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十五話 私の愛する人を害そうとする者は絶対許さない ④
しおりを挟むセントバーナルside
エンヴェリカの両親が王宮にやってきて、1週間程滞在することになりエンヴェリカの側に居てくれるそうで私も安心だ。
エンヴェリカの心も少しずつ落ち着いてくれればいいなと思っている。
一応エンヴェリカの魔道具研究の専用部屋を至急私の宮、第二王子宮に用意することにした。
エンヴェリカはまだ私の婚約者ではないので、今は政務をする執務室や舞踏会などが行なわれる会場などがある本宮の客間で滞在してもらっているが、いずれは第二王子宮で一緒に暮らす予定だから魔道具専用部屋はこちらに作った。
第二王子宮に用意が出来るまでは王宮内にある魔法訓練所の一角にエンヴェリカ専用の研究スペースを用意した。
エンヴェリカに魔道具研究スペースを用意したことを言うと、満面の笑みでお礼を言われた。
私は満足だ
クエスベルト子爵卿と夫人には事件について詳しく話していて、クエスベルト子爵家ごと守る為に影と護衛を派遣してすぐ領地に向かわせた。
エンヴェリカの家族も狙われないとは限らないからちゃんと守らなければならない。
クエスベルト子爵家は平民の商会時代からかなりの利益を上げていて、裕福でありクエスベルト子爵卿があらゆる魔道具の開発に成功してからはさらに国内外で注目を浴びるようになった。
そのことにより狙われることがあるだろうとクエスベルト子爵卿の親友であるベルナールド侯爵卿が自分の領地の魔術師や騎士たちを派遣して守ってきた。
ベルナールド侯爵家の魔術師、騎士も優秀だが、今回のことがあり王家の影とダベンサードル辺境伯のスペンサー殿の部下たち数人もエンヴェリカ本人とエンヴェリカの家族に付くことになった。
それと私のエンヴェリカに対する気持ち、エンヴェリカに婚約者になってもらいたい。
結婚したいことも二人に伝えた。
クエスベルト子爵卿には嫌な顔をされた。
娘であるエンヴェリカが可愛いのだろう。
父親は娘が結婚してしまうのを寂しがり悲しむのは仕方のないことだと私もわかっている。
一方夫人の方は非常に大らかでいながらしっかりした人でエンヴェリカが私を好きになったのなら構わない。
でもいくら殿下でもエンヴェリカの気持ちを無視して事を運ぶのなら反対です!とキッパリ言われた。
クエスベルト子爵家は間違いなく夫人が実権をにぎっている。
私は夫人に気に入ってもらうように、そして何よりエンヴェリカに私を好きになってもらうように頑張らなければならない。
本宮より第二王子宮の報告がさらに安全な所であるから本当は今すぐにエンヴェリカの部屋を用意して移ってきてもらいたいが、それは婚約するまではいや結婚するまでは駄目だろうな。
兄上もナタとの婚約中に王太子宮にナタを住まわせようと画策して、父上とベルナールド侯爵卿に即却下されていたからな。
私も結婚するまでは我慢するが、魔道具の研究部屋くらいはいいだろうと父上に許可を取りに行ったら。
「お前もやはり瞳の継承者なのだな」
と呆れ顔で言いながら許可してくれた。
父上には言われたくないな。
父上も兄上と同じくらい母上に対する愛が重いからだ。
いや、父上や兄上だけでなく、クリスもジョルジュもだな。
瞳の継承者は伴侶に対して一途で非常に愛が重いのは歴代の瞳の継承者に関する書紀からも明らかだ。
この世界の創造神ゼナヴァンシールド様が女神セレナ様を一途に愛する神であるからと言われている。
その女神セレナ様の慈悲により私たち瞳の継承者が生まれたのだから当然と言えば当然なのかもしれない。
私もエンヴェリカと出会い、愛するようになってから私も父上たちと同じなのだと自覚した。
エンヴェリカはしばらく学院を休学することになったが、私は1日学院を休んだだけで、すぐに復学した。
学院の様子を探る為でもあるし、何事もなかったように振る舞う為である。
まだ2日しか経っていないが、学院は表面上今までと変わりはない。
エンヴェリカは体調不良であることにしていて、コソコソと令嬢たちが何か言っている程度。
オマールとはクラスが別だが、オマールも今のところ体調不良であることにしている。
同じクラスにオマールの婚約者がいるが、父親のテンクラビィ子爵卿にオマールは急な病である医療施設で療養中だと娘に伝えたらしい。
