地味に見せてる眼鏡魔道具令嬢は王子の溺愛に気付かない

asamurasaki

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五話 変わった学院生活と家族を思う

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お休みが明けてからジョルジュ様、ミーナ様、殿下の目に見えるところだと私を殿下たちが庇って注意されるからだろう、表立ってはなくなったけど虐めがどんどん陰湿なものになってきた。

私がいくら殿下に素っ気なくしてもそれは逆効果にしかならなかったみたいだ。
でも親しくしたらしたでより反感を持たれて一層酷くなりそうだし、私どうしたらいいの?状態になっていた。

特に同じクラスのミランダ・アンピニア伯爵令嬢やその取り巻き4人には殿下が私に話しかけてくるようになってから目の敵にされるようになった。

アンピニア伯爵令嬢以外は違うクラスなのだけど、アンピニア伯爵令嬢が中心になって私が少し一人になった時や、殿下やジョルジュ様と一緒ではない時に廊下等ですれ違いざまにわざとぶつかってきたり、嫌味や暴言を吐いてくるようになった。

だいたいは『地味で醜女のくせに』とか『ジョルジュ様や殿下にちょっと優しくされてるからっていい気になるな』とか『殿下と身分差を考えて近寄るな』『殿下と地味醜女子爵令嬢では何もかもが釣り合わない』『並みの成績のくせに殿下に魔法や魔術のことを教えるなんて身の程知らず』的なことだ。

常に成績トップの殿下に教えるなんて身の程知らずはごもっともなのだけど、殿下が質問してこられるので答えない方が失礼で、不敬でしょ?

私のことを並みの成績と言っているけど、実はSクラスでアンピニア伯爵令嬢より成績は良いはずで、他の令嬢たちは違う下のクラスなんだけどなぁ。

そんなこと言い返しても変わらないだろうし、もっと言ってくるだろうから言わないけど。

私は呼び出しとかされても決して行かなかったし、ジョルジュ様、ミーナ様、殿下に絶対に一人にならないようにって言われていたし私も気を付けていたけど、たまたま一人で廊下を歩いている時に誰かから花瓶の水をかけられたこともある。

花瓶の先だけが見えて姿が見えなかった。
角で待ち伏せして私が通り過ぎたのを見計らって水をかけてきたのか。
振り返ったけど、誰かわからなかった。
また庭園を歩いている時、上からゴミ箱が降ってきたこともある。
ゴミ箱にぶつかることはなかったけど、中のゴミが私の頭に落ちてきた。
この時も誰だかわからなかった。

アンピニア伯爵令嬢たちのように面と向かって嫌味や暴言を言われる方がまだマシだ。

誰がやっているかわからない陰湿な虐めに注意することも言い返すことも出来ず、さすがの私も少し参ってしまっていた。

その陰湿な虐めをしているのがアンピニア伯爵令嬢たちなのかもしれないけど、今のところ誰かわからないのよね。


しかし4の月になって2年生になってからも殿下もミーナ様も私も同じSクラスのままだったのだけど、1年生で同じクラスだったアンピニア伯爵令嬢はSクラスからAクラスに落ちたようで、同じクラスにいなくなった。

そして殿下が何かと私の側にいることが断然増えた。
何なら2年生になってから教室の席も隣になったし、別教室で行われる魔法、魔術の授業の時も殿下が隣の席になっている。

これは偶然かな?違うのでは?と思うのだけど、殿下が私の行動を常に気にしてくれて、なるべく一緒に行動しようとしてくれている。

ジョルジュ様は今年の3の月に卒業されたのだけど、引き続き協力してくれてお忙しいだろうに転移して来て下さったりする。
ジョルジュ様はミーナのことを心配して頻繁に様子を見に来ているのだけど、私のことも心配してくれている。

ジョルジュ様とミーナも協力してくれて、殿下と共に私を守ろうとしてくれているので、有り難いばかりだ。

殿下はそんなに言葉は多くないけど、いつも誠実で私のことを心配して下さっていて、常に私を気遣って声をかけて下さる。
そして私の都合なのに魔道具の実験なんかにも同行して下さるようになった。

きっと殿下は学院でもそれから王宮に戻られてもお忙しいはずなのに、申し訳ないからとお断りしようとしても「私が行きたいですよ。
エンヴェリカ嬢の魔道具の研究には私も凄く興味がありますからね、それに一人にならない方がいいです」と言って譲ってくれない。

殿下は2年生になってからいつの間にか私を名前で呼ぶようになり、私にも殿下の名前で呼んで欲しいとおっしゃられるのだけど私なんかが恐れ多いし、今更かもだけど、令嬢たちをこれ以上刺激したくないという思いもあって私は殿下呼びを変えていない。

ジョルジュ様もミーナも私を名前で呼んでくるようになった。
ジョルジュ様に対してはもう卒業されたので、他の生徒たちがいない所ではジョルジュが様と呼ばせて頂いている。
ミーナとはお互い呼び捨てで呼ぶようになった。

ミーナは私のかけがえのない友達になった。
可愛らしくて優しくて素直で人懐っこくて無邪気で、それでいて正義感が強くて芯の強いミーナが大好きだ。
たまに毒を吐く一面も人間らしくてさらに好きなところ。

