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ニ十三話 ミーナとミーナの家族と殿下と私 ①
しおりを挟む殿下と二人きりでお話をしてから私が学院に復学するのは3年生から正式にと決まったみたいだ。
殿下にまだ事件が解決していないから私が早期に復学することを殿下だけでなく、私の家族も許すことは出来ないと言われたからだ。
でも私が3年生になってからの復学と一緒に殿下と婚約することが、殿下の中では決定事項になっておられるようで私は何故3年生からなんだ?と思わずにはいられない。
婚約のことはまだ保留中です。
殿下の気持ちは凄く伝わってくるけど、私自身の問題だ。
殿下と私が婚約なんてという気持ちがどうしてもあって…。
えっと、とりあえず私が3年生から復学するまで私は王宮でお世話になることになった。
「エンヴェは殿下の言うことをちゃんと聞いて王宮で大人しくしているのよ」
とお母様に言われてしまった。
私の部屋には通信魔道具はないのだけど、殿下が部屋に持ってきて下さった時に領地いる家族やミーナと話をしている。
それと魔道具の研究スペースが違うところになった。
私が滞在している部屋のある本宮からより一層警備が厳しい所を通って違う宮の中の部屋に新たな研究室が用意されていた。
用意してもらった部屋は研究スペースより元々の領地の私の研究部屋より、広くて道具などの設備も完璧で本当に有り難い。
殿下と研究時間の相談をあらためてしたのだけど、まず午前中に研究部屋がある隣の部屋で私が学院と同等の授業を受けて、それが終わってから学院から戻ってきた殿下とお会いして、そして夜に殿下とまたお会いする時までが、私の研究時間となった。
そして研究部屋へと移動するようになってから夜に研究部屋の隣の部屋で殿下とお会いしてから殿下自ら以前から私が滞在している部屋に送って下さるようになった。
何だか前より研究時間が少なくなったような気がする。
殿下が時間は変わらないと言っておられたけど、忙しくなったからそう感じるのかな?
でも学院の授業を受けておくことも大切だ。
ある程度の成績を納めて卒業しないと王立魔術研究所には入れないから、そこは仕方ないと納得した。
ああ、殿下には婚約者になって欲しいと言われたけど、毎日告白して下さってるけどまだ現実感がなくて…。
もしそうならなかった場合のことも考えとかないといけないと思っているからなのだけど、そんなことを殿下には言えない。
でも殿下と婚約しなかった場合、私は王立魔術研究所に入れるのだろうか?
そうならなかった場合でも殿下は決して私情を持ち込む方ではないと思うけど、別の道も考えておいた方がいいのかな?
殿下はあの日から毎日顔を合わせる度に「大好きですよ」「もう愛してます」「私はエンヴェリカだけです」と愛の告白をし続けてこられる。
決して嫌ではない。
嫌ではないのだけど、毎日の怒涛の告白に私の心の中は今までになかったことに戸惑い、顔だけでなく身体全体が発熱しているように熱くなって、アワアワしてしまい頭が沸騰したようになり毎回ろくな返事を返せない。
殿下は今後もっと親しくなる為に私のことをエンヴェリカと呼び捨てにされるようになり、殿下のことも名前で呼んで欲しいとおっしゃるけれど、ずっと2年近く殿下とお呼びしているし、第二王子殿下ですよ!
いきなり名前呼びなど私には高度で難し過ぎる。
殿下は「徐々に慣れて下さい」とおっしゃられるのだけど、慣れることあるのだろうか?と思ってしまう。
有り難いことに家庭教師の先生が研究部屋の隣の部屋に来て下さり、教えて下さっている。
日によって違うけど、学術、魔術魔法の授業とそれと淑女教育だ。
学院の授業にも女性は淑女教育というものがあり、試験というものも一応ある。
でもそれは最低限のものであって貴族令嬢ならば、幼い頃から学んでいることで、試験は簡単なもので問題ないものだ。
しかしどう考えても王宮での淑女教育は学院のものと違って遥かに高度で厳しい。
何なら私が生まれてお母様から教わったものより厳しいのは何故?
