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五十三話 不安と自信のなさが溶けていく
しおりを挟むミーナの声の後、セントバーナル様の声が聞こえて私はハッとして振り返る。
「セントバーナル様…」
セントバーナル様の顔を見て私は泣きそうになる。
セントバーナル様が私の側まで歩み寄ってきて、私の両手を取って引き上げて私を正面に立たせる。
そしてセントバーナル様がキュッと私を抱きしめてきた。
「セ、セントバーナル様?」
私はこの場にジョルジュ様もミーナもいることで慌てる。
でもセントバーナル様が私の後頭部に手を持って自分の胸にしまうように私を囲ってきた。
「私の可愛いエンヴェリカ。
そんなに不安になっていたんだね。
気付いてあげれなくてごめんね」
「待って待って下さい!
どうしてセントバーナル様が謝るんですか?!」
私はセントバーナル様の胸の中で頭を左右に振る。
「エンヴェリカが何か心配事があるって気付いたのはパーティーの前だったから、もっと早くに気付いてあげてればって思ったんだよ」
「そんな…セントバーナル様は何も悪くないです!」
「ミーナの言う通りだよ。
私の愛するエンヴェリカを例え自分であってもそんなふうに言わないで。
私はエンヴェリカだから好きなんだよ。
エンヴェリカじゃないと駄目なんだ」
「セントバーナル様!…」
セントバーナル様は私とミーナの話をほとんど最初から聞いていた?
私は鼻がツーンとして涙が込み上げてくる。
でもセントバーナル様の婚約者としてこの場で泣けないと何とか溢れそうになる涙を堪える。
「不安なこと全部私に話して。
二人で一緒に解決していこう?
ずっと一緒にね」
セントバーナル様に抱きしめられながら頭をゆっくりと撫でられる。
私はその優しさに込み上げてくるものを唇を噛んで堪える。
「エンヴェリカ、ここは今私たちしかいないから大丈夫だよ。
他の者が来ないように人払いもしているから、ね」
セントバーナル様が私の頭を撫でながら胸を貸してくれている。
私は堪え切れずポロポロと涙を溢した。
こんなところで駄目なのに…と思いながら。
しばらくセントバーナル様の胸の中でポロポロと泣いてから、セントバーナル様に王宮内の休憩室に連れて行ってもらって、ミーナと一緒に入る。
侍女に目を冷やして化粧を直してもらった。
ミーナは何も言わず、静かに見守ってくれている。
私には家族だけでなく私のことを思って言葉をかけてくれたり、見守ってくれる人がいる。
そのことにまた涙が出てきそうになるのを化粧を直してもらったばかりだからと私は堪えた。
その後、時間を見計らって迎えに来てくれたセントバーナル様とジョルジュ様と共に会場に戻ると、しばらくしてパーティーはお開きになった。
ジョルジュ様とミーナに「またね」と挨拶をして別れて、私はセントバーナル様に送ってもらい部屋に戻った。
今日も王宮に泊まるように言ってもらったので、私は言葉に甘えた。
お父様とお母様にはちゃんと伝えておいてくれるとのことだった。
湯浴みなどを済ませたらまた来るからとセントバーナル様は言って、いったん部屋から出て行った。
湯浴みとマッサージを侍女がしてくれて、パーティー用ではなく少し簡素なドレスに着替えてから部屋に戻ると、食事が用意されていた。
侍女がセントバーナル様も一緒に召し上がられますと言われたので、セントバーナル様が来られるの待つ。
私は卒業パーティーという公の場で泣いてしまった。
王子妃になるのにこんなことじゃ駄目だと反省する。
でもセントバーナル様があまりにも優しいから甘えてしまった。
頭の中であれこれと考えていると、扉がノックされてセントバーナル様が入ってきた。
私は立ってお迎えをする。
「エンヴェリカ待たせたね。
パーティーの時、食事をしていなかっただろう?
まずは一緒に食事をしよう」
セントバーナル様が柔らかな優しい笑みを私に向かって浮かべる。
そのセントバーナル様の優しい表情にまた涙が込み上げてきそうになるのを私はグッと堪える。
「セントバーナル様、みっともないところをお見せして申し訳ありませんでした」
私は頭を下げて謝罪する。
「エンヴェリカ…」
セントバーナル様が私の名を呼びながら歩み寄ってきて、またキュッと抱きしめてくれた。
駄目だよ!
また涙が出てしまう。
私こんなに泣き虫じゃなかったのに!
