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四十話 事件解決とこれからの私たち

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卒業パーティーの日は本当にいろいろあり過ぎた。

パーティー中の騒動からパーティーが中止になって、セントバーナル様、クリスフォード様、ジョルジュ様と卒業生並びにその家族の皆様をお見送りをしてから、セントバーナル様と一緒に王宮に戻ってきて部屋の中で、別れ際にセントバーナル様に初めて頬にキスされた。

今まで隣に座って膝と膝がくっつく程距離が近かったり、手を握られる、頭を撫でられたことはあったけどキスなんてされたことがないものだから。

「ひやぁ!?」

なんて変な声が出てしまった。

セントバーナル様が陛下たちへの報告にいったん部屋を出て行ったけど私はしばらく呆けてしまい、本当にキスされたんだろうか?違った?夢?と思ったけれど、確かにセントバーナル様は私の頬にキスした。 

思い出すと心臓が煩いくらいドキドキするし、後でまた来ると言ったセントバーナル様にどんな顔をして会えばいいのだろう?と照れ臭くて恥ずかしくて仕方なかった。

湯浴みを済ませてからも食欲が涌かないからセントバーナル様と一緒に食事をすることにした。

王宮のきっちりした夕食だと時間もかかるので、サッと軽く食べれる軽食を用意してもらった。

セントバーナル様は陛下たちに報告をした後、食事をされずに来られるんじゃないかと思った。

軽食ならそんなに時間がかからず食べてからゆっくりお話が出来るし、その後忙しいセントバーナル様も戻って仕事が出来るだろうと思ったからだ。

やっぱりセントバーナル様は食事をしないで、来てくれたので一緒に軽食を食べてから今回の騒動の話を聞いた。

セントバーナル様が私が聞きたいことに答えてくれる形だったけど、私もいろいろあった後のすぐで混乱していたこともあって、聞きたいことすべてを聞けた訳ではない。

何を聞けばいいのか整理出来ていない状態だったし、それでもセントバーナル様は私の質問にわかっていること、予測の段階であることも丁寧に教えてくれた。

セントバーナル様からしたらまだ話せないこともあったと思うから、私はすべて聞きたいことを聞けた訳ではなかったけど、それでいいと思った。

いつか全部お話してくれるだろう。


あの日から2週間後、オマール様の事件や卒業パーティーの騒動、犯人たちを拘束したことが公式に王家から発表された。

私が寮から攫われたことはあの濃いグレーの髪のジャスティンとオマール様が寮から攫って移動中に拘束されたということになった。

恐らく私が攫われて廃墟に連れ込まれたという事実を言うと、私が傷物にされたのじゃないか?と噂されるからということらしい。

私に配慮されたもので有り難いと思った。

私が傷物になったと噂されたらまた私がセントバーナル様の婚約者に相応しくないと言われるだろうからというものだった。

それから卒業パーティーでの騒動はアンピニア伯爵令嬢たちや結界魔法を解除した者たちが、メリル・ジラルーカス伯爵による闇属性の禁術の魅了で操られていたと明らかにされた。

メリル様が魅了で操っていたのはアンピニア伯爵令嬢たちだけでなく、メリル様の指示で動いていたもの全員だった。

その中にオマール様は含まれていなかった。
オマール様はそのメリル様に会ったことがなく、魅了を使われていなかったらしい。
あの廃墟の時はオマール様そのものの性格が出ていたのだと思うとそれはそれで怖いと思った。

メリル様はスキル『受容』でまだ属性判定前だった妹のセシル様の魔力を吸い取った時にセシル様が闇属性魔法を持っていると気付いた。

そしてスキル『受容』によって魔力を奪えると気付いたメリル様がセシル様がまだ4歳の時に闇属性を奪ったらしい。

その時にセシル様は亡くなったらしい。

極限まで魔力を吸い取られたことによる魔力枯渇症が死亡原因であったという。

4歳頃ということは当然神殿での属性判定前だったから禁術の魅了は封じられていなかったということだった。

他にメリル様は学院で知り合った子爵令息、王宮の文官だった伯爵様、そして私を攫ったジャスティンなどのスキルを奪い殺害していたことも明らかになった。

メリル様はその他にメリル様の両親にメリル様のお父様の弟の叔父夫婦家族、婚約者の方も殺害していたことも明らかになった。

またスキルを持っている方を調べる為に孤児院や神殿に寄付したり慈善事業をしながら、神官様と顔見知りになり、その神官様を魅了で操りスキル等の情報を聞き出したこともわかった。


社交界では家族や婚約者多くの愛する人たちを亡くして、両親が儚くなってからはメリル様が当主となるまで当主代理となった叔父夫婦に虐待され、虐げられながらも健気だった悲劇の令嬢で、16歳で貴族学院で出会って婚約者となった伯爵令息に叔父夫婦からの虐待から救われたという。

しかしその叔父家族も修道院に入ってから儚くなり、婚約者の伯爵令息も学院卒業前に貴重な魔石を一人で探しに行って獣に襲われて亡くなるという愛する人を次々に亡くすという悲劇が続いた。