そんな感じで殿下かミーナが常に側にいてくれるようになったから嫌味などを言われる程度で、陰湿な何かされることはなくなった。

でもクラスが別になったアンピニア伯爵令嬢たちが、教室での私の言動を知っていることには疑問を持った。

ミーナと一緒に廊下を歩いていてすれ違う時や食堂にいる時に教室での殿下との会話について嫌味を言ってきたりするのだ。

アンピニア伯爵令嬢たちは殿下が私の側にいる時は近寄ってこないのに、ミーナだとお構いなしに近付いてきて私だけでなくミーナにも毒づいてくる。

ジョルジュ様が卒業されていなくなったと思っているからかもしれない。
ジョルジュ様はミーナのことになるとすぐにでも飛んでくるのに。

でも教室での殿下と私の会話などをどうして知っているんだろう?
Sクラスに私が知らないアンピニア伯爵令嬢の取り巻きがいるんだろうか?
それが誰だかわからない。

それに教室から出て廊下を歩いていたり、食堂にいる時など誰かの視線を感じるようになったのだ。

アンピニア伯爵令嬢たちではない気がするのよね。
誰なんだろう?という不安がずっとある。


2年生になってからはジョルジュ様とミーナに誘われて、学院が休みの日にブレンダーザス公爵令息と結婚されたジョルジュ様のお姉様のヴァネッサ様の所に遊びに行こうと誘われて、王都のブレンダーザス公爵邸に招いて頂いたりするようになった。

ヴァネッサ様とたまにお仕事がお休みの時はブレンダーザス公爵令息、クリスフォード様も一緒に出迎えて下さる。

しがない子爵令嬢の私なんぞに恐れ多いことである!
公爵家に招いて下さるだけでも凄いことなのに。

ヴァネッサ様に初めてお会いしたのはヴァネッサ様が第一子レオナルド様を出産されて体調が戻ってすぐの頃だった。

ヴァネッサ様はミーナが本当のお姉様と慕っているのがわかるとても明るくて優しい、そして私にも態度が変わることなくにこやかで、いらっしゃるだけで場が和やかになる方だ。

何かこれといって悩みを相談する訳ではないのだけれど、他愛のないお話をしているだけで元気をもらえてそして癒やされるのだ。

ヴァネッサ様とお話していると、学院でのことは何てことはないと思えてくるから不思議だ。

私もすぐ大好きになって、ヴァネッサお姉様と呼ばせてもらうようになった。

ヴァネッサお姉様は魔道具のことをとても興味を持って下さっていて、いろいろ聞いて下さることも嬉しいことだ。

クリスフォード様はいつも誰がいてもヴァネッサお姉様中心でヴァネッサお姉様だけを見ておられる。
ヴァネッサお姉様に対してだけ蕩けるような甘い顔をされるのだ。

お二人を見ていると、こちらが恥ずかしくなってしまうくらい常にイチャイチャしておられる。

キスもクリスフォード様が私たちがいてもお構いなしにされたりするのだ。
頭や額、頬だけでなく唇にまで。
ヴァネッサお姉様も恥ずかしがったりはされるけど抵抗はしない。

「もう慣れたわ」

と諦めた表情でいながらどこか嬉しそうだ。

ジョルジュ様、ミーナはもう慣れているようだけど、さすがに唇は驚いて私一人顔が真っ赤になってしまった。
それをジョルジュ様とミーナに誂われてしまうのだ。

私のお父様とお母様もお兄様や私がいてもお母様が構わずお父様にキスしたりするのだけど、さすがに私たちの前で唇はなかったと思う。
あったかな?
両親のは見慣れているからかどこにキスしてようが、何とも思わないのにクリスフォード様とヴァネッサお姉様はお二人共とても美しくて絵にるからか、見惚れてしまうし、何だかとてもドキドキして顔が赤くなってしまう。

私の両親も仲が良いけど、うちはお母様の方が断然お父様を愛しているけど、クリスフォード様とヴァネッサお姉様は断然クリスフォード様の方がヴァネッサお姉様にゾッコンだ。

クリスフォード様に一心に愛されてるヴァネッサお姉様がとても幸せそうで、今まで結婚とかにまったく興味がなかった私なのだけど、お二人を見ているといいなと素直に思う。

ヴァネッサお姉様の第一子のレオナルド様が生まれてから、何度か私もお部屋でレオナルド様にお会いしたけど、小さな赤ちゃんからすくすく大きくなって目も見えるようになって、私たちを見るとキャッキャッと元気にはしゃがれて愛想の良い可愛い本当にまさに天使だ!

レオナルド様は黒い髪と紫の瞳の可愛い天使なのだ。

クリスフォード様、ヴァネッサお姉様とレオナルド様と一緒の時にお会いすると、私の家族を思い出す。

あったかくてただ居てくれるだけで安心する存在。

ジョルジュ様とミーナは私の気晴らしになるように連れてきてくれているのがわかって、凄く感謝している。

そしてブレンダーザス公爵邸でヴァネッサお姉様たち家族を見ている時に私はふと第ニ王子殿下を思い出していた。

どうして殿下を思い出したんだろう?
この時の私は何故なのかわかっていなかった。




 


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