「エンヴェリカ謝らないんでいいんだよ。
何も謝ることはないんだから」
私はセントバーナル様の抱擁をやんわりと解く。
「でも私…あんな公の場で泣いてしまって…セントバーナル様の婚約者として失格です」
私はセントバーナル様の顔を見れなくて俯く。
「どうして?そんなことはないよ。
確かに王族も貴族も公の場では何があっても表に表情を出さないのが基本だけど、それは表向きだけでいいんだよ。
私は今のままのエンヴェリカが大好きなんだ。
エンヴェリカは私の前ではこのままで居て欲しいと思ってるよ。
それにエンヴェリカはこれからなんだ。
これから私と一緒にいていろいろと乗り越えていけばいいんだ。
一人じゃない、私と一緒にね」
セントバーナル様の私を思ってくれる優しい言葉にまた泣きそうになる。
でもいちいちすぐに泣いていては駄目だと思い、私は微笑みを浮かべる。
「セントバーナル様本当にありがとうございます。
とても嬉しいです」
「エンヴェリカ、まずは食事を先にしないかい?」
セントバーナル様が私の両手を掴み顔を覗き込んでくる。
美しい金の瞳が優しく細められる。
「あっ!そうでしたね。
何も食べていなかったので、お腹空きました」
「ふふっ私もだよ。
さあ、まずはお腹を満足させよう」
セントバーナル様に促されてソファに座る。
今日はセントバーナル様は私の隣に座って、一緒に食事を取った。
食事を食べてからデザートのケーキとお茶を用意してもらって、ケーキをひと口食べる。
イチゴと生クリームのケーキで生クリームとスポンジの甘さが口の中て溶けて、その甘さにホッとする。
王宮に滞在していた間、私が一番好きになったケーキだ。
それを用意してもらって有り難い。
「エンヴェリカはどんなことに不安になっていたんだい?
まあほとんど最初から盗み聞きみたいになってしまってごめんね。
でもエンヴェリカからちゃんと聞きたいんだ」
私が落ち着いたのを見計らってセントバーナル様が声をかけてきた。
私は言っていいものか?少し不安になって、言い淀んでしまう。
「えっと…」
「エンヴェリカどんなことでもいいんだよ。
どんなことでも私に聞かせて欲しい」
セントバーナル様が隣で私の左手を握ってくれながら、私を促してくれる。
私はひとつ頷いて、最近感じていた自分に自信を持てないことを正直に話した。
周りの人たちと比べてしまい自分はセントバーナル様に相応しくないんじゃないんかと思っていること。
私が話し終わるとセントバーナル様は私の方に身体を向ける。
私もセントバーナル様の方に身体を向ける。
セントバーナル様が私の両手をキュッと握り締めてきた。
セントバーナル様の温かい体温を感じて安心する気持ちが広がっていく。
「エンヴェリカ、ミーナも言ってた通りだよ。
エンヴェリカにはエンヴェリカの美しさがあって、それは外面も内面もだよ。
エンヴェリカはとても美しい。
私はいつも本心で言っているんだよ。
私はエンヴェリカだから好きになったんだよ。
でもそなたが自信を持てないこともわかるよ」
セントバーナル様の言葉を聞いて私は顔を上げてセントバーナル様の顔を見つめる。
セントバーナル様は少し寂し気な笑みを溢した。
それがとても美しくそして胸がキュッと締め付けられるような感覚になり、私はセントバーナル様の金の瞳から目を離せなくなる。
「私もずっとね、自信を持てなかった。
今もと言ってもいい」
「えっ?セントバーナル様が?」
誰が見ても美しくて、頭が良く仕事も凄く出来て、とても優しい方なのに?
「うん。
私はね、幼い頃から何をやっても兄上の方が優れていてね、兄上のようになりたいと思って自分なりに一生懸命頑張ってきたつもりだったけど、剣術も魔法も何もかも私が少し成長してもいつも兄上はそれを必ず上回ってくる人だったんだ。
それは兄上が自分の才能だけじゃなく努力を怠らない人だったからなんだけど。
身体付きも兄上は少し成長すると筋肉も付いてきて、男らしい体型になっていくのに私はいつまで経ってもヒョロっとした体型でね、それだけじゃなく兄上は誰とでも愛想良く話が出来るのに、私は人と接するのが苦手で人と上手く話せなかったんた。
私は何もかもが兄上に敵わなくて、まったく自分に自信が持てなかった。
それでも兄上のようになりたくて幼い頃は見目も話し方も兄上を真似したりしていたんだ。
でもね、兄上に言われたんだ。
お前はセントで私にはなれないし、私もセントにはなれないんだよ。
セントにはセントにしかない良さがあって、それは私が一番わかっていて、お前を尊敬しているんだよ。
お前はお前らしくいることが一番なんだって。
その時に私は兄上の真似をするのはやめようと思ったんだ」
「そうだったんですね」
私はセントバーナル様とアルスタイン様の話を初めて聞いた。
セントバーナル様がそんなふうに思っていたなんて知らなかった。
私の為に話してくれているんだ。
セントバーナル様はゆっくり一つ頷いて話を続ける。
「兄上からその話を聞いて、私は私なんだなと思えた。