見目は可憐で美しい方で、婚約者を亡くしてからも孤児院や神殿などで慈善事業にも熱心で、誰に対しても穏やかで態度が変わらない人格者でまるで天使のようだと思われ『悲劇の天使伯爵』と言われていた。

そのメリル様が実は叔父家族だけでなく自分の家族、婚約者まで殺害していたこと、多くの人間の殺害、禁術の魅了で多くの人間を操っていたこと、また神官様たちに魅了を使って情報を聞き出していた事件に王都だけではなく、国内中に大きな衝撃が走った。

今社交界ではその話で持ち切りになっているらしい。

私は今はまだお茶会や夜会などに参加していないから社交界の話は聞いたことしかわからないので、メリル様のことがどんなふうに噂されているか知らない。

私はセントバーナル様から個人的に聞いた時は衝撃のあまり言葉を失った。

本当にそんな人がいるのか?
女神セレナ様から加護のスキルを賜った人が?と信じられない気持ちだった。


メリル様は10人以上の人間を殺害したことと、禁術の魅了を使ったことで極刑となったらしい。

またメリル様と共謀して、魅了魔法の魔道具や幻覚魔法の魔道具を悪用する為に作成した元魔術研究所で魔道具研究部門に所属していたプリズナン子爵家のギレンも極刑となった。

アンピニア伯爵令嬢とその取り巻きの令嬢、スフィア・ビーナム子爵令嬢、クローディア・デサントラ子爵令嬢、ルーナ・オクレア男爵令嬢たちは闇属性の魔道具を使い、貴族令息令嬢に害を与えたことで、魔術研究所送りとなった。

アンピニア伯爵令嬢たちはセントバーナル様の婚約者である私や卒業生、家族を狙って危険に貶めたことで本来なら極刑となるところをメリル様により魅了で操られていたことから極刑は免れた。

しかし魔術研究所送りとはこの国では修道院より厳しいと言われている。

魔術研究所の粗末な犯罪者用の一室で毎日ずっと魔力を限界まで吸い取られて、魔術の研究にその魔力が使われることになる。

魔力を強制的に吸い取られるのは大変な苦痛を伴うらしい。

この国では他国と比べても圧倒的に魔力を持っている人間が多い為に国外追放の処分は取られないことになっている。

なので、極刑以外の重罪に値する処分は鉱山での強制労働か魔術研究所か修道院送りとなる。

身体的、精神的辛さは鉱山での強制労働より魔術研究所送りの方が辛いと言われている。

魔力を多く持つ貴族は鉱山労働より魔術研究所送りになると言われている。

オマール様は極刑にはならず魔術研究所送りになったそうだ。

オマール様は極刑になってもおかしくなかったそうだが、私を攫って廃墟で私を襲おうとしたことを表沙汰に出来ないことと、オマール様以外の家族ヴォンドウェル伯爵家のみなさんは一切関わっておらず、また現当主夫婦もオマール様の弟、妹も真面目な人物で大変評判が良いということで、お家を取り潰しにしないことになった為、オマール様は極刑を免れたらしい。

またメリル様の指示の元動いていた商業ギルドセラーズのメンバーは全員元貴族もいたが、現在は平民であるので魔力がそこそこある者は魔術研究所にそれ以外はみな鉱山送りになったとのこと。

お家に関してはメリル・ジラルーカスのジラルーカス伯爵は貴族籍と爵位剥奪の上、お家取り潰しとなった。

ギレンに関しては子爵家の第三男であったが、もう家から独立して年が経っている為にギレンのみ平民扱いとなった。

プリズナン子爵家は2年の王都出入り禁止となり、爵位や領地などは没収されなかった。

それでも2年も王都の出入り禁止というこれからのことを考えると、処分は決して軽いものではないと思う。

プリズナン子爵家は私のところのように主な収入源が商会ではなく領地経営であるが、それでもこれから厳しくなっていくと思う。

プリズナン子爵家はまったく関わっていなかったとはいえ、ギレンの家族であることから責任を取らされた格好だ。

オマール様のヴォンドウェル伯爵家は男爵に降格して、領地の3分の2が没収されたらしい。

本当なら家族みな貴族籍と爵位剥奪の上、取り潰しとなるはずだったが爵位降格と領地没収となったが、ヴォンドウェル男爵家の今後も厳しいものになると思われる。

アンピニア伯爵家に対してはいくら魅了で操られていたとはいえ、第二王子の婚約者の命を狙ったということで、貴族籍と爵位剥奪の上お家取り潰しとなった。

アンピニア伯爵家の人たちは修道院送りになったらしい。
 
アンピニア伯爵令嬢の取り巻きのビーナム子爵家、デサンドラ子爵家、オクレア男爵家も貴族籍と爵位剥奪の上、アンピニア伯爵家の人たち同様修道院送りとなったらしい。

修道院は魔術研究所よりはマシと言われている。

強制的に魔力を吸い取られることはないが、修道院でも毎日魔力譲渡しなければならないから決して軽い処分ではない。


とりあえず事件は解決したということで、中止になった卒業パーティーが2ケ月後に行なわれることになった。

卒業パーティーの1ヶ月後には予定通りジョルジュ様とミーナの結婚式がある。

そして事件が解決したことで、私はセントバーナル様と結婚するまでは王都の子爵邸で生活することになった。

セントバーナル様は「ずっと王宮にいて下さい」って言ってくれたけど、私は事件が解決していないから王宮に保護してもらっていた形だから、事件が解決したのだから王宮から出て行くのは当然だと思った。

