怒れるおせっかい奥様

asamurasaki

文字の大きさ
上 下
138 / 143

百三十五話 あの方たちの結末とこれからのお話ですわ ②

しおりを挟む



「殿下いいだろうか?とは殿下のことも含めてとはどういう意味ですの?」

 アンジェリカがギルバード様の発言に対して聞き返す。

「それは陛下が三年で退位されてもいいかということと私がこのまま国王になってもいいかということなんだが…」

 ギルバード様はアンジェリカに聞かれて少し顔が引き攣っている。

「殿下以外誰が国王陛下となれますの?」

 アンジェリカがすぐに切り返す。

「っ!…それはアンジェ、いやレノバングリー公爵も継承権があるてはないか。

 君が国王、女王陛下になれば反対する者などいないと思う」

「お断り致しますわ。

 何ですの?それ!今更わたくしへの罰ですか?」

 アンジェリカが心底嫌だという顔をする。

「な、何故罰などと言うのだ?」

 ギルバード様が驚きに目を見開く。

「わたくしにとって罰以外の何ものでもないからですわ。

 わたくしが女公爵になったのは権力が欲しいからではございませんのよ。

 あのままお父様が公爵であったりお兄様が新たに公爵となっても、どちらであってもわたくしはまたお家の為の駒としか扱われないことがもう嫌だったのですわ。

 あとキャロのこともございましたが、それともうひとつわたくしジークとずっと一緒に居たかったから、それらが一番すんなりといく方法が、わたくしが公爵になるということだっただけですの」

 おっと!ここでアンジェリカジークハルト様のことぶっちゃけちゃったよ!

 いいのか?陛下やギルバード様の前だけど?

「そ、そうなのか?…」

 ギルバード様が驚いて目だけじゃなく口まで開いてるよ!

「ええ、それにわたくしまだ殿下のことを許しておりませんわよ」

「っ!…そ、それは当然だ。

 私が長年渡り公爵にしてきたことは許されることではない本当に申し訳なかった」

 ギルバード様は真摯にアンジェリカへ頭を下げる。

 ギルバード様はアンジェリカにタジタジだわ。

「前に謝罪はして頂きましたのでもう必要はありませんわ。

 償いは行動で示して下さいませ。

 それは殿下には国王陛下になって頂き一生国の為民の為臣下の為に尽くして頂くことですわ」

 アンジェリカがツンッと顔を上に上げてギルバード様を半目で見つめる。

「っ!…そうか、公爵がそう言うのなら…そうだな…私は一生をかけて国に民に臣下に償っていかねばならないな…」

「殿下その通りでございますわ。

 それに第一王子殿下もお生まれになり、今の王太子妃殿下のお腹には二人目のお子様がおられるのです。

 殿下は王太子妃殿下の夫としてそしてお子様たちの父親として見本とならないといけないお人ですのよ。

 迷っている場合ではございませんわ!」

 アンジェリカがビシッと言った。

「わ、わかったレノバングリー公爵!しかと胸に刻むよ」

「ええそうして下さいませ」

 そこでアンジェリカはフフッと微笑み、ギルバード様も口角を上げて二人は顔を合わせて微笑み合った。

 アンジェリカって結構ツンデレよね。

 ギルバード様にはツンツンツンちょいデレで厳しくガツガツ責めてるけど。

 アンジェリカは何だかんだ言いながらギルバード様のことをもう許しているんだね。

「クックッ、アンジェリカは相変わらずだな」

 フィリップ様が堪らず笑いを漏らす。

「ああ、アンジェリカもだが、キャロライナも負けず劣らずのしっかり者の女傑であるぞ」

「そうみたいですな~ギルにはちょうど良さそうだ」

 陛下の言葉にフィリップ様