淑女教育の試験は他のものより簡単なはずなのに王宮での教育は他の教科と比べても一番厳しいのだ。
ダンスのレッスンまで組み込まれている。
確かに学院でもダンスのレッスンはあるけれど、そんなにみっちりはやらないしダンスは試験もない。
なのにここではみっちりとしていてこれまたとても厳しい。
そしてなんと淑女教育の担当になって下さった家庭教師の先生はクラウディア・ポーツフェルト侯爵夫人で、恐れ多いことに王太子妃になられたナターシャ殿下を担当されていた方だ。
ポーツフェルト侯爵夫人はとても厳しいけど、こんな私でも褒めて下さる。
「さすがクエスベルト子爵夫人の息女ね、基礎がしっかりとしているしクエスベルト子爵令嬢は勘も良いし、飲み込みが早いわ。
子爵夫人のマリーベル様とはわたくしも昔から知己の仲だけれど、マリーベル様はとても優秀な方だったものね」
とお母様のことも褒めて下さる。
お母様は元々侯爵令嬢だったから幼い頃から高位貴族の教育を受けてきたはずだから出来て当然なのかもしれない。
そのお母様は私が幼い頃から私もお父様やお兄様同様魔道具の研究をすることを許してくれたけど、マナーや礼儀などの淑女教育はお母様自ら厳しく教育された。
ちゃんとお母様からの教育を受けないと魔道具の研究をさせてもらえなかったからだ。
それが今に役立っているなら良かったと思うのだけど、それにしても予定がびっしりと詰まっていて、学院にいた頃より忙しいくらいだ。
私がそんな厳しい淑女教育を?と思うけど、私が殿下の婚約者にもしなったらということなのかもしれない。
いくら鈍感と言われる私もそれはわかった。
それに受けておいて損になるこはないと思っているから私なりに頑張っている。
そんな忙しい中でもお休みはちゃんとあって、お兄様ともうお兄様の奥様になったシェリーナお姉様が私の所に訪ねてきてくれた。
お兄様とシェリーナお姉様の結婚式はクエスベルト子爵領で行われて私も出席したのだけど、そんなに大きな規模ではなかったけど多くの方々に祝福されたとても良い式だった。
それはまた別の話である。
ミーナがジョルジュ様と共に転移でやって来てくれたりと、毎日忙しいけど充実した日々を過ごしている。
ミーナも高位貴族並みの魔力があるから転移は問題ないみたいだ。
そんなある日、ジョルジュ様とミーナが訪ねてきてくれた時に殿下と共に会っていた時のこと。
「ねぇ、エンヴェリカ私のお父様や家族がエンヴェリカに会いたいって言ってるんだけど」
とミーナに言われた。
「えっ?ウォンタートル伯爵様が?」
「ええ、お父様とお兄様は王宮に出仕しているからエンヴェリカに会おうと思えばいつでも会えるのだけれど、お母様とカレーナお義姉様も会いたいと言っているの。
でもカレーナお義姉様は2人目を妊娠中であまり外出出来ないから、エンヴェリカが来てくれると嬉しいのだけど」
私はん?と一瞬首を傾げた後にミーナを見てからジョルジュ様を見る。
「!!もしかしてジョルジュ様の転移で?!」
私の声が興奮して大きくなったことにミーナたちが驚いて上半身を仰け反られせてしまった。
しまった!引かれてしまったわ。
でも一生経験出来ないかもと思っていた転移がまた出来るなんて夢みたいだもの。
「…えっとそうなるよね?殿下?ジョルジュ?」
ミーナが苦笑いしながらも殿下とジョルジュ様に聞く。
「まあ、ジョルジュが転移でエンヴェリカを移動させてくれるなら…」
「私は構わないよ。
仕事がある時は私は送り迎えだけになると思うけど…」
殿下とジョルジュ様が続けて肯定してくれる。
「本当ですか?殿下良いですか?」
私は前のめりになる。
もちろんミーナの家族と会えるのは嬉しいけど、ジョルジュ様の転移をまた経験出来るなんて嬉しい!
前の時は事件直後であの時も興奮していたけど、私の心理状態は普通ではなかったから今の普段通りの状態で、ぜひとも転移を経験したい。
「…そうですね、どうしましょうか?」
「えっ?殿下?」
殿下が首を傾げて微笑みながら私を見てくる。
何だか殿下の微笑みが怪しい。
殿下と接してきて何だかそういうのがわかるようになった。
何?何かある?
えっ?駄目なの?
「エンヴェリカが私の名前を呼んでくれたら許可しましょうかね」
殿下がニヤッとした。
「えええ、…それは…」
「どうしました?私の名前を呼んでもらえるだけで許可すると言ってますよ」
ちょっと何それ?
「い、今ここで?」
殿下は微笑みながら私を見て頷く。
ジョルジュ様もミーナもニヤニヤしてるじゃない!
「いや、それは!…」
「では残念ですが…」
「ちょ、ちょっと待って下さい!
え、ええと後でというふうには…」
「なりませんね、今お願いします」
殿下がキラキラとした微笑みを向けてくる。
何ですか?それ?殿下と二人きりよりもさらにハードルが上がって恥ずかしいんですど?
「それ狡くないですか?」
「そんなことはないと思います。
エンヴェリカの行動範囲や予定を調整するのを任されているのは私ですからね、エンヴェリカやみなの忙ししい予定を調整しなければなりません。
私のやる気の為にご褒美をくれてもいいのではないですか?」
私は抵抗を試みたけど、えええ本当に殿下狡いです!
ジョルジュ様とミーナは私たちの成り行きを見守っているのか無言でニヤニヤしたままだ。
何でこんなところで?
「……え、と…ご褒美というのは後なのではないですか?」
「先に頂けると私はとても頑張れる人間です」
殿下の笑顔が何だか…ちょっと黒いような?
「あっ、と…あの…」
「ん?」
殿下が首を傾げながらも私を見つめてくる。
何だか嬉しそうに見えますけど?
これは殿下を名前で呼ばないと駄目ということだよね?
あの二人でお話をしてから殿下は私呼び捨てにするようになり、私も殿下を名前で呼んで欲しいと言われているけれど、私今まで一度も殿下を名前で呼んだことはない。
何度か挑戦しようとしたけど、恥ずかしさが勝って無理だったのに二人きりではなくて、ジョルジュ様とミーナがいる場でなんて。
でも殿下の名前を呼ばないとミーナとミーナのご家族に会えないし、転移も経験出来ない。
私は勇気を出すことにした。
「あの…セント、バーナル様…よろしくお願い致します…」
本当に恥ずかしくてだんだんと小声になってしまった。
「…コホンッ、いいでしょう。
みなの予定と合わせて調整しますね」
殿下を見ると、何だか耳が少し赤いような?
ジョルジュ様とミーナが殿下と私を見てまだニヤニヤとしていた。
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