オマールが医療施設で療養中とのことは学院の責任者である父上からテンクラビィ子爵卿に伝えてもらった。
テンクラビィ子爵令嬢はオマールからエンヴェリカのことを何か聞かされていたのか、学院入学直後はオマールと一緒になって、エンヴェリカを睨んでいたらしい。
そんなエンヴェリカを睨んでいた女などどうでもいいと思っているが、オマールの影響があったからかもしれない。
今後エンヴェリカに何もしてこなければ私からは何もするつもりはない。
ある意味テンクラビィ子爵令嬢も被害者と言えるのだから。
今のところオマールとエンヴェリカのことを結び付けて何かを噂している者はいないと報告を受けているが、用心はしなければならない。
監視を強めてとりあえず様子を見ていくことになる。
私が学院に復学してから学院が終わってからエンヴェリカに少し会いに行って、それから政務を熟しながら影に学院内や寮の者たちに探らせ報告を聞いたり指示したりしていて、ジョルジュからの報告もあったりしてかなり忙しく、夜に1時間程度エンヴェリカの部屋に行き話をする程度になっている。
寂しく思う気持ちもあるが、今は事件を解決することに全力を注がなければならない。
事件から3日後の朝学院にいる時にジョルジュがやってきて、秘かに会って話して今夜スペンサー殿とジョルジュの報告があると聞いた。
廃墟を見張っていた男を監視しているジョルジュの側近や瞳の継承者たちとその側近が集まるという。
スペンサー殿、ジョルジュの他に王太子の兄上、紫の瞳の継承者のブレンダーザス公爵令息のクリス、赤の瞳の継承者のドレンナザス公爵令嬢、スザンヌ殿と私である。
今回はスペンサー殿以外は後継者たちが集まることになった。
父上、ブレンダーザス公爵当主のランドル殿、ドレンナザス公爵当主のデモンダス殿たちから私たちで解決してみせろということなのだろう。
試されているのかもしれないな。
私にとっては愛するエンヴェリカと私の為だ。
何としても自分たちで解決してみせる。
私は学院の授業を終えて、王宮に帰ってきてからエンヴェリカに会いに行って少し話をした。
今日は夜には部屋を訪れることが出来ないことをエンヴェリカに伝えた。
「そうですか…殿下お忙しいんですね。
どうか無理なさらないようにお身体には十分気を付けて下さいね」
とエンヴェリカに労われたのだけど、エンヴェリカが少し寂しそうな顔をした。
「寂しいのですか?」
と私が聞くと。
「そ、そんなことありません!」
と顔を赤くしながら首を左右にブンブン振っているエンヴェリカが可愛い。
やはりエンヴェリカも私のことを少しは思ってくれているのではないかと思う。
本人は気付いてなさそうだが。
私はニヤケそうになるのを何とか堪えて。
「体調が良くなったからと言って無理はしないで下さいね。
研究もほどほどですよ」
と言うと。
「はい!大丈夫です!」
とエンヴェリカは元気に笑顔で返事した。
エンヴェリカは日中はほとんどエンヴェリカ専用にした魔道具研究スペースに入り浸っていると聞いている。
エンヴェリカの研究スペースに王立魔術研究所から借りてきた道具を置いておいたのだが、それを見てエンヴェリカが歓喜の声を上げていたそうだ。
見たかったな。
後で「本当に本当にありがとうございます!」と笑顔付きで言われた。
私にとって一番のご褒美だ。
クエスベルト子爵夫婦がまだ滞在しているのだが、クエスベルト子爵卿もエンヴェリカと共に専用スペースに入り浸っているらしく、夫人は。
「いつものことだから~」
と笑っていたのだとか。
クエスベルト子爵卿もエンヴェリカも本当に魔道具が好きなのだな。
そういえば、父上がクエスベルト子爵卿に伯爵への陞爵を打診しても王立魔術研究所を手伝ってもらいたいと言っても、頑として首を縦に振らなかったらしい。
領地で魔道具を研究開発して家族と生きていくことが、クエスベルト子爵卿にとっては何より幸せな事なのだろうな。
エンヴェリカは学院卒業後は王立魔術研究所に入りたいと言っていたな。
思う存分魔道具の研究をしたいのだろう。
エンヴェリカには私と結婚しても魔道具を研究をして良いと言って、説得していかなければならないな。
エンヴェリカと今日も会うことが出来たし、みなが集まる時間までに政務を片付けてしまわないと。
私はエンヴェリカの部屋を後にしてから自分の執務室へと向かった。
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