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百三十七話 慣れているとはいえ、大変なことには変わりありませんわ
しおりを挟む陛下や王族の方たちと王妃殿下やその実家の数々の犯罪や処分と陛下とアランのお話が終わって、邸に戻って数日後、王妃殿下が北の離宮に向かって出発されたとの報告が王宮から知らされた。
後でフィンレルがギルバード様から聞いたことを私に教えてくれたのだけど、陛下は仰った通りにもう王妃殿下にお会いになることはなかったのだそう。
ギルバード様は王妃殿下が出発される時に自分だけでもとお見送りをしたそうなのだけど、王妃殿下はまるでギルバード様がそこに存在していないかのように、ギルバード様を一切見ることなくずっと陛下の名を叫びながら髪を振り乱して陛下を探して暴れまくっていたのだそう。
表向きは王妃殿下は病の療養で北の離宮に移るということになっていたから、王妃殿下を縄で縛ったりはしていなかったそうだけど、ギルバード様がいるということもあって周りは多くの騎士たちが王妃殿下が隙間からしか見えない状態に囲っていて、王妃殿下が暴れ出しても屈強な騎士たちに囲まれている為に大して身動きが出来ず、早々に馬車に押し込まれて外から鍵をかけられて出発してしまったのだそう。
何だかギルバード様のことを考えると可哀想になってしまったけど、フィンレルがギルバード様は自分のけじめの為に、ずっと胸に刻んで忘れない自分の戒めの為に王妃殿下を見送ったのだと思うと言っていた。
ギルバード様も自分が過ちを冒していろいろとあって思うことも苦悩することもあっただろうね。
でもギルバード様はこれから国王となって国の為、民の為に生きていかなくてはならない。
それにキャロライナ様も第一王子殿下、これから生まれてくるお子様もいるんだもの。
立ち止まっている場合ではないよね。
そして私たちもそうだわ。
フィンレルも私もアンジェリカやジークハルト様ももう前を向いて次にいかないとね!
私ももうすぐ子が生まれるんだもの。
フィンレルとラファエル生まれてくる子と使用人たちみんなでもっとサウスカールトン侯爵家をもっと盛り上げていきたいわ。
うちの領地でトーハン王国の作物を作っていこうかという話が出ているし、馬や馬具の国外への普及、それに競馬事業もあるしね。
それにそれだけじゃなくてうちの領地はぶどうとか桃の果物も品質が良くて、これからもっと生産を増やしたり品質改良もしていこうってなっているのよ。
領民もみんな張り切ってその気になっているから私たちも頑張らないとね!
エレナ様、フローリア、王妃殿下たちといろいろなことがあり私も巻き込まれたりしたけど、うちもいろいろあったけどね、何やかんやとサウスカールトン侯爵家は平和に過ごしているのよ。
あれから月日が少し過ぎて私より先にキャロライナ様が二人目を出産された。
お生まれになったのが女の子でギルバード様も陛下も無事に生まれてきてくれたこと、キャロライナ様も無事で元気なことを大変喜ばれているそう。
キャロライナ様は「もういいわよね」と仰っているそうだけどギルバード様は「もう一人くらい…」って仰っているらしいわ。
どうするのかはキャロライナ様次第よね。
で、うちなんだけど私も予定日近くになり陣痛がやってきました。
前世を入れると五人目だけど慣れてるとはいえ、何回経験しても陣痛の痛さは慣れるもんじゃないわよね?
産む人数が増えるとお産が楽になっていく人がいると昔聞いたけど、私は前世三人とも楽ではなかったし、今世はまだ二人目だもの。
どうなるかはわからないわよね。
フィンレルは私の陣痛が始まったと聞いて王宮から飛んで帰ってきたわ。
でもこういう時父親って何も出来ないじゃない?
あら悪い言い方してしまったわね。
もちろん励ましてくれたりとかやってくれることあるわね。
それに妻が陣痛が始まっても仕事があるからって帰ってこない人よりは全然いいわよ。
でもフィンレルはアワアワして私の側をウロつくだけでまったく役に立ちそうにない。
それに私も陣痛が始まっているから余裕がなくてそんなフィンレルに少し苛ついてしまったわ。
フィンレルに何も言わなかったけどね、そんなことをしてはいけないものね。
そこでやって来てくれた叔母様とジェシカにフィンレルが邪魔!って部屋を追い出されていたわ。
この世界まだ前世みたいに夫も出産に立ち会うって習慣がまだないから、フィンレルは外で待ってもらうしかないのよね。
それに私前世昭和の人間だったから旦那に立ち会ってもらったこともないしね、外で待ってもらう方が私も安心出来るのよ、実は。
で、陣痛の時間が狭まってきたのだけどやっぱ痛い!凄い痛い!
慣れとか何なの?それってくらい痛いししんどいよ!
これを経験するのって本当に痛くてしんどいのだけど、これが自分の愛しい子が生まれてくるのには必要だと思えるから耐えられるのよね。
そうじゃなかったから絶対嫌だわ。
頭悪くても言う事聞かない子でもいいから、とにかくちゃんと無事に生まれてきて欲しい、それだけでいい!ってこの時は思うのよね。
でもいざ生まれたらもぉ!言う事聞かない子ね、勉強全然しないじゃないって愚痴を言ったりするようになるのよね。
勝手なんだけどね、でもどんなに親を困らせる子でも無事に元気に生まれて元気に育ってくれることが一番!
どうか無事に誕生して欲しいわ。
で、痛い!痛い!無理!なんて泣き事を言いながらかなりの時間が経ったみたいだけど、フィンレルと私の子が無事に生まれてくれた。
女の子だったわよ。
あの夢の中でベレッタに会ったけど、この子はベレッタかもしれないわね、違うかもだけど。
でもどちらでもいいの、私の大切な大切な愛する子供には変わりないんだもの。
いっぱい愛して叱りもして楽しんで笑って悲しんだりもしながら、一緒に奮闘しながら私も子供と一緒に成長していきたいわ。
この子もラファエルと同じように貴族の子として生まれたから、また前世とまた違った大変なこともあるだろうけど、私はラファエル同様この子の為なら何だって出来るような気がするし何だってやるつもりよ!
それからフィンレルはね、生まれた我が子と私を見たらヘナヘナって蹲ってワンワンって子供みたいに泣いたのよ。
お産を手伝ってくれた先生も叔母様もジェシカもギョッとしていたわよ。
私も困った人ね…と思ったけどそれもフィンレルなのよね。
「ベレッタありがとう、ありがとう。
身体は大丈夫か?」
って第一声がこれだったから許したわよ。
フィンレルも父親として私と一緒に成長していきましょうね。
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