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四十二話 ジライヤ・ピートバンズ ②
しおりを挟むジライヤはそれらの経験から相手と目が合って自分の何かが飛んで行く感覚それは自分の魔力ではないのか?と思い立つ。
自分は属性判定をしてもらっていかないが、相手と目が合って自分の魔力が相手に渡ると、父や侍女の態度が変わるのではないかと思った。
そこでジライヤは食事や湯浴み、着替えに部屋の掃除の世話をしてくれるようになった侍女に父サンチェスを呼んでもらうことした。
サンチェスはジライヤの部屋に入ってきた時は嫌悪感を顕にした鋭い目つきをして睨んでくるのに、ジライヤが目を見て魔力をサンチェスに送るように意識すると、サンチェスは魂が抜けたような顔になりボーッと立ちジライヤを見てくる。
ジライヤはまだサンチェスに対して恐怖感があったが、どうせ殺されるなら言いたいことを言ってやると思い、今までの詳しく辛く寂ししい悲しい思いを一気に発露した。
するとサンチェスが土下座せんばかりに「申し訳ありません!申し訳ありません!」と何度も謝罪してきた。
そんな主であるサンチェスを見ても部屋の中にいる侍女たちは魂が抜けたみたいな顔をして、何も言わずボーッと立っているだけだった。
その時にジライヤは確信する。
自分の魔力で相手を言いなりに出来ると。
そこでジライヤは父サンチェスに言う。
「お父様、わたくし魔法を習いたいの。
家庭教師を付けてくれる?」
「ああ、そうだね。
ジライヤに優秀な魔法の家庭教師を付けよう」
今までのサンチェスでは考えられないくらいすんなりとジライヤの希望が通ったのだ。
今までジライヤを憎んで、蔑み罵詈雑言を浴びせて、暴力も奮っていたサンチェスのあまりの変わりように驚いたが、ジライヤは今までのことでサンチェスを恨んでいたが父を上手いこと自分の為に利用してやろうとその時に思ったのだ。
ジライヤ6歳の時に魔法の家庭教師がつくようになった。
その家庭教師によりジライヤは領地の神殿で属性判定を受けるように進言され、父サンチェスに連れられて属性判定を受ける。
その時に貴重な闇属性魔法と土属性魔法を持っていること、高位貴族の普通並みの魔力を持っていると判定された。
ジライヤは属性判定後、神官長に闇属性は貴重で極稀な魔法であると聞かされる。
そして闇属性魔法の注意事項として闇属性魔法の性質に聞いた。
その時にに精神干渉系魔法の中に魅了があるとこを知った。
ジライヤは自分が魔力暴走を起こしたことにより、闇属性魔法が顕現して無意識に魅了を使っていたことをこの時に知ったのだ。
それ以降、ジライヤは自分の魅了を駆使してサンチェスや侍女たちを操るようになる。
その時にはまだジライヤは今までの蔑まれて、虐待される生活から逃れたい一心で魅了を使うようになった。
しかし父サンチェスと第二夫人エヌエラに対しては恨んで憎んでいた。
ジライヤはサンチェスを魅了で洗脳して利用して、自分を虐げてきたエヌエラに仕返ししてやろうと考えるようになった。
それからジライヤは家庭教師についてもらいながら、魔力制御を学び魔法を必死に学んでいった。
特に魅了は自ら一人でも勉強して、書籍も゙取り寄せてもらい腕を磨いていった。
ジライヤが魔力暴走を起こしてから半年後、大怪我をしたエヌエラが復調したと自分担当になった侍女に聞いた。
その頃にはジライヤは本邸の日当たりの良い広い部屋で、3人の侍女が付き生活するようになっていた。
そのことを知り怒ったエヌエラが部屋に乗り込んできたが、ジライヤは魅了を使いエヌエラを黙らせた。
そしてエヌエラに仕返しをする為にエヌエラを魅了で洗脳し、庭師の男と浮気をさせた。
ジライヤはまだ6歳ながら使用人たちの話が耳に入ってきていた。
メイドたちの井戸端会議で『ご主人様は奥様をご寵愛されているからもし奥様が浮気なんてしたら大変なことになるわよね?』
『やめた方がいいわよ。
そんなこと耳に入ったらあなた処分されるわよ』
『ちょっとここだけの話よ!』
『でもそうね、奥様が浮気なんてしたらご主人様は奥様も相手も殺してしまうかも?』