だから兄上の真似をすることをやめた。
でもだからと言って自分に自信がついた訳じゃなかったよ。
私は私だと思うことが出来たけど、兄上と比べないってことはなかなか出来なかったんだ。
やっぱり比べてしまっていた。
私は自分なりに努力はしていたけど、それでもいつも自分に自信が持てなかった。
それにどこまでも兄上と違うことに自分に落胆してもいた。
兄上は義姉上という唯一愛する存在に3歳の時に出会った。
私は兄上と義姉上を見てとても羨ましかった。
兄上だけじゃなく父上も愛する存在に出会っているのだから、私にもそんな唯一愛する存在に出会えるだろうと思っていた。
だが、私の前にそのような存在は現れなかった。
私はずっと待ち望んでいたのに。
なのにどんどんと年月が経っていくのに、なかなか出会えなくて私にはそんな存在は現れないんだとその内に諦めるようになった。
それなら私はずっと独身でいようと思っていたんだ。
私は第二王子だから王位継承も瞳の継承も兄上の子がしていくことになるから何の問題もないからとね。
家族や極親しい人間以外は興味を持たなくなった。
でも学院に入学して、私は唯一の愛する存在に出会うことが出来た。
それがエンヴェリカなんだ。
私はエンヴェリカに出会って好きになった時、どれ程嬉しかったか」
「セントバーナル様…」
セントバーナル様は耳を赤くして少し照れ笑いを浮かべている。
「諦めていた唯一の愛する存在に出会えたんだ。
この人だと思った時に全身が歓喜で震えたのを今でも覚えているよ。
絶対逃さないと思ったよ。
でも私は口下手で人と接するのが苦手で、最初どうしていいかわからなかった。
王子なのに誰かに頼るなんてっていう矜持なんていらないってその時思ったんだ。
最初の頃、エンヴェリカにまったく相手にされていなかったけど、それでも私の中に諦めるなんて言葉は一度も浮かばなかった。
それだけ必死だったんだよ」
照れ笑いを浮かべていたセントバーナル様が真剣な色を浮かべて私を見つめている。
「エンヴェリカに対して外堀を埋めていくような強引なこともしたけど、それでもエンヴェリカだけは諦めたくなかった、諦められなかった。
私にとってエンヴェリカはそれ程の存在なんだ」
「!!…」
私はセントバーナル様の話を聞きながらまた涙を堪え切れず、ポロッと溢れた。
こんなにも愛されていることに嬉しくてとめどなく涙が溢れてきた。
セントバーナル様が指で私の涙を拭ってくれる。
「私もね、今もいつだって自信がないんだよ。
今回、エンヴェリカのことで事件があった時も自分の唯一の愛する存在なのに、スペンサー殿やジョルジュに頼らなくてはならなかった。
私は天才のジョルジュに比べたら出来ないことも多い。
自分一人で解決出来ないことにまた自信がなくなりそうになった。
でも気付いたんだ。
それも兄上に言われてなんだけどね。
そんなことよりエンヴェリカを守ることが一番だと、頼るところは他の人に頼って、私は自分の出来ることでエンヴェリカを守りたいと思って必死だったんだ」
「セントバーナル様…ありがとうございます。
わ、私も…セントバーナル様をお慕いしてます」
「エンヴェリカ!」
私はこの時に今まで言葉に出来なかった気持ちを初めてセントバーナル様に告げた。
セントバーナル様がガバっと私に抱きついてきた。
「私…セントバーナル様が好きです、大好きです。
愛してます!」
今まで恥ずかしくて言えなかった言葉を思い切って口にした。
セントバーナル様が私の為に自分の話をしてくれたことで、すんなりと言葉が出てきた。
「あぁ~嬉しい!何て幸せなんだ!
エンヴェリカから愛の言葉を貰えた!」
セントバーナル様に抱き締められて、胸の中にいるとセントバーナル様の早い鼓動が聞こえてくる。
セントバーナル様も私にドキドキしてくれていると思うと堪らない気持ちになった。
「セントバーナル様お話してくれてありがとうございます」
「いや、エンヴェリカが自信が持てないということ、私にも凄くわかることなんだ。
だから一人で落ち込まないで、不安なこと全部私に言って欲しい。
でも言いたくないことは言わなくていいんだよ、本当はエンヴェリカのこと全部知りたいけど。
私と一緒にその不安な気持ちを背負わせて欲しい。
私もエンヴェリカと一緒だからね、王子妃になるからとそんなに無理しなくていいんだよ。
エンヴェリカは今で十分王子妃として私の婚約者として相応しいんだよ、それを忘れないでね」
「はい!セントバーナル様!」
私はセントバーナル様の背中に手を回して、ギュッとしがみつくように抱きついた。
何だか、自分の自信のなさ不安が二人の温かさで溶けていくように私は感じた。
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◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。
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