地味に見せてる眼鏡魔道具令嬢は王子の溺愛に気付かない

asamurasaki

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六十一話 令嬢たちと今後の予定

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王妃殿下主催のお茶会が終わってから、王宮内のある部屋で王妃殿下から今回のお茶会でのテスト結果をお聞きした。

緊張したし、ゴーガバンズ侯爵令嬢の態度や嫌味に怒りを感じたけど、ここで彼女の煽りに怒りなどを表情に出してしまえば、それが弱みになってしまうと思い、気を引き締めた結果、表情に出なすことなく対処することが出来たようだ。

彼女に負けたくないと思ったことが良かったのかもしれない。

王妃殿下に顔に出ていなかったことを褒めて頂いた。

王子妃教育が始まった最初の頃、どうやって感情を表に出さないようにすればいいかわからなかった。

今でも油断するとすぐに表情に出てしまうから注意されているんだけれども。

その方法も人それぞれなので、自分で見つけて実践していくしかない。

私は自分で気を引き締めて!しっかりしよう!と気合を入れると大丈夫なのかもしれない。

あと今日などは負けたくないと思ったからだから、私は負けず嫌いなのかもしれないわね。

とりあえず表情に出なかったのは良かった!
 

あと1つ下の貴族学院に通っているクロスベリー辺境伯令嬢、ヘレン様、サンフェリー侯爵令嬢、レスティーナ様にお聞きした話題についても褒めて頂き、駄目だったところもあったけど、今日は合格を頂くことが出来た。

とても嬉しかった。
もちろん反省すべき点は多々あるけれど、とりあえずホッとひと安心だ。

王妃殿下とお別れした後、今日はもう王子妃教育は終わりだったので、魔道具研究室に向かった。

早く終わった時は魔道具研究室で魔道具の研究をしながらセントバーナル様を待つことになっている。

セントバーナル様が私がお茶会に参加することを心配していたので、安心してもらいたくてセントバーナル様に早く会いたくて、ソワソワしてしまった。


でもそのうち研究に真剣になって、どれくらいの時間が経ったのかわからないくらい一人で魔道具に向かい無心で研究していた。

コンコンとノックの音が聞こえて、セントバーナル様だ!と席を立って「どうぞ」と言いながら、扉の方へ向かう。

「エンヴェリカ!」

セントバーナル様が私の名を呼びながら、歩み寄ってきて私を抱きしめた。

もう抱きしめられるのは同じみなったので、慣れてきた。

「セントバーナル様お疲れ様でした!」

「エンヴェリカもお疲れ様!
今日はどうだった?大丈夫だった?」

セントバーナル様は余程私を心配してくれたのか、早速お茶会のことを聞いてきた。

私はセントバーナル様に研究室にあるソファに座ってもらった。

侍女を呼んでお茶を用意してもらい、今日の出来事を話した。

「そうか、エンヴェリカの対応は素晴らしかったね」

「セントバーナル様ありがとうございます」

セントバーナル様にも褒めてもらえて、嬉しくて思わず笑顔になる。

「うん、母上も褒めていたんだろう?」

「はい!褒めて頂きました。

駄目だったところもありましたが、総体的に合格を頂くことが出来ました。

ホッとしましたし、とても嬉しかったです」

セントバーナル様はうんとひとつ頷く。

「母上は普段はとても明るくて穏やかなのだけど、教育中は敢えて厳しくしていると思うんだ。

その母上がエンヴェリカを褒めたのだからとても良かったということだよ」

セントバーナル様が自分のことのように嬉しそうな顔をしている。

「そうでしょうか?

でも王妃殿下の対応はやはり凄いですね。

私はまだ程遠いのだなと思いました」

「母上は経験があるからね。

エンヴェリカはまだまだこれからだよ。

それでも今でも素晴らしいと私は思うよ」

「セントバーナル様ありがとうございます。

そうやってセントバーナル様が心配してくれて、褒めて下さるから私は頑張れているのですよ」

「エンヴェリカそれは…」

セントバーナル様は手で顔を覆う。
 
「セントバーナル様?どうかしたのですか?」

「…素直なエンヴェリカは私には破壊力抜群で…」

何だか照れてる?

「???」

「ふふっ、エンヴェリカにはずっと私の前では今のままでいて欲しいなということだよ」

セントバーナル様が美しく輝かんばかりの笑顔をされた。

「??はい」

私はどういうことだろうと思いながら笑顔で返事した。


王妃殿下のお茶会から数日後、すぐにゴーガバンズ侯爵令嬢たちの処分が決まった。

あのお茶会のことは王宮内ですぐに噂になったそう。

敢えて王妃殿下が噂を流されたのかもしれない。

それにゴーガバンズ侯爵様とゴーガバンズ侯爵令嬢のお兄様、ゴーガバンズ小侯爵様がすぐに対処をされた。

王都のクエスベルト邸に私に謝罪文が届き、すぐに謝罪したい旨が届いた。

私はゴーガバンズ侯爵令嬢には会いたくないなと思っていたけど、謝罪を受け入れると言うと、お母様がその旨を侯爵様にクエスベルト子爵として文書を送ってくれた。

そして翌日にゴーガバンズ侯爵様と小侯爵様が邸に謝罪に訪れた。

ゴーガバンズ侯爵様とゴーガバンズ小侯爵様は丁寧で真摯な謝罪をして下さった。

そしてゴーガバンズ侯爵令嬢は邸の自室で謹慎となっていること。

ゴーガバンズ侯爵様は当主を小侯爵様にお譲りになり、奥様と令嬢と共に領地で暮らしていくこと、令嬢がもう王都に足を踏み入れることはないとおっしゃれた。

ゴーガバンズ侯爵令嬢は領地で監視されながら、生活していくことになると言われて、それでお許し頂けますか?と言われた。

実質的に侯爵様と夫人、令嬢が王都追放となった形だ。

私は謝罪してもらって、令嬢とはもう会わないようにしてくれればいいと思ったけれど。

令嬢だけでなく侯爵様、夫人まで王都追放ということまではと思ったけれど、侯爵様たちが謝罪に来られると聞いてセントバーナル様も邸に来られて、私、お父様とお母様と共に謝罪の場に居合わせてくれていた。

