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一話 貴族学院に入学と家族

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※お詫び※

魔法の記載で探知魔法をずっと検知魔法と記載していました。
申し訳ございません。

各話で出てきたものは訂正して参ります。

ご了承下さいませ。

☆★☆



暖かく優しい日差しが木々の緑をキラキラと照らす季節。

私、エンヴェリカ・クエスベルトは自分に宛てがわれた寮の一室から、本日貴族学院の入学式が行なわれる会場に歩いて向かっていた。

この国ジークシルード王国の王族、貴族は16歳の成人を迎える年から18歳まで王都にある王立の貴族学院に通うことが義務とされている。

王族や高位貴族は王都の邸から通学する者たちがほとんどだが、主にそんなに裕福ではない下位貴族や邸から学院まで遠い者たちは寮に入る者が多い。
得てして王都の中心街に居を構えているのは高位貴族で、中心から離れた場所に住んでいるのは下位貴族である。

エンヴェリカは子爵令嬢なので下位貴族に当たるが、下位貴族でも王都に邸があって金銭的に余裕のある者は邸から通学する。

エンヴェリカのクエスベルト子爵家は裕福な部類に入るのだが、ある事情があってエンヴェリカは寮に入ったのだ。


この国では平民にも識字率を上げる為や算術など学術を学ばせて平民も幼い頃から平民専用の学院に通うことが義務とされている。
王都に大きな平民の学院がある。

王都以外に住む各地の領民も領主が領民の為に学院を作り、領民も学べるようになっている。

平民の教育は国が力を入れている政策の1つとなっていて、裕福ではない領地には補助金も出される程である。

王族、貴族もだけど、平民も学院に通う学費は無料。
寮に入れば、朝と夜の食事も無料となる。
それと学院での昼食も食堂で食べれば無料となる。


それだけこの国が裕福である証拠であると同時に、王族や裕福な貴族は学院に多額の寄付をすることも義務となっていて、国を上げて学ぶことに力を入れているのである。


平民はまず王族貴族同様に5歳の時に神殿で魔法の属性判定を行い、次の年6歳から15歳まで平民は小学部と中学部に通い、16歳から18歳まで高学部の学院に通うことが義務とされているが、平民の中でも魔力が高位貴族並み高く優秀な者は、16歳から特別に王族貴族が通う王都にある貴族学院に通うことが許される者もいる。

とても稀なことであるけれど。

王族貴族は15歳まではそれぞれの家で家庭教師を招いて、マナー礼儀、学術など、また家によっては剣術、体術、魔法、をある程度学んでから16歳でさらに専門的に魔法並びに魔術や剣術、学術などを学ぶ為に貴族学院に入学する。

この国では魔法と魔術が分けて考えられている。
基本魔法とは火、水、風、土、光、闇の属性魔法のことである。

属性魔法についてはこの国の人間が各々生まれつき持っている魔法で、すべての国民が5歳になると神殿で属性判定をして自分がどの属性を持っているか知ることが出来る。

生まれつき自分に備わった属性魔法は魔法陣を描いて展開する必要がないと言われている。
自分の体内にある魔力を両手に集めて発動する魔法を詠唱または無詠唱で発動することが出来る。
しかし無詠唱で発動出来る人間は極僅かでとても高難度である。

無詠唱で魔法を発動出来るのはこの国を興す起源となった王族、二公爵、一辺境伯の瞳の継承者と言われる方たちだけかもしれない。
それほど高難度であると言えるし、瞳の継承者は特別な存在であると言える。

一方魔術とは自分に備わっていない属性魔法や無属性魔法を魔法陣を描いて展開することで発動される魔法のことを魔術と呼んでいる。

自分に備わっていない属性魔法も魔法陣を描いて展開し発動出来れば使うことが出来るが、それは自分に備わっている属性魔法より多くの魔力を必要とし通常の人間では魔力が足りていても魔法陣を描く時間から発動するまで時間がかかるので、攻撃や防御には向かない。

また無属性魔法も魔法陣を描いて展開するには、属性魔法陣を描いて展開するよりさらに多くの魔力を使い、そしてその魔法陣が非常に複雑で高度な為に使える者はおのずと少なくなる。

