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四十三話 メリル・ジラルーカス ①

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皆様いつもありがとうございます。

事件に関することはジライヤ編が終わりあとメリル編ですが、メリル編が何話かに渡りますが結構長いです笑。

その後、エピローグに向かってまいりますが、もうひと山ある予定でございます。

番外編ではセントバーナルとエンヴェリカの甘々を主に書いていきたいと思っております。

どうぞよろしくお願い致します。

メリル編も第三者視点でごさいます。

☆★☆



メリルは取り調べの初日は素直に応じることなく、自分の主張だけを捲し立てていたが、翌日の取り調べからいよいよ自白魔法を使おうかとなった時。

『わたくしは大変なことをしてしまいました。
わたくしにはどうにも出来ませんでした。

申し訳ありませんでした』

と人が変わったように急にしおらしく発言した。

以降、メリルからの謝罪は一度も聞くことはなかったので、もしかしたらメリル自身が一度現れてすぐに消えたのかもしれない。

ジライヤの魂に翻弄され続けたメリルの魂はその時に魂を休める為に女神セレナの元に戻ったのかもしれない。

今までジライヤの魂が入り込んでから、ジライヤ主導だったのだろうが、その中にメリルの魂も確かにいたということだったのだろうか。

以下はジライヤことメリル・ジラルーカスの自供によるものである。



メリル・ジラルーカスは王都からさほど離れていない西方に領地を持つジラルーカス伯爵家の当主であり父であるポワードと母ケイティの第一子として誕生した。

ピンクブロンドの髪に薄いアクアマリンのような青色の瞳の大変愛らしい子だった。

明るく優しいちょっとお喋りな父と穏やかで控えめながら芯の強い母に、ベテランの乳母や優しく勤勉な侍女たちに囲まれて、無邪気で心優しい少女に育っていく。

そのメリルが4歳の時に妹であるセシルが生まれた。

しかしセシルは生まれつき身体が弱く、赤ん坊の時には何度も今夜山を越えられれないかも知れないと、主治医の医療師に言われる程だった。

ジラルーカス伯爵の主治医である医療師によると、セシルは幼児特有の喘息の症状が見られること、だがその他にも何らかの原因があると思われるが、今のところもう1つは原因不明との診断だった。

セシルは何度となく命の危険があったが、それを乗り越えて起き上がることが出来ない寝たきりであったが、細々とではあるが何とか命を繋いでいた。

ジラルーカス伯爵家は寝たきりの幼い娘がいたが、父ポワードも母ケイティもメリルとセシルを愛情を持って育てていた。

メリルは無邪気で明るくちょっとお転婆ながら妹セシルを可愛がっていて、しょっちゅうセシルの寝室を訪れていた。


そんなメリルが5歳になった時に領地の神殿で属性判定を受けた。

メリルは水属性を持ち高位貴族の中で普通並みの魔力である、そしてスキル『受容』を持って生まれたと判定された。

この国でもスキルを持って生まれてくることは稀で、スキルは女神セレナから特別な加護を賜ることであると領地の神官長に説明され、メリルの両親は大喜びした。

その日の晩、両親はメリルの為に張り切って豪華な夕食を用意してメリルを祝った。

そして両親はメリルに女神セレナから賜ったスキルで人々を助ける人間になって欲しいと祝福と激励をしたのだった。

両親は優秀な魔術師である家庭教師をメリルに付けた。

メリルはそんな両親の期待に答えようとそして人々の為に役に立てるようになろうと、5歳から魔法やスキルの勉強を淑女教育と他の学術教育と平行して一生懸命頑張るようになった。

スキルに対しては両親以外には他言無用であり、相談役に領地の神官長がいたが、他者な漏らすことは厳禁となっており、それを破ると罰せられることになっている。

スキルに関しては家庭教師にも知らされることなくメリル自身が自分で訓練していかなければならない。

スキルは各々独自のものであるので、誰かが教えられるものではなかったということもあるからだ。

メリルが自分でレベルを上げていくしかない。

受容とは受け入れ取り込むこと。

ある日メリルは枯れてしまった花を見て寂しく感じた。

この枯れてしまった花の原因を私が受け入れて取り込んだらどうなるのかしら?と思って、枯れた花に自分の魔力を注ぐ。

そうすると、一瞬自分の胸がツキンッと痛くなった後、枯れた花がシュッと萎んで蕾に戻った後すぐにまた綺麗に花開いた。

それにメリルは驚く。
でも綺麗に花開いた花はまたすぐに萎んで枯れてしまった。

メリルはスキル『受容』を使うことでその花が枯れた原因を知り、花が少しのあいだけでもまた美しく咲き、自分が花が枯れた原因を自分が取り込んだことで、自分にも痛みが伴うことをその経験で知る。