『奥様は殺せないんじゃない?実家に知られてしまったら大事よ』
『さあ、どうなるんだろ?』
ふふっと笑いながらメイドたちが話していたのだ。
そこでジライヤはサンチェスとエヌエラへの仕返しの為にエヌエラに浮気をさせたのだ。
1ヶ月程はサンチェスに知られないように魅了を使って、エヌエラを怪しまないように洗脳していたが、1ヶ月後のある日にエヌエラが別邸のある一室で庭師の男と睦み合っているところにサンチェスを向かわせた。
サンチェスはエヌエラの浮気を目撃して、激怒してエヌエラと庭師の男を殴る蹴る暴力を振るう。
その後、サンチェスはすぐにエヌエラを家から追い出して離縁する。
庭師の男はどうなったかわからないが、恐らくサンチェスが処分したのだろう。
領地の邸にはサンチェス、ジライヤとサンチェスとエヌエラの息子サイランドだけになった。
ジライヤはエヌエラに似たサイランドのことも大嫌いだったが、父と共に利用することにした。
そしてそのままジライヤは16歳の成人を迎える。
この頃はまだ貴族学院はなく貴族も各々の家で教育を受けることになっているが、デビュタントを迎えた貴族令息、令嬢は王宮でデビュタントの夜会に参加することになっている。
ジライヤもデビュタントの為に初めて王都の邸に向かう。
そこで10年以上会っていなかった母親のネミリナに再会する。
ジライヤは母ネミリナに対しても恨みを持っていたが、ネミリナも利用することにした。
まずネミリナを魅了で操って別邸で囲っていた愛人と別れさせた。
そして自分のデビュタントの為にサンチェスとネミリナを仲の良い夫婦だと洗脳した。
そんな工作をしてからいよいよ王宮でジライヤのデビュタントの日がやってきた。
その王宮でのデビュタントでジライヤはこの国の王太子、アレンリード・ジークシルードに一目惚れした。
白く煌めく光のようなプラチナブロンドの腰まである真っすぐの髪に大きな金の瞳を持つ今まで見たことのない美しい男性、アレンリードから目が離せなかった。
【そのアレンリードは現在の第二王子セントバーナルがまるで生き写しのようにそっくりだったと証言していた】
しかしアレンリードにはすでに婚約者がいた。
当時、藍の瞳の継承者であるテンペスト公爵家第一女であるアンジェリーナ・テンペストがアレンリードの婚約者であった。
【現在は王族が金、藍の瞳の継承者となっているが、この頃にはまだ金と藍は別の家で、王家と公爵家であった。
この後で何年も経ってから藍の瞳の継承者のテンペスト公爵が王家と一緒になっていくのである。
それは金の瞳の継承者と藍の瞳の継承者の婚姻が多かったので、王家に藍の瞳を持つ者が生まれたことによると言われている】
王太子のアレンリードと婚約者のアンジェリーナは大変仲が良く、アレンリードがアンジェリーナを溺愛していると有名だった。
ジライヤの一目惚れをした初恋はすぐに失恋になったのだ。
ジライヤは王太子アレンリードの恋心を忘れようとした。
けれど、忘れようと思えば思う程思いは募っていったのだ。
ジライヤはデビュタントの夜会から領地には戻らず、王都で生活するようになる。
少しでもアレンリードの近くにいたいという思いからだった。
16歳になったジライヤは腰まである揺るやかで艶のある美しい黒髪と宝石のように輝く緑色の瞳を持つ美貌の令嬢になっており、デビュタントがきっかけで邸に山程釣り書が届くようになる。
父サンチェスにも母ネミリナにもお見合いを勧められるが、ジライヤはそんな気にはなれなかった。
自分が初めて好きになったアレンリードのことをどうしても忘れられなかったかった。
ジライヤはアレンリードへの恋心を諦められるまでは別の人婚約はしたくなかった。
それからジライヤは王都で行なわれる舞踏会、夜会、お茶会などに積極的に参加するようになる。
アレンリードの婚約者のアンジェリーナ主催のお茶会にも招待されれば必ず参加したりと社交に勤しむようになる。
この頃にはまだアンジェリーナに対して悪意を持ったり、何かをしようとは思っていなかった。
