地味に見せてる眼鏡魔道具令嬢は王子の溺愛に気付かない

asamurasaki

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六十四話 初めてのダブルデートとトラブル ②

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私は魔法が飛んでくる!痛いんだろうか?でも他の人や街が被害に遭ってしまうと思うと、怖くなってその場から身動き出来ず、ギュッと目を閉じた。

「エンヴェリカ!!」

セントバーナル様の切羽詰まったような声が聞こえてきた。

私は目を閉じたまま両拳を握り締めて、衝撃を受ける覚悟をしたけれど、私の前でパンッという音が聞こえて、恐る恐る目を開ける。

私の前には広範囲の防御魔法が張られていて、ゴーガバンズ侯爵令嬢の魔法が弾かれて消えた音だったようだ。

目を閉じていたからわからなかったけど、私の防御魔法は間に合わなかったはず!

そしてすぐにギュッと抱きしめられた。
セントバーナル様が私を抱きしめてくれている。
走ってきてくれたのだろう、息が少し荒くなっている。

「セントバーナル様…」

「エンヴェリカ!何て無茶なことをするんだ!」

セントバーナル様の怒っている声が聞こえてくる。

「こ、こんなところで魔法なんて放ったら他の人たちも街も大変な事になると思って…気が付いたら前に出てて…」

「エンヴェリカ!お願いだから無茶しないでくれ」

「ミーナ!」
「ジョルジュ!」

ジョルジュ様も走って戻ってきたようで、ミーナを抱きしめている。

「ちょっとエンヴェリカ放れろ!わたくしのセントバーナル様から放れろと言っているのよ!
全部全部エンヴェリカお前が悪いよ!
諸悪の根源はお前よ!」

前方からゴーガバンズ侯爵令嬢のの興奮した声が聞こえる。

「警備兵目障りだ。
早くその者を連れて行け!」

「はっ!申し訳ありませんでした!」

警備兵たちが謝罪してから令嬢を連れて行ったようだ。

ゴーガバンズ侯爵令嬢はずっとわたくしのセントバーナル様と叫び、そして私に対して罵詈雑言を浴びせながら去って行った。

「はぁ~本当に間に合って良かった」

セントバーナル様が私を抱きしめながら安堵の溜息を吐いた。

「間に合った?セントバーナル様が防御魔法を?」

「ああ、ジョルジュはちょうど突き飛ばされた子供を抱き起こしているところだったしね。

私でも何とかなったよ」

いやいや、凄いですよ!
自分のところではなく私たちのところ一体に、それも広範囲にすぐに防御魔法を展開出来るなんて!

「凄いです!あれだけの防御魔法を自分の周りじゃなくて、他人の周りにですよ!
それも一瞬でした!
もちろん無詠唱ですよね?!
セントバーナル様すご過ぎます!」

「いや、そんなことはどうでもいいんだ!
エンヴェリカ!護衛の前に出るなんてしてはいけないことだよ。
わかってる?」

セントバーナル様が抱きしめていた腕を解いて、私の両肩に手を置いて私の顔を覗き込んできた。

あっ!つい前に出てしまったけど、これは王子妃としても貴族令嬢としてもしては駄目なことだった。

それにセントバーナル様の防御魔法に興奮して、感激して言ってしまった。

「セントバーナル様申し訳ございません!」

「本当にわかっているのかな?」

「は、はい!もちろんです。
反省しています!」

私はごめんなさい!って気持ちを込めてセントバーナル様を見上げる。

「まあ、その話も後にしよう。

とりあえず私たちの正体がわかってしまったから、今日はもう帰ろう。

ジョルジュ、ミーナは大丈夫かい?」

「セントバーナル様ありがとうございました。

私も油断していました。
申し訳ございません。

大丈夫です。

馬車をこちらに来るように手配しています。
すぐに向かいましょう」

「わかった」

私たちは護衛に囲まれて、馬車の所まで歩いて行って、すぐに馬車に乗って王宮へと向かった。


王宮に到着して、私がいつも滞在させてもらっている部屋にミーナと共に入った。

セントバーナル様とジョルジュ様は報告する必要があるということで、私とミーナを部屋に送ってすぐ出て行った。

クララとミーナの侍女がお茶を用意してくれたので、ミーナとソファに向かい合って座る。

「ミーナ本当にごめんなさい」

「どうしてエンヴェリカが謝るの?」

私が謝るとミーナが聞いてくる。

「ゴーガバンズ侯爵令嬢は私の姿を見て、冷静さを失くして魔法攻撃をしてきた。

セントバーナル様が間に合わなかったら、ミーナやクララ、侍女、護衛が怪我をしていたわ」

私は申し訳なくて俯く。

「それはゴーガバンズ侯爵令嬢が悪いのよ。

エンヴェリカは私たちを庇おうとしたのだもの。
ありがとう。

でも咄嗟だったとはいえ、護衛もいたのだからエンヴェリカが危険をおかしちゃ駄目よ」

ミーナはお礼を言ってくれたけど、厳しい顔をしている。

「そうだったよね、ごめんなさい」

私はシュンッとする。

「エンヴェリカ、貴方は王子妃になるのだから、守られなければならない存在なのだと自覚してね」

「はい!すみませんでした!」

ミーナに言い聞かせるように言われて、私は頭を下げて謝罪した。

「それにしても街中で魔法攻撃してくるなんて、あの令嬢は何を考えているのかしら?