痛みはすぐになくなり、時間が経てば自分に何も影響がないことも知った。

そして自分の力はまだそんな大したことはないんだと、でも自分が受け入れて取り込むことで、原因がわかり少しでも助かる人がいるかもしれないと思った。


その時にメリルは今も原因不明の病で苦しむ妹のセシルを自分のスキルで原因がわかるかもしれない。

原因がわかったらセシルは治るかもしれない。

セシルを少しでも楽にしてあげられるかもしれない。

そう思って、メリルはそれから日々スキルを磨く為に勉強に勤しんだ。

助言をもらいに神官長のところへも頻繁に足を運ぶようになる。


メリルは属性判定から1年、6歳になった。

今まで一生懸命自分なりにスキルの勉強をしてきた。

今ならセシルの病の原因がわかるかもしれない。
少しでもセシルを楽にしてあげることが出来るかもしれないと思って、メリルはセシルの部屋に向かう。

そしてベッドの上で浅い息を吐きながら辛そうに眠っているセシルに向かい、自分のスキル『受容』を発動した。

その時、自分の中にセシルの魔力が流れ込んでくるのを感じた。

「えっ?セシルの病の原因は魔力なの?」

そう言葉を発した途端、メリルの想像を超える量のセシルの魔力が流れ込んできた。

メリルは自分の心臓がバクバクと嫌な音を立てているのが怖くなってスキルを止めようとしたが、それよりもメリルが受け切れない魔力が流れてきて、息が出来なくなり倒れてしまう。