藍の瞳の継承者しか持たないふんわりとして腰まである藍の長い髪と藍の美しい瞳の完璧な美貌に、淑女としてマナーも礼儀も完璧でそして誰に対しても別け隔てのない、自分にも優しく接してくれるアンジェリーナに憧れの念を抱いている程で、アンジェリーナはアレンリードの婚約者として申し分ない人物だと思っていた。
それでもジライヤはアンジェリーナを見ると胸がツキンと痛むのを感じていたが、自分の恋心は諦めなければならないと思っていた。
ジライヤは魔法の家庭教師がついてからいろいろと教わりながらも、自分でも調べて瞳の継承者には魅了や精神干渉系魔法は通用しないことを知っていた。
なので、アレンリードにもアンジェリーナにも魅了魔法をかけても意味がないことを知っていたし、そんなことをするつもりもなかった。
ただ少しでもアレンリードの顔を見たくて何かと理由を付けて、王宮に通うようになる。
しかしアレンリードのアンジェリーナを見つめる瞳と自分を見る瞳の違いに落胆する日々が続く。
ジライヤは諦めようとしても諦めらめられない自分の恋心に苦しむようになる。
それから3年の月日が経ち、ジライヤは19歳になっていた。
今年に王太子アレンリードとアンジェリーナが結婚することになっている。
まだジライヤの秘めたアレンリードへの思いは消えていなかった。
アレンリードに一度でいいからアレンリードがアンジェリーナだけに向ける熱く蕩けるような視線で自分のことを見て欲しいと思うようになる。
そんなある日、サンチェスに追い出されて離縁された第二夫人だったエヌエラを王都の街で見かけたのである。
サンチェスに離縁されて、さぞ悲惨な生活を送っているであろうと思っていたエヌエラがプラチナブロンドの髪に青色の瞳のカッコいい騎士服を着た男を連れて歩いていたのだ。
プラチナブロンドの髪をした男と仲睦まじく腕を組んで歩いているエヌエラを見て、ジライヤの中で腹の底から怒りが募っていく。
散々自分を鞭で打ってきたり暴言を吐いて、乳母も侍女も自分から取り上げて、自分の憂晴らしに虐待していた酷い女が何で幸せそうにしているんだ!
何であんな女にアレンリードと同じ髪の色をした男が側にいるんだ!
腹の中でドロドロと憎しみが渦巻いているのを感じるジライヤ。
ジライヤは我慢ならず行動を起こす。
エヌエラと一緒にいた男が王国騎士団に所属する騎士コードシス・ゲルドナーだと調べて知ったジライヤはコードシスが王都の街で一人でいる時に近付いて、魅了する。
騎士の男コードシスは簡単に自分に靡いてきて、ジライヤを追いかけるようになる。
ジライヤはコードシスに自分がエヌエラに虐待されていたことを涙ながらに告げる。
それを聞いて激怒したコードシスがエヌエラを剣で斬り殺してしまった。
でもジライヤはそれを何とも思わなかった。
自分を酷い目に遭わせた女の自業自得だと思った。
そのことでジライヤの枷か外れてしまい、アレンリードへの恋心を暴走させていく。
この頃にはジライヤはアンジェリーナとも仲良くなり、信頼を得ていた。
しかしジライヤは美しく完璧で憧れてさえいたアンジェリーナに対しても憎むようになっていく。
そこでジライヤは父サンチェス、母ネミリナ、弟サイランドに魅了使って、アンジェリーナの悪い噂を流すように指示する。
アンジェリーナが護衛騎士と浮気している。
アンジェリーナがお茶会で自分の身分を笠に着て、令嬢たちを貶めて虐めている。
アンジェリーナは使用人たちに対して我儘で苛烈で暴力を振るうこともあるなど。
ジライヤはアンジェリーナを孤立させて、アレンリードから嫌われるように持っていこうとするようになる。
アンジェリーナとよくお茶会などをしている令嬢たちを魅了して、令嬢たちにアンジェリーナを貶めるようにして孤立させたりするようになった。
そしてその時、ジライヤだけはアンジェリーナを庇って自分はアンジェリーナの味方だと思わせるようにした。
あっという間にアンジェリーナの悪い噂が広がったが、それでもアレンリードはアンジェリーナを庇い、以前と変わらずアンジェリーナを溺愛している。
ジライヤはそれに爪を噛み許せないという思いを強くしていく。
どうしてアレンリードはわたくしの思いに気付いてくれないのか?