何だかまともな感じがしなかったわね」

ミーナが怒りの混じった呆れた顔で言う。

本当にゴーガバンズ侯爵令嬢は以前よりも何だか目が血走っていて、普通ではなかった感じがした。

「ゴーガバンズ侯爵令嬢は領地で、侍女とご両親に監視されながら生活していると聞いていたのだけど、まさか王都の街にいるなんて…。

抜け出してきたのかしら?」

「そうだと思うわ。

周りに侍女や護衛も居なくて一人だったみたいだから、隙を見て一人で抜け出したのではないかしら?」

何だか現実じゃない信じられない気持ちになる。

「何故そんなことをしたのかしら?

そんなことをすればご両親にもゴーガバンズ侯爵家を継いだお兄様たちにも迷惑をかけることになるのに…」

「そうね、私たちが学院の同級生だった頃のゴーガバンズ侯爵令嬢は品行方正で大人しく真面目な方だと思っていた。

でも実際は違ったわね?

あの王妃殿下主催のお茶会でも思ったけれど、自分は侯爵令嬢だという矜持が凄く高くて他の人たちを見下しているところがあったわ。

知らなかったけれど、ゴーガバンズ侯爵令嬢もセントバーナル様に懸想していたんでしょ?

ご両親と共に領地に行って王都に出入り禁止になったけれど、彼女はずっと自分は悪くないと思っているのではないかしら?」

ミーナの言葉に私は頷くしかない。

でもゴーガバンズ侯爵令嬢が起こしてしまったことで、今後ゴーガバンズ侯爵家はどうなってしまうのだろう?

「前ゴーガバンズ侯爵様と現ゴーガバンズ侯爵様は真摯に私に謝って下さって、とても実直で真面目な方という印象だったわ。

これからゴーガバンズ侯爵家はどうなってしまうのかな?」

私はゴーガバンズ侯爵令嬢が街中で幼い少年がぶつかってきたからって突き飛ばしたり、魔法攻撃したことは許せないけど、複雑な気持ちになる。

正直令嬢が平民の少年を突き飛ばしたくらいでは騒ぎになっても、良いのか悪いのかわからないけれど、身分のことがあるから令嬢の方は罪には問われないはず。

例え怪我をさせていたとしても令嬢は貴族で少年は平民だから。

平民の少年の方が罪に問われてしまうかもしれないが、そこはセントバーナル様が何とかしてくれるだろう。

通常貴族は例えお忍びでも護衛が付いているからあの時のように平民とぶつかったりはしないはず。

ゴーガバンズ侯爵令嬢が誰も連れず一人でいたから起こったことである。

でも街中で魔法を発動したことは不味いと思う。

「前回の噂の件ではエンヴェリカに謝罪して、ゴーガバンズ侯爵様が爵位をご子息様に譲って、王宮での地位も辞して領地に奥様と令嬢と一緒に行くことで、許しを得ることが出来たけど今回のことではそれでは済まないでしょうね」

ミーナも複雑な顔をしている。

「そうなるわよね?」

私は一度だけだけど、お会いした前ゴーガバンズ侯爵様と現ゴーガバンズ侯爵様のことを思うと、落ち込んでしまう。

「エンヴェリカが落ち込んでも仕方ないんじゃない?

令嬢が勝手に領地を抜け出したとはいえ、侯爵様たちも監督不行き届きなのは間違いないもの」

「そうよね…

せっかく4人で楽しくお出かけしていたのに申し訳ないわ」

「だからエンヴェリカのせいじゃないわ。

また時間作ってお出かけすればいいのよ!

それに楽しかったわよ」

ミーナがニッコリと笑う。

「私も久しぶりにミーナに会えて、とても楽しかったわ」

「ね、4人でお出かけすることをダブルデートと言うのだそうよ」

ミーナがお茶を口にしてからそんなことを言う。

「ダブルデート?」

「そう、ダブルデート。
元々ヴァネッサお姉様の専属侍女だったジーンから聞いたのだけど、平民は恋人同士二組が一緒にお出かけすることをダブルデートと言うんですって!」

「そうなんだ!恋人同士…」

ジョルジュ様とミーナはもう結婚していて夫婦だけど、セントバーナル様と私はまだ婚約段階だから恋人同士になるのかな?