「ゴーガバンズ侯爵卿の対応、それから今までの国への貢献もありますからね。
今回はそれで手を打ちましょう。

ですが、最後通告ですよ」

セントバーナル様が無の表情で冷静に言われた。

「第ニ王子殿下のご慈悲心に刻みます。

申し訳ありませんでした」

と侯爵様小侯爵様は常に低身低頭な姿勢を崩さなかった。

私は噂を流したことと、お茶会での言動だけで処分が厳しいのではないか?と思った。

でもセントバーナル様は甘いくらいだという。

侯爵様の今までの行ないと素早い対応をしたから今回はそれくらいになったと言った。

本当ならゴーガバンズ侯爵令嬢は領地に引き籠もるだけじゃなく、修道院送りになり、侯爵家も何らかの処分があるところだったという。

セントバーナル様曰くゴーガバンズ侯爵様も小侯爵様もとても優秀で仕事が出来て、評判も良い方なのだそう。

だからそれくらいで済んだのだと言った。

貴族っていくら娘がしたとはいえ、一度の過ちで家ごと大変なことになるのだなと思った。

侯爵家自体は無傷に思えるけど、王宮内で噂になってしまったことで確実に評判は落ちてしまったという。
 
これから小侯爵様は奥様と共にかなり頑張って、落ちた評判を取り戻さなければならないらしい。


ゴーガバンズ侯爵令嬢と一緒に噂を流した二人の伯爵令嬢と一人の子爵令嬢の家もゴーガバンズ侯爵様の後すに親が動いて、同じように謝罪に来られて、同じような処分となった。

彼女たちはもう社交界に姿を現すことはないだろうとセントバーナル様が言っていた。

私は貴族社会の厳しさを知った。


それから日々が過ぎて、年が変わり今年は国王陛下在位15年の記念のパーティーがにある。

王太子殿下の誕生日パーティーと近い日にちで、またバタバタとしている。

王族で公で大規模な誕生日パーティーをするのは国王陛下と王太子殿下だけだ。

王族みなの誕生日パーティーを大々的にすると、それだけでかなりの予算を使ってしまうことから
公なパーティーをするのは国王陛下と王太子殿下だけになっている。

私はそのことにひと安心する。

セントバーナル様も同じことを思っていたと知って二人で笑い合った。

一見華やかで国中で大々的にお祝いされて良いように見えるけれど、国内の貴族だけでなく国外からの来賓もあったりすると、主賓はそれだけ大変なのだ。

私も王子妃教育を受けてきて、そういうことがよくわかるようになった。

といってもセントバーナル様も王族で、この国ではいったん王族として生まれると爵位を賜ることなく一生王族として、生きていくので王族の公式の行事には必ず参加しなければならないし、外交なども必要となってくる。

それでも王妃殿下やナターシャ様に比べると、私が担う役割はまだマシな方だ。

セントバーナル様も私も国王陛下夫妻、王太子殿下夫妻と違う政務を担っていくことになるが、その重責は比じゃないと思う。

国のトップに立たれる国王陛下夫妻、そしてその後継者である王太子殿下夫妻にはそれだけ大きな責任を背負っていらっしゃるのだ。


私はまだ王子妃教育が残ってはいるけど、自分で言うのも何だけど、がむしゃらに必死に熟してきたから残りが少なくなってきて、少し余裕が出てきた。

そんな国王陛下の在位パーティーが近くなったある日に、久しぶりに王都にやってきたミーナと会うことになった。

そこでセントバーナル様と私、ジョルジュ様とミーナで市井に出てみることになったのだ。

ミーナと私が今王都で評判のフルーツのタルトが美味しいという店に行きたいという話を通信魔道具でしていて、そのことをセントバーナル様に言うと、それなら4人で行こうということになったのだ。

私はセントバーナル様と婚約してから、学院に通っていた以外は王都の邸と王宮の往復で私用でどこかへ出かけたことがなかった。

元々お洒落に興味もなく美味しいものも王宮で十二分に頂いていて、王都の街に行きたいと思ったことがなかったのである。

私はずっと魔道具の研究が出来れば幸せだった。

でもミーナと友達になってロザリナ様とも仲良くなり、王都のお洒落なお店や評判の美味しいお菓子のお店の話を聞くようになり、興味が出てきたのだ。

私も見目を気にするようになったり、美味しい甘味のお店に興味を持つようになったのだなと思った。

最初はミーナと私で侍女護衛を連れて街に行ってみようと言っていたけど、セントバーナル様とジョルジュ様が心配して、駄目だと言うので4人で行くことになった。

もちろんセントバーナル様と一緒に街に出るなんて、初めてのことで私はとても楽しみにしている。

セントバーナル様も幼い頃にアルスタイン様とクリスフォード様と一緒にお忍びで何度か出かけたくらいしかないと言う。

実はアルスタイン様とクリスフォード様はよくお忍びで市井に下りていらっしゃったのだとか。

でもセントバーナル様はあまりそのようなことはされていなかったようで、「とても楽しみだ」と言われていた。










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