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しおりを挟む「おまえらー!! 次だ! 次ぃ!! 続けていけばいつかは本物にぶち当たる!!」
残された手がかりが本当に魔王の子の髪の毛ならばね、と内心で勇者は独りごちた。
わざわざ教えてなどはやらない。勇者はそこまで親切でもなければ、騎士団に対して友好的でもなかった。
(しかし……)
そして勇者の本当の懸念事項は別にあった。
それは、もしもこれが意図した罠ならば、いや、すべての情報を総合して考えるに明らかに意図した行為にしか思えないが、しかしだとしたらあまりにも先方はこちらの手口に精通しすぎている。
これではまるでこちらには追跡魔法があり、その欠点ですらもを知った上での罠のようではないか。
(こちらが想定しているよりも、敵に回している相手は手練れなのかも知れないな……)
慌てて撤収する騎士団の最後尾をのんびりと歩いてついて行きながら、勇者は思案をめぐらせた。
勇者が騎士団達から行動を離脱することを宣言したのは、その数時間後の事だった。
騎士達はすわ抜け駆けか単独行動など手柄を独り占めにする気かと色めき立ったが、事実はなんのことはない。
勇者としてのくだらない業務のために、城に呼び出されたのだ。
*
「ねぇ、おじさん。意外に騎士団の人達は追ってこないのね」
「ああ、まぁな。今頃連中、いろんな辺境をほっつき歩いているだろうよ」
ぱかぱかと馬を走らせながら、ジルはすっとぼけて見せた。
イヴとて何もせずにここまで順調に逃亡が続けられると考えるほどおめでたい頭の持ち主ではない。しかしどうやらジルには皆までイヴに説明する気はないようだった。
まぁ別に構わないのだが。
城下町を出発して10日が経過していた。
ちなみに似顔絵が出回ってしまった今となっては変装はもうあまり意味がないため、イヴは髪を染めるのをやめた。ジルも耳としっぽを出しており、リオンだけが角を隠すためにカツラをかぶっていた。
指名手配の似顔絵ではイヴは灰色の髪、ジルも獣人とは記載されていないため、そのほうが都合が良かったのだ。
3人は太い街道を外れた細い道をのんびりと馬車にゆられて進んでいた。
周囲は見渡すばかりに湿地帯で、ある意味良い景色だ。
自生する植物がいい具合にわさわさと茂っていて、まるで追っ手達から姿を隠してくれているかのようだった。
湿地帯は場所にもよるのだが、だだっ広い沼地のみがただただ広がっているところもあれば、このように緑豊かなところもあって予想外に退屈はしなかった。
膝の上にのせたリオンのカツラの髪にリボンを結んであげながら、イヴはのんびりとそこらを指さす。
馬車の操縦は完全にジルにお任せコースである。
「見て、リオン。あそこに鳥がいるわ」
「なんのとり?」
「何かしらねぇ、黄色いわねぇ」
「おいおまえ、馬車の操縦を変わってやろうとかいう気はねぇのか?」
暢気に雑談する2人に、ジルは苦言を呈す。
ジルもそろそろ手を休めたい気分だ。だだっ広い何もない道をただひたすらに馬車を走らせるというのは難しい技術は特に必要ないが、肩が凝る。
しかし、そのジルの言葉にイヴはわざとらしく目を見張ってみせた。
「あら、何を言っているの、おじさん。わたしは今休憩時間よ」
「だから俺だって休憩したいって……」
「おじさんはよく休憩してるじゃない。主にわたしが働いている時に」
ぐ、とジルは胸を押さえて呻く。
そこは押されると弱いジルの急所だった。
残された手がかりが本当に魔王の子の髪の毛ならばね、と内心で勇者は独りごちた。
わざわざ教えてなどはやらない。勇者はそこまで親切でもなければ、騎士団に対して友好的でもなかった。
(しかし……)
そして勇者の本当の懸念事項は別にあった。
それは、もしもこれが意図した罠ならば、いや、すべての情報を総合して考えるに明らかに意図した行為にしか思えないが、しかしだとしたらあまりにも先方はこちらの手口に精通しすぎている。
これではまるでこちらには追跡魔法があり、その欠点ですらもを知った上での罠のようではないか。
(こちらが想定しているよりも、敵に回している相手は手練れなのかも知れないな……)
慌てて撤収する騎士団の最後尾をのんびりと歩いてついて行きながら、勇者は思案をめぐらせた。
勇者が騎士団達から行動を離脱することを宣言したのは、その数時間後の事だった。
騎士達はすわ抜け駆けか単独行動など手柄を独り占めにする気かと色めき立ったが、事実はなんのことはない。
勇者としてのくだらない業務のために、城に呼び出されたのだ。
*
「ねぇ、おじさん。意外に騎士団の人達は追ってこないのね」
「ああ、まぁな。今頃連中、いろんな辺境をほっつき歩いているだろうよ」
ぱかぱかと馬を走らせながら、ジルはすっとぼけて見せた。
イヴとて何もせずにここまで順調に逃亡が続けられると考えるほどおめでたい頭の持ち主ではない。しかしどうやらジルには皆までイヴに説明する気はないようだった。
まぁ別に構わないのだが。
城下町を出発して10日が経過していた。
ちなみに似顔絵が出回ってしまった今となっては変装はもうあまり意味がないため、イヴは髪を染めるのをやめた。ジルも耳としっぽを出しており、リオンだけが角を隠すためにカツラをかぶっていた。
指名手配の似顔絵ではイヴは灰色の髪、ジルも獣人とは記載されていないため、そのほうが都合が良かったのだ。
3人は太い街道を外れた細い道をのんびりと馬車にゆられて進んでいた。
周囲は見渡すばかりに湿地帯で、ある意味良い景色だ。
自生する植物がいい具合にわさわさと茂っていて、まるで追っ手達から姿を隠してくれているかのようだった。
湿地帯は場所にもよるのだが、だだっ広い沼地のみがただただ広がっているところもあれば、このように緑豊かなところもあって予想外に退屈はしなかった。
膝の上にのせたリオンのカツラの髪にリボンを結んであげながら、イヴはのんびりとそこらを指さす。
馬車の操縦は完全にジルにお任せコースである。
「見て、リオン。あそこに鳥がいるわ」
「なんのとり?」
「何かしらねぇ、黄色いわねぇ」
「おいおまえ、馬車の操縦を変わってやろうとかいう気はねぇのか?」
暢気に雑談する2人に、ジルは苦言を呈す。
ジルもそろそろ手を休めたい気分だ。だだっ広い何もない道をただひたすらに馬車を走らせるというのは難しい技術は特に必要ないが、肩が凝る。
しかし、そのジルの言葉にイヴはわざとらしく目を見張ってみせた。
「あら、何を言っているの、おじさん。わたしは今休憩時間よ」
「だから俺だって休憩したいって……」
「おじさんはよく休憩してるじゃない。主にわたしが働いている時に」
ぐ、とジルは胸を押さえて呻く。
そこは押されると弱いジルの急所だった。
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