わたくしがこんなに思っているのにと思うようになり、アンジェリーナに対しての憎しみを強くしていく。
そしていつしかアレンリードは自分のものだと思うようになる。
アレンリードも自分のことが好きなのにアンジェリーナがアレンリードと自分の邪魔をしていると思い込むようになる。
そしてジライヤはついにアンジェリーナを排除しようと思うようになる。
アレンリードやアンジェリーナが知らないところで、ジライヤはアンジェリーナの護衛や侍女、使用人たち、アンジェリーナの仲のよい令嬢たちをどんどんと魅了を使い洗脳していく。
そしてジライヤは護衛や侍女たちやアンジェリーナと仲の良い令嬢たちを使い、アンジェリーナを暗殺する為に計画を立てる。
ある日、事件は起こった。
アンジェリーナの友人だったイリアナ・ケントフィード侯爵令嬢主催のお茶会で、令嬢たちやイリアナの護衛、侍女たち、そしてアンジェリーナの護衛や侍女たちが一気にアンジェリーナに襲いかかった。
アンジェリーナは藍の瞳の継承者で、膨大な魔力を持ち、属性魔法も水、風、土と扱えるが自分の友人の令嬢たちや護衛、侍女たちに一気に襲われて、一度はすべての攻撃を避けて彼らに呼びかけたが彼らの様子がおかしいこのに気付いた。
それでもアンジェリーナは彼らを傷つけないようにしようと、防御魔法で応戦したが大勢に一気に攻撃を仕掛けられて、一瞬の隙を突かれてイリアナの護衛に背中を斬りつけられてしまった。
アンジェリーナはその時に瀕死の重症を負う。
その時に魅了にかけられていた令嬢やイリアナ、アンジェリーナの護衛、侍女たちが暴走してしまい、正気を失いお互いを攻撃し合ってしまう。
アンジェリーナの他に令嬢3人と侍女3人、護衛騎士の1人が魔法攻撃と騎士などに斬られて亡くなるという大惨事となった。
魅了という魔法は術者の魔力の量により継続時間が決まっている。
ジライヤの魔力は高位貴族の普通並みで一般には魔力が多い方だが、魅了がずっと継続する訳ではなかった。
その為にジライヤはアンジェリーナの周りの者たちに何度も魅了を重ねかげしていた為に、魅了をかけられた者たちがあまりの精神干渉を受けて正気を失くしてしまったのだ。
ケントフィード邸の庭で血だらけでアンジェリーナは駆けつけたアンジェリーナの弟、カランリードにより助け出された。
アンジェリーナの弟のカランリードは最近のアンジェリーナの周りの護衛や侍女の様子がおかしいと気付いた。
しかしそれが何なのか気付くことは出来なかったが、アンジェリーナが誰かに狙われている危険だと思っていた。
なので両親にもそれを告げて、何が原因か、誰がアンジェリーナを害そうとしているか調べているところであった。
邸内では影をつけて注意するようにしてアンジェリーナを守っていた。
アンジェリーナが出かける時には自らが側にいるようにしていたが、この日はアンジェリーナに予定を聞く前に邸で父に呼び出され、執務やアンジェリーナのことで、打ち合わせをしている間にアンジェリーナは出かけた後だった。
慌てて執事にアンジェリーナの行き先を聞き出して、直ぐ様追いかけてケントフィード侯爵家に到着したが、庭で血だらけで倒れているアンジェリーナと周りで殺し合う令嬢や侍女、護衛たちの地獄絵図を見ることになった。
カランリードも瞳の継承者であった為に魅了などの精神干渉系魔法に惑わされることがなく、周りの怪しさに唯一気付いていた為に間一髪のところでアンジェリーナを救出することが出来た。
カランリードは血だらけのアンジェリーナをすぐに抱きかかえて、王宮に運び込む。
アンジェリーナは王宮の医療師により一命を取り留めて、斬り付けられた背中の傷も゙綺麗に消してもらうことが出来た。
この事件によりアレンリード他、王家の人間たち、瞳の継承者たちがジライヤが魅了を使い操っていたことを知り、ジライヤは拘束された。
その時にはジライヤもそしてジライヤの家族も正気を保っていなかった。
彼女は自身の魅了の使い過ぎでもう精神が破綻していた。
王宮で捕らえられたジライヤの取り調べが行われたが。
「アレンリード様はわたくしと結婚するのです」