無属性魔法には探知魔法や転移魔法が等あるが、魔法陣を描くもので分類としては魔術であるが、普段の呼称は~魔法と呼んでいる。

なのでここでも魔法を言わせてもらう。

また無属性の中でも防御魔法、結界魔法等は属性魔法からも発動出来るものであるが、魔法陣が必要となる魔術に分類される。

尚、防御魔法の魔法陣は難しくなく家庭教師や学院で学べは比較的簡単に発動出来るものである。
しかしそれなりの魔力が必要で魔力が少ない平民では難しいとされている。

もう1つの結界魔法は個人に対しても発動出来るが、だいたいが建物や王都や領内などでも大規模な場所で展開される魔法で、規模が大きくなればなる程そして強化する為には複数の人間で重ねがけをしていく魔法だ。

王都では王宮、貴族学院や大神殿を始めすべての神殿に結界魔法がかけられている。

重要な拠点、王宮、貴族学院、大神殿等では複数の瞳の継承者たちによる結界魔法が重ねがけされていて強固に護られている。

結界魔法はその魔術師が存命の間のみ有効となるので、1人が亡くなってしまった場合は他の人間が変わってかけることになる。

それともう1つ我が国では魔法魔術によって国を護ったり、国の為に働く者を総称で魔術師と言う。


この国の民は王族、貴族だけでなく平民もほぼすべての民が魔力を持っている。
他国より魔力を持った者たちが圧倒的に多くその魔力により発動する魔法、魔術で国が発展繁栄しており魔法、魔術が最も重んじられる国だ。

貴族が学院に通うのは貴族としてさらに礼儀や社交を学ぶ場でありながら今後、才能のある者が魔術師や騎士、王国魔術研究所に所属したり王宮の文官となる為の選抜を行なう場でもある。

私はクエスベルト子爵家の第一女で貴族としては下位貴族に位置するが、当主であるお父様、そして5歳年上のお兄様、私も魔力が高い。

お母様は元々侯爵家の息女で高位貴族の生まれなので魔力が高い。

お父様はクエスベルト子爵家の第一男として生まれたのだけど、生まれた時から高位貴族並みに魔力が高かったらしい。

クエスベルト子爵家はこの国の東方にあるベルナールド侯爵の傍系で、広大なベルナールド領に接する比べものにならないくらい猫の額くらい小さいが領地を持っている。

中立派のベルナールド侯爵家は当主が国王の側近で法務大臣を勤める国政の中心人物で、後継者である嫡男は今や薬草学の権威となった人物。

彼のお陰で救われた命がたくさんがあり、貴族学院でも新たに薬草学部が設立される程で彼の功績は計り知れない。

それに第一女のナターシャ様は王太子殿下の婚約者で今年に成婚されて王太子妃となられる。

と、この国で途轍もなく力を持った家だ。

そのベルナールド侯爵家の当主で法務大臣であるマーロンド様が実は私のお父様ヘンドリックスの幼馴染みで、今でも交流を持つ親友なのた。

お父様とマーロンド様は身分差など関係なく幼い頃から仲が良かったらしい。
変わり者のお父様と仲が良いのはマーロンド様の人柄によるものが大きいと思う。

お父様は幼い頃から魔導具に囲まれて暮らしていた。
それはお父様の父、お祖父様やご先祖様たちが昔から魔導具を収集する趣味があったのだ。

魔導具には調理や洗濯などをする為の火を起こしたり水を出したりと実用的なものから、魔力を流すと楽器の演奏が聞こえるものや、音楽に合わせて小さな人形が踊るもの、部屋の中に星が見えるような照明、時間を知らせる音楽が鳴ったり人形が出て踊るからくり時計など娯楽的ものが昔からあったそうだが、お祖父様たちご先祖様たちは主に娯楽的なものを収集する趣味を持っていた。

実用的な魔導具と違い、娯楽的な魔導具は大変な高価なものだが、我が子爵家は元はベルナールド領て商会を営む平民だったのだけど、歴代の商会主が商才に富んだ人たちが多く5代前の商会主が、鉱山で発掘される宝石で作られる指輪やペンダントにする為に削られた後、捨てられていた宝石の欠片を何かに使えないかと思いつき、それらの宝石の欠片をドレスやストール、ハンカチ等を彩る装飾にしようと思い立ったようで、当時のベルナールド侯爵に話を通して、南方にあるブレンダーザス公爵領が開発した特産で国内だけでなく世界でも人気になり始めていたシズールという生地を用いて小さな宝石で装飾したドレスやストールを作った。

