプへ、いざ!」

森へ入ってみると、カティとミルカが角兎を狩っていた。
例によってミルカが【バインド】で拘束し、カティが――一刀両断?凄いな。
「あ、アッシュ」カティが僕たちに気がついた。
「カティのそれなに?確か、たこ殴りで仕留めてたと思うんだけど」
「あー、【ブースト】とか言うのが使えるようになったみたい」
「身体強化系の魔法か」
おそらく魔力じゃなく霊力だな。

それから僕たちは火蜥蜴を狩りに行った。
こいつは火を噴く。でも【フリーズ】の魔法で口を凍らせると、案外楽に倒せた。
あまり数を持って行くとギルドで騒ぎになるから二体だけで打ち止め。
僕とターニャの相性って結構良いのかもしれない。

ダンジョンの部屋に戻ると、オルトとダインがもう帰っていた。
「早いね。もしかして、何かあった?」ターニャが眉をひそめる。
「あったことはあったんだけどね、昼過ぎに売り切れちゃって帰って来たんだ」
オルトが満面の笑顔。
「銅貨八百枚だよ。銀貨で、えーと、十六枚。すごくない?」
ダイン、大興奮。
「そりゃ凄い。一本銅貨二枚だから四百本売ったのか」
頭をなでなでしてやる。嬉しそうだ。可愛いなあ、もう。

「それで、何かあったんだね?」ターニャが念を押す。
「あー、うん、ちょっと絡まれてね」
「この場所は誰の許しで使ってんだ、なんて凄まれて」
「うん、で商業ギルドの許可証があるよ、って言ったらよこせ、って言うんだ」
「そしたらオルトがアルファに許可証を咥えさせて、どうぞ、って」

それからオルトとダインは腹を抱えて笑った。
「あのおっさん、ビビりまくって尻餅ついてやんの。他のおっさん共がこっち来ようとしたけど、ベータが、グルルー、って唸って前に出たらへっぴり腰で逃げ出しちゃった」
「ほう、二匹ともちゃんと護衛できてたんだな」

その噂は二、三日でアンザック中に広がり、屋台にちょっかい掛けてくる奴は居なくなった。
あっという間に売り上げは金貨を超えるようになり、カティとミルカは角兎狩りに追われた。

オルトとダインは角兎を狩るどころじゃなくなったからね。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

とあるおっさんのVRMMO活動記

椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。 念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。 戦闘は生々しい表現も含みます。 のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。 また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり 一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。 また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や 無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという 事もございません。 また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。

お布団から始まる異世界転生 ~寝ればたちまちスキルアップ、しかも回復機能付き!?~

雨杜屋敷
ファンタジー
目覚めるとそこは異世界で、俺は道端でお布団にくるまっていた 思わぬ″状態″で、異世界転生してしまった俺こと倉井礼二。 だがしかし! そう、俺には″お布団″がある。 いや、お布団″しか″ねーじゃん! と思っていたら、とあるスキルと組み合わせる事で とんだチートアイテムになると気づき、 しかも一緒に寝た相手にもその効果が発生すると判明してしまい…。 スキル次第で何者にでもなれる世界で、 ファンタジー好きの”元おじさん”が、 ①個性的な住人たちと紡ぐ平穏(?)な日々 ②生活費の為に、お仕事を頑張る日々 ③お布団と睡眠スキルを駆使して経験値稼ぎの日々 ④たしなむ程度の冒険者としての日々 ⑤元おじさんの成長 等を綴っていきます。 そんな物語です。 (※カクヨムにて重複掲載中です)

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

処理中です...