パラレル ― 異世界の鬼っ娘と繋がった俺

G.G

文字の大きさ
上 下
2 / 18

1-2 神ルシュと巫女アムネ

しおりを挟む
戦意を喪失した兵士達を見てダルクとナオトは表面上は落ち着いていたが、内心は彼等が襲ってこないのかと不安を抱く。どうにかハッタリで誤魔化す事は出来たが、流石に1万の兵士を相手にするのはダルク達でも不可能である。こちらにユニコーンが居たとしてもそれを操るダルクは只の人間のため、彼女が狙われたらひとたまりもない。


(な、ナオ様……この後はどうするのですか?)
(えっと……ちょっと待って、カンペ見ますから)


ダルクが若干涙目でナオトに次の行動を尋ねると、掌に事前に書き込んでいた文字を確認し、ナオトは兵士達に指示を与えた。


「お前達の探している将軍と隊長達は我々が捕縛している!!もしも街の住民や他の村の人間に危害を加えれば彼等を殺す!!」
「な、何だと!?」
「これがその証拠の将軍の兜だ!!確かめろ!!」


空間魔法を発動させてナオトは兜を放り投げると、慌てて兵士達はギルス将軍の装備している兜だと気づき、顔色を青くさせる。まさか本当に将軍が捕まっているとは思わず、よりにもよって自分達を指揮する立場の人物を人質に取られた事を理解した。

彼等は将軍の指示を受けてここまで行動してきたが、その指示を与える将軍が居なくなれば自分達はどのように行動すればよいのか分からない。普通ならば将軍の次に偉い役職の人間が役目を引き継ぐのだが、一般兵以外の上の立場の人間は全員が先にダルクとナオトが捕獲している。


「さあ、お前達は自分の国へ帰れ!!このまま退散するというのならば我々も危害は加えない!!将軍達も国へ送り返そう!!」
「そ、それは無理だ!!このままみすみすと引き返せば俺達は処罰されるんだ!!」
「そうだ!!将軍が捕まって逃げ帰ったなんて報告すれば俺達は殺されちまう!!」


流石に将軍を人質に取られてもこのまま引き返す事は巨人軍も出来ず、何の成果も上げないうちに国へ引き返せば厳罰は免れない。そんな彼等の返答は予想済みなのでナオトはリーリスから教えて貰った対処法を行う。


「ならばお前達の協力者であるノーズ公爵の元へ戻るがいい!!そしてこう伝えろ、帝国は全てお前達の行動をお見通しだとな!!」
「な、何だって!?」
「どうしてノーズ公爵の事まで……」
「ノーズ公爵が帝国を裏切り、貴方達を引き寄せたのは既に調査済みです。後日、この地に100万の帝国兵が押し寄せるでしょう!!」
「ひゃ、百万だって!?」


ダルクの言葉に巨人軍は震えあがり、いくら自分達が最強の軍隊だと自覚していても流石に100万人という言葉を聞けば焦りを隠せない。実際には今の帝国にそれほど数の兵士を動かす余裕はないが、既にノーズ公爵の存在が知られている事を知った巨人軍はダルクとナオトの言葉が真実だと信じた。


「ど、どうすればいいんだよ……100万なんて数、俺達だけでどうしようも出来ねえぞ?」
「う、うろたえるな!!そんな数の兵士が現れるはずがないだろ!?」
「でも、こいつらはノーズ公爵が俺達に手を貸している事を知ってるぞ?それにこんな得体の知れない魔法使いやユニコーンを操る女騎士がいるなんて聞いてねえぞ……」
「そこ!!聞こえてますよ!!口を慎みなさい!!」
「ひいっ!?すいません!!」


こそこそと内緒話を行う兵士達にダルクが注意すると、ナオトは彼等が素直に従ってくれない事に焦り、反対の掌に書いていたリーリスの考えた対処法を実行する。


「ノーズ公爵の元に戻るというのであれば我々は街へ引き返そう。だが、もしも約束を破って街に攻め入ろうとしたら将軍を含めた捕虜を全員処刑する!!そうなればお前達は国へ戻っても厳罰は免れないぞ!!」
「そ、それだけは……!!」
「頼む、止めてくれ!!あの人に俺達は一生ついて行く事を誓ったんだ!?」


将軍が処刑されるかもしれないという不安に駆られた忠誠心の厚い兵士達は跪く。この軍隊の中には長年の間、ギルスの元で働いていた兵士も多く、ギルスの人望を利用してナオトは指示に従う様に命じた。


「ならばさっさと公爵の元へ戻れ!!そして公爵に伝えろ、大人しく降伏するのならば今回限りはお前の首だけで許してやる。但し、これ以上に反抗する気ならば一族郎党全員を処刑するとな!!」
「ナオト様、流石にそれは酷いのでは……」
「いや、書いてあるのを呼んでいるだけですから……ごほんっ!!さ、さあ、早く行動しろ!!」
『…………』


ナオトの発言にダルクの方が不安を抱いてしまうが、あくまでもナオトの言葉はリーリスが考えた作戦であるため、彼の本意ではない。ナオトに命令された兵士達は黙り込み、やがて一人の兵士が前に出る。


「分かった……お前の指示に従う。そうすれば将軍達は解放してくれるのか?」
「約束しよう。但し、お前達の行動は我々が常に監視している事を忘れるな。もしも街や村に近付こうとすれば捕まえた捕虜を処刑するぞ!!その事を忘れるな!!」


兵士の承諾を得たナオは即座に空間魔法を発動させ、黒渦の中に魔獣達を移動させる。最後にユニコーンに乗ったままダルクと共にナオトも姿を消すと、残された兵士達は自分達の目の前で消えてしまった彼等を見て呆然とした表情を浮かべる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

転生王子はダラけたい

朝比奈 和
ファンタジー
 大学生の俺、一ノ瀬陽翔(いちのせ はると)が転生したのは、小さな王国グレスハートの末っ子王子、フィル・グレスハートだった。  束縛だらけだった前世、今世では好きなペットをモフモフしながら、ダラけて自由に生きるんだ!  と思ったのだが……召喚獣に精霊に鉱石に魔獣に、この世界のことを知れば知るほどトラブル発生で悪目立ち!  ぐーたら生活したいのに、全然出来ないんだけどっ!  ダラけたいのにダラけられない、フィルの物語は始まったばかり! ※2016年11月。第1巻  2017年 4月。第2巻  2017年 9月。第3巻  2017年12月。第4巻  2018年 3月。第5巻  2018年 8月。第6巻  2018年12月。第7巻  2019年 5月。第8巻  2019年10月。第9巻  2020年 6月。第10巻  2020年12月。第11巻 出版しました。  PNもエリン改め、朝比奈 和(あさひな なごむ)となります。  投稿継続中です。よろしくお願いします!

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

処理中です...