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棒付きキャンデーは どれだけ美味しいのだろう

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 落っこちた人は、やはり軽傷だったようだ。
 駆けつけたおまわりさんにボコボコにされて連れていかれた。
 容赦ない。
 が、自業自得。
 彼を止めてくれたおまわりさんに付き添われて、お屋敷街に入る。おまわりさんの持ち場ではないということでここでお別れだ。
 キャンデーを渡そうとしたら、これが仕事なので受け取れないと断られた。 
 そこからは裕福なお家のお屋敷を渡り歩いた。
 私を捕まえようとする集団はほとんど捕縛されているらしく、あまり姿を見かけなくなった。
 それでも時折現れて、私の邪魔をしようとする。そうするとメイドさんやお嬢様が出てきて、

「私の知ってる冒険者様は、そんな卑怯なことはしませんわ!」

とか、

「さすが冒険者様、このお嬢さんの味方をなさるんですね!」

 とか棒読みで声をかける。そうすると、

「お、おうよ!」

 とか顔を赤くして言って、素直に通してくれる。冒険者様達、チョロい。
 私はキャンデーの大盤振る舞いだ。
 しかし何軒目かのお屋敷を出たところで、ついに数人の男達に囲まれた。

「なんでまたいちいちつっかかってくるのよ。私たち、初対面よね。こんなことされる理由がないわ」
「義を見てせざるは勇無きなりって昔の人も言ってるぜ」
「同じギルドの仲間が力をあわせている。理由はそれだけで十分だ」
「力を合わせてこその冒険者だ」
「一人はみんなのために。みんなは一人のために!」

 男達は何かに陶酔するかのようにウンウンと頷く。
 それが犯罪一歩手前であるのをわかっていないのは一目瞭然。

「私を追いかけてきた人たちは、おまわりさんに捕まったわ。ここだってすぐに人が来る。あなたたち、おしまいよ!」
「明日の夜まで静かにしてもらうだけだ。手荒なことはしないし、食事だって用意する。人が集まってくる前に、黙って俺たちについてきてくれ」
「お・こ・と・わ・り!!」

 私は囲んでいる男達の口に、ラスさんのキャンデーをつっこんだ。

「・・・フッ、対価を受け取ったわね。さあ、通してもらうわよ」
「クッ、なんて卑劣なマネを!」
「てめぇ、人間じゃねえ!」
「あー、どの口がそれいうか。これか、この口か」

 まだ受け取っていない男たちの口にも、容赦なく甘い棒を放り込んでおく。
 よし、この場は制圧した!




「みんな~ありがとね~」

 今、私は上等な服を着た子供達に囲まれている。
 そう、新たな協力者たちだ。
 彼らは冒険者が近づいてくると、

「冒険者のおじさん、銀髪の女の人が向こうに走って行ったよ」
「冒険者のおにいさま、アタシと遊んでくださいませ」
「転んじゃって歩けないの。おうちまで送ってください」

 等々、子供らしいあざとさで大人を翻弄していく。
 彼らはお屋敷街のあちこちで活躍しているが、それを統括する年かさの、と言っても小学校中学年くらいの男の子がいて、彼らの活動をチェック。まとめてキャンデーを要求してくる。

「嘘の報告をすると、ここでは遊んでもらえなくなるし、父様たちの顔に泥を塗ることになるから、ちゃんと正直に報告するよ。それにね」

 子供だけで動くと危ないから、かならず見えないところに使用人が隠れているという。
 子供から見えていないだけで、かなりの数の大人がめっちゃいるんですけど。

「がんばってね、フカのお姉さん。僕たち駄菓子屋に行けないから、キャンデーがすごく楽しみなんだ」

 だから、フカって誰だよ。



「ちくしょおぉぉぉっ! 間に合わなかった!」
「まて! まだ代官屋敷に入っただけだ! ギルド本部に着かなきゃチュートリアル達成じゃない!」
「そうだ。あきらめるのはまだ早い! 俺たちの団結力を示すのはこれからだ!」

 代官屋敷の門をなんとかくぐった
 後ろから怒号が攻め寄せてくる。
 知るか。
 息切れしながら屋敷の扉を開ける。
 ここはゴール直前。
 その私をアルが迎えてくれた。
 私、やりきる一歩手前?
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