そのままセシルの魔力がメリルの中に流れ込み続ける。

メリルの予想以上のことが起こった。

セシルの魔力は膨大で、セシルより少ない魔力だったメリルはそれがわからなかったのだ。

やがてメリルに限界ご来て、メリルは気を失い、そして心臓が停止してしまった。

その時女神セレナにより長い眠りについていたジライヤ・ピートバンズの魂が、新たな生を受けて輪廻転生する時と偶然一致した。

ジライヤは新たな命として誕生するのではなく、セシルの闇属性魔法に引き摺られる形でメリルの身体の中に入り込んでしまった。

メリルとして目覚めたジライヤは前世の記憶を持ったまま生き返った瞬間だった。

しかしメリルも完全に死を迎えていたのではなかった。
仮死状態となっていて、ジライヤの魂がメリルの身体に入り込んだ時にメリルも目覚めたのだ。

メリルの中でジライヤの魂とメリルの魂が共存することになった。

しかし何故かジライヤの魂の方が前面に出る形になっていた。

ジライヤもメリルも何が起こったか訳がわからなかった。

自分の中に他人が存在しているのである。

6歳のメリルは混乱する。
他人の身体に入り込んだジライヤも混乱する。

妹セシルの部屋で倒れていたメリルが起き上がろうとした時に、セシル担当の乳母が倒れているメリルを発見して大騒ぎになる。

メリルは自室に運ばれて医療師を呼ばれて診察される。

しかし医療師の診察では異常なしと判断された。

ジラルーカス伯爵の主治医である医療師は探知魔法を扱えるが、メリルの中にメリルとジライヤの2つの魂2つの魔力があることを気付かなかった。

それほどのことを探知魔法で知ることが人間はそんなに多くなかったからだ。


メリルは1週間の療養のあと通常の生活に戻った。

それからメリルとジライヤが共存しての生活が始まった。

しかし前面に出ているのはジライヤだった為に、メリルの両親や使用人たちは突然性格が変わったメリルに戸惑う。

メリルは無邪気で明るくお転婆な性格、一方ジライヤは内気で大人し人見知りな性格であった。

両親は最初こそ戸惑ったが、メリルの中のジライヤは前世で19年間生きてきた経験があり、メリルの記憶もあることで、何とか取り繕うことが出来た。

両親は最初こそ戸惑ったが、それでも自分たちの愛する大切な娘だと受け入れた。

使用人たちも主人たちに従いメリルを受け入れた。


メリルとジライヤも最初こそ混乱して戸惑ったが、上手くやっていこうと努力するようになる。

しかしジライヤはメリルの見目が嫌であった。

メリルのピンクブロンドの髪と薄い青色の瞳が、自分を散々虐めて貶めてきた父サンチェスの第二夫人だったエヌエラと似ていたからである。

瞳はメリルは薄い青色でエヌエラは同じ青色でも少し濃かったが、髪の色はまったく同じであったのだ。

メリルはエヌエラではない!
別人なんだと思おうとしても自分の顔を鏡で見ると、どうしてもエヌエラを思い出してしまっていた。

そんな中メリルがセシルにスキルを使ったことで、セシルの体調不良の原因が魔力なのではないか?と思い、両親に話そうとジライヤに相談したが、ジライヤはいきなり言っても信じてもらえないかもしれない、もう少し待った方がいいと言う。

メリルがお父様とお母様なら信じてくれるはずだとジライヤに訴えたが、ジライヤは両親に愛された経験がない。

それどころか疎んじられて、虐げられていたのだ。

メリルの両親はそんな親ではないことはメリルの記憶でわかっている。

でももし信じてもらえなければまたわたくしはジライヤの時のように疎んじられるようになるかもしれない。

ジライヤは自分の中にある恐怖心と猜疑心からなかなか踏み出せないでいた。

メリルは何とかジライヤを説得しよようとしたが、6歳のメリルと前世の経験のあるジライヤとでは生きてきた年数分、知恵も経験も違った。

メリルはジライヤに言葉巧みに説得された形になって、黙るしかなかった。

それからあらゆることでメリルはジライヤと意見が合わないことがあった。

メリルはジライヤに説得を試みるが、何だかんだと口を出してくるメリルをジライヤはだんだんと疎ましく思うようになり、メリルを無視したりするようになる。

それでもメリルは諦めず、自分の意見を言い続けていた。

ジライヤはだんだんと苛立ちを募らせていく。


その他にもメリルのスキルによって、セシルが闇属性を持っていることを知ったジライヤは両親とセシルを見ていて両親が自分よりセシルの方を愛していて、贔屓しているのではないか?

セシルが無意識に両親に魅了を使っていることにセシルの魔力を感じて気付く。

セシルはメリルがセシルに対してスキルを試したことがきっかけで、闇属性を顕現していて無意識に魅了を使う形となっていたが、もちろん2歳のセシルは気付いていない。

両親は変わらずメリルとセシルを分け隔てなく接している。

メリルもそう主張するが、ジライヤは自分の前世を思い出してまた自分が蔑ろにされるようになるのではないかと不安になっていく。

そしてジライヤの思考はどんどんと危険な方向に向かっていく。


そして2年後のメリル8歳、セシル4歳の時にそれは起こる。

エヌエラの虐待の記憶と自らの魅了を使っていた記憶に取り込まれていったジライヤは、ベッドで寝ているセシルに向かいスキル『受容』を発動して、セシルの魔力と闇属性を奪ってしまった。

そのことにより、セシルは魔力枯渇症で亡くなってしまう。

ジライヤはただ闇属性を使えない自分はまた誰からも見向きもされなくなるという恐怖に囚われていた。

だから自分がもう一度闇属性を使えるようになりたいと思っただけで、セシルを死なせようとは思っていなかった。

しかしメリルの中にジライヤが入り込んだことで、メリルは以前より2人分の魔力が許容出来るようになっていて、魔力が増えていた。

だからセシルの膨大な魔力を極限まで吸い取ってもメリルの身体は何の影響もなく持ち堪えることが出来てしまったのだ。

メリルが今は闇属性を持っていても魅了は封じられることになっていると説得したにも関わらず、ジライヤは自分の辛い記憶からの逃れることが出来ず、セシルを死なせてしまった。

そのことにより、メリルはセシルを自分が死なせてしまったショックによりジライヤと対話することをやめてしまった。

この時、大きなショックによりメリルの魂が弱ってしまったのだ。





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