それが世界で爆発的な大人気になり、ベルナールド侯爵領だけでなくブレンダーザス公爵領にも多大な利益を与えたこと、またそれを独占せず国中に広めたことで国に多大な利益を生んだことで、国に認められて子爵位を賜って、小さいながらに領地も賜りクエスベルト子爵家となった。

それからもクエスベルト商会は宝石を使ったドレスや装飾品だけでなく魔道具の開発、販売などで利益を上げてきた。

なので昔から裕福な方で趣味で高価な魔導具を収集出来るくらいの余裕があったのだ。

お父様は物心ついた頃からあらゆる魔導具が身近にあり、お父様がその魔導具に興味を持ち幼い頃から自作するようになったそうだ。
それはまだ趣味の範疇だったのだけど、そのお父様が10歳の時に幼馴染みである当時ベルナールド侯爵令息のマーロンド様から領地で農場の作物の害虫被害に悩まされていると聞いて、害虫駆除の魔導具の開発にあっさり成功したことからお父様は魔導具の研究に没頭するようになったらしい。

それからお父様はあらゆる魔導具の開発に成功して、王族貴族だけでなく主に平民の生活水準を向上させたことで当時の国王陛下や今の国王陛下に国に貢献したとして、伯爵への陞爵を打診されたが、お父様はずっと断り続けている。

国王陛下から打診されて断れるお父様はどれほどかと思うけど、それだけ魔導具で国に貢献しているということなんだろうね。

お父様が伯爵への陞爵を断る理由は魔導具研究の時間が割かれるの嫌だからというものだ。
魔導具研究だけをしていれば幸せと胸を張って言うお父様らしい理由だ。

この国では伯爵以上の爵位を持つ者は何らかの形で国政に関わることが義務とされている。

もちろん子爵、男爵、準男爵、騎士爵の位の者でも国政に関わっている者たちが多く存在するが、伯爵以上となると少なくとも年の半分は王都に居を構えて王宮に出仕しなければならない。

国王陛下はお父様に王国魔術研究所に所属し、いずれは研究所長になって欲しいみたいだった。

クエスベルト子爵家は平民の商会時代から王都にも邸があるのだけど、お父様は年のほとんどを領地で過ごして魔導具を研究をして生きていきたいようで出世にまったく興味がない。

そしてお母様は元は王家派のストワンツェ侯爵令嬢だったのだけど、貴族学院でお父様に出会い、まったく女性に興味を示さない平凡な見目のお父様のどこが良かったのか、一目惚れして押して押してほぼ押しかけ女房状態で、貴族学院在学中に婚約して卒業と同時に結婚した。

そのお母様は今だにお父様至上主義で「ヘンドさえいればそこは天国だから」と言って憚らず、領地のことも凄く気に入っているようで、お母様はお父様がなるべく魔道具の研究に集中出来るようにと、領地経営と商会を取り纏めてお父様の代わりに領地のことをほとんどしているくらいだ。
 
だから私も5つ年上のお兄様もほとんど領地から出たことはなかった。

お兄様も貴族学院に通ったのだけど、お兄様も寮に入って学んだ。

クエスベルト子爵家は1年のほとんどを領地で過ごして、社交の時期に陛下に命令されてどうしても断われない時だけ、夜会に参加するというふうなので王都で過ごすことがほとんどなく王都の邸は管理人にほとんど任せているという状態なのだ。

なので、お兄様や私が王都の邸から学院に通学するとなるといちから執事、メイドや従者、侍女を探して雇わなければならないか、領地から使用人たちを連れてくることになる。

領地の使用人たちもそんなに多くないから私の為に領地から連れてくると領地の使用人を新たに雇わなければならないだろう。

お父様もお母様も、私が王都の邸から通いたいと言えば、すぐに使用人を雇ってくれただろうけど、お兄様も寮に入っていたし、私も寮で十分だと思っているので入寮することにしたのだ。

一応私にも幼い頃から仕えてくれてる専属侍女のクララが一緒について来てくれることになった。

国にかなりの額を寄付することを条件になのですけど、お父様はそれをすんなりとしてくれました。



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