「アレンリード様はわたくしのものなのです」
「アンジェリーナ様がアレンリード様とわたくしの仲に嫉妬してわたくしをころそうとしたのです」
など、うわ言でそんなことを言うだけになってしまった。
ジライヤにより魅了されたのは家族やアンジェリーナの護衛や使用人たち、友人の令嬢たち、令嬢の護衛や侍女たち総勢50人以上にも上った。
その者たちの中で何度も魅了をかけられた者はジライヤが拘束された後、精神が破綻していて最早廃人のようになっていたという。
頻度がそんなに多くなかった者たちは少しの間の療養で元に戻ったという。
ジライヤはアレンリードの怒りを買い758年前の19歳の時に極刑となった。
その他魅了されていたとはいえ、アンジェリーナを斬りつけた護衛も極刑となった。
そして魅了されていたといえ、アンジェリーナが斬り付けられたこと、令嬢や侍女、護衛が犠牲になったことで、あのお茶会にいた令嬢たち、護衛、侍女たちも罪に問われた。
多くの人間がジライヤの魅了の犠牲となってしまったのだ。
その後、今回の事件を重く見た王族、瞳の継承者たちが属性判定時闇属性を持って生まれた者は魅了を封じることにしたと言われている。
アンジェリーナは王宮で半年もの間療養したが、アレンリードが献身的な看護をしたことにより、身体的にも大変なショックを受けたが精神的にも立ち直り、この事件から3年後にアレンリードと結婚してさらに5年後にアレンリードが国王にアンジェリーナが王妃に即位して、ジークシルード王国をより発展させていったと言われている。
また国王と王妃になったアレンリードとアンジェリーナは1人の王子と2人の王女に恵まれて、いつまでも仲睦まじかったと伝えられている。
ジライヤの家族父のサンチェスと母ネミリナ、義弟のサイランドは度重なる魅了の影響で、廃人になってしまったが、サンチェスとネミリナを恨んでいるはずのジライヤが彼らを殺さなかったのはどこかで両親の愛情を求めていたからではないかと言われている。
【魅了による前代未聞の事件を起こしたジライヤだが、女神セレナが普通なら輪廻転生させずその魂を消滅させるところだが、生い立ちが辛く悲惨だったことを憐れに思った。
700年以上その魂を眠らせてからもう一度チャンスを与えて、通常の人間通り前世の記憶を消して輪廻転生をさせることにしたが、ジライヤが輪廻転生をする時に同時に幼かったメリルが病弱の妹セシルを少しでも楽にさせてあげようと、善意で自分のスキル『受容』を使いセシルの病弱の原因がわからないまま、その原因を自分が受け取ろうとした。
そのセシルの病弱の原因は膨大な魔力を持つが故に身体がついて行けなかったのである。
メリルは無意識にセシルの魔力を吸い取ることになる。
メリル6歳の時、セシル2歳の時であった。
その時、セシルより魔力量の少ない
メリルがセシルの膨大な魔力を吸い取ったことにより、メリルはその時に一度心臓が止まり仮死状態となる。
一方輪廻転生する時だったジライヤが実はセシルが闇属性を持っていて、その闇属性に引き摺られる形でメリルの身体の中に魂が入り込んでしまったのだ。
ジライヤは700年以上も眠り魂を休めていたが、闇属性の影響が完全には消えていなかったのではないか。
どのような作用かは定かではないが、前世の記憶を持たず輪廻転生するはずだったジライヤが前世の記憶を持ったままメリルの身体の中に入いり込んでしまったのである。
偶然の出来事ではあるが、ある意味女神セレナの初めてと言える失敗であったが、女神セレナはメリルの中に入ったジライヤの魂を消さなかった。
女神セレナはジライヤとしてももう一度やり直ししてもらいたかったかもしれない。
それがまた悲劇を生んだことになるのだが、どうして女神セレナがそのままにしたかは人間が知るよしもない。
瞳の継承者たちを試したのか?
それとも人間の行いにそこまで干渉しないからだったのか?
恐らく今度こそジライヤの魂は消滅することだろう】
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