「ふふっ恋人同士って言葉良いよね」

ミーナが悪戯っ子のように笑う。

私は顔が赤くなった。

「エンヴェリカもう照れちゃって可愛いわね」

「もう!誂わないで!」

私はが口を尖らせて抗議する。

ふふふっとミーナと顔を見合わせて、微笑み合った。


その後、セントバーナル様とジョルジュ様が戻ってきて、ジョルジュ様とミーナは久しぶりにウォンタートル伯爵様たちと会うことになっていて、王都の邸へと帰って行った。


その後、私はセントバーナル様にはこんこんと説教をされてしまった。

私がしたことは自分の身を危険に晒しただけではないと。

私がしたことで例え何も被害に遭わなかったとしても、護衛、従者、侍女は職務を果たしていないと処分を受けるのだと聞かされて、申し訳なくて私は謝りながらシュンッとした。

今回は護衛も皆も処分を受けないようにセントバーナル様がしてくれた。

そして私はとにかく無茶はしないように、ちゃんと守られることも職務なのだと何度も言い聞かされた。

あと、令嬢を制御出来なかった警備兵たちは本当なら王子妃となる私と瞳の継承者様の奥様であるミーナを危険な目に遭わせたとしてかなり重い罪になるそうだけれど、そこも陛下から処分を任されたセントバーナル様が、自分たちがお忍びで市井に下りていたことも鑑みて、今回だけということで半年間の減給と報告書という名の反省文で済ませるつもりだという。

セントバーナル様に長い長い説教をされた後で、私はそのまま王宮に泊まらせてもらうことになった。


それから1週間後にゴーガバンズ侯爵令嬢とゴーガバンズ侯爵家の処分が決まった。

ゴーガバンズ侯爵令嬢は街中で騒動を起こして、魔法を発動してしまうという危険行為をしてしまったことで、修道院より厳しい魔術研究所送りになったという。

修道院なら出てくることが可能だけれど、魔術研究所はたぶん一生出ることは許されないと思う。

それだけ街中で魔法を発動したことは罪が重い。

またゴーガバンズ侯爵家は現侯爵様から爵位の返上の申し出があり、貴族位も返上されて平民となることが決まったそうだ。

とても残念な事だけれど、セントバーナル様から聞いたのだけど、このまま貴族でいたとしても他の貴族たちに見向きもされなくなるだろうから、侯爵様たちだけでなく、領民に被害が及ぶ可能性があることから領民の為にも他の貴族に任せる方が良いと侯爵様が判断したのだという。

でも前侯爵様も現侯爵様も優秀な方で、領民の信頼も厚いそうで領地で平民となり商人として生きていくことになったのだそう。

平民になっても、領地の為に生きていきたいという侯爵様の意向を国王陛下が了承されたのだという。

「前ゴーガバンズ侯爵は父息子ともとても優秀だから、商人としても大丈夫だと思うよ」

セントバーナル様はそう言う。

「そうですか…」

私はそれでも何だか悲しい気持ちになった。

「エンヴェリカ、いくら娘一人がやらかしたこととはいえ仕方のないことなんだ。

侯爵も娘の監督責任を問われるのも当然だしね。

あれで侯爵家に対しても甘い処分にしたら、王都の民にも貴族に対しても示しがつかないし、王家は舐められてしまうことになる。

まだ侯爵たちの評判が良かったから娘一人がしたこととして平民になることで済んだと言える。

家族全員修道院送り、侯爵だけでなくその一族全員も何らかの処分を受けることも有り得たことなんだ。

それをさせない為に侯爵が先に動いたんだよ。

これくらいなら大丈夫だと思わせてはいけないんだよ」

そうだよね。
それが許されれば、甘く見られてしまうんだよね。

私もこれから甘い考えではいけないんだよね。

前侯爵様と現侯爵様の姿が目の前に浮かんで悲しくなったけど、このことを私は自分の心に留めておくことにした。


一方ゴーガバンズ侯爵令嬢のことも聞いたが、まったく反省の色が見られないそうで、魔術研究所に連れて行かれても、何でこんなところにいなければならないのか!早く出せとずっと言っているそうだ。

自分のせいで家族に迷惑をかけて、爵位貴族位を返上させるまでになったのに、『お父様もお母様もみんなわたくしの貴族令嬢としての立場を奪ったばかりか、心配もしてくれない役立たずなのよ!』と言い、家族に対して悪いことをしたという気持ちもないそうだ。

今後、魔術研究所で強制的に1日限界まで魔力を吸い取られる日々となるそうだ。

修道院などで自らの意思で魔力を供給するのとは違い、魔術研究所では専用の枷により自分の意思ではなく魔力を限界まで奪われ、それは苦痛を伴うそうだ。

私は侯爵様たちのことはとても残念だと思ったけれど、令嬢のことは仕方ないことなんだと思った。
















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