けど、セントバーナル様がかなりごねられたのだ。

でもナターシャ様も成婚するまでは王都の邸から王宮に王太子妃教育に通っていたと言うし、私の家族が特にお父様が、私が成婚するまでは一緒に暮らしたいという一言で決まった。

セントバーナル様は納得していないようだったけど、私の家族の希望を聞いてくれる形で渋々了解してくれて私はクエスベルト子爵の王都の邸に移った。

侍女はクララと王宮で担当してくれた人たちがそのまま邸に来てくれて、お父様の側近や執事やお母様の侍女などは領地からやってきて、料理人やメイドはセントバーナル様が選んでくれた人たちがやってきた。

お父様とお母様は私が成婚するまでは主に王都に滞在して、お兄様とシェリーナお姉様は王太子都と領地を行き来することになった。

私は久々の家族との生活を満喫した。

またテンクラビィ子爵令嬢のロザリナ様は王都の子爵邸に戻ったのだという。

ドレンナザス公爵様たちは大変寂しがってくれたらしいのだけど、ロザリナ様がまた遊びに行くことで納得し下さったそう。

ロザリナ様がドレンナザス公爵様たちに可愛がられていて本当に良かった。

そしてロザリナ様は新学期を少し過ぎてから学院に復学することが出来た。

学院でのロザリナ様の様子が気になっていたけど、うちの邸に訪れてくれてお茶会をして学院のことを報告してくれた。

王家がロザリナ様が事件の解決の為に協力してくれたことを正式に発表してくれたので、ロザリナ様は学院で何も言われずに済んでいるそう。

「わたくしは何か言われることを仕方ないことと思って覚悟していましたのに、何もなく拍子抜けしてしまいました」

と笑って言っていて、ロザリナ様は本当に強い方なのだなと思った。

またセントバーナル様がロザリナ様にまず会ってみるようにと20歳の王宮で文官をしているペントベア伯爵家の第三男、コールマン・ペントベア様を紹介してくれたのだそう。

まだ二度しかお会いしてないそうだけど、言葉少なな方だけど、とても優しそうな方だとロザリナ様は好印象を持っているようだけど、ペントベア伯爵令息の方がロザリナ様を大変気に入られたようで、即婚約を申し込まれたそうなのだけど、ロザリナ様はまずお友達からと言ったのだとか。

「わたくしが身分が上のコールマン様に失礼かと思ったのですが、一度オマール様のことで凝りてますからそのことをコールマン様にすべて隠さずお話したのです。

今度はちゃんとお相手を見極めたいと思っておりますの。

コールマン様はとても良い方ということはわかっていますのよ。

でもわたくしの卒業までまだ1年あまりすからゆっくりと交流してこうと思っています。

コールマン様もそれで構わないといつまでも待つと言って下さいましたから」

とロザリナ様はとても良い笑顔だった。

ロザリナ様も新たな一歩を踏み出したのだなと思った。


ミーナはやり直しの卒業パーティーと自身の結婚式が迫っていて、忙しそうでなかなか会えないでいるけど、通信魔道具で毎日のように話している。

うちの王都の邸に通信魔道具が設置されたのだ。

設置したのはセントバーナル様なのだけど、別で暮らすなら絶対通信魔道具は必須です。

とセントバーナル様が言ってすぐに設置しに我が邸に来ました。

毎日王子妃教育で王宮に通っていて、毎日会っているのにね。

でもセントバーナル様は事件の後処理や政務で大変お忙しい。

実は昨年、ナターシャ様がご懐妊されて、今年私たちが卒業してから第一王子のクライファート殿下を出産された。

ご成婚されてから3年近くもご懐妊の兆候がなかったから、ナターシャ様のご懐妊にわかった時は王太子殿下のアルスタイン様はそれはそれは感激されて、大騒ぎされた!

クライファート殿下がお生まれになってからは何かと政務を抜け出してナターシャ様とクライファート殿下の顔を見に行かれるそうで、セントバーナル様はアルスタイン様の政務まで押し付けられる始末で、忙しくてエンヴェリカの顔をなかなか見れないじゃないか!と愚痴を溢してる。

私は王子妃教育で王宮に通いながら卒業パーティーと私も出席するジョルジュ様とミーナの結婚式の準備に忙しく毎日追われているけれど、久しぶりに穏やかな日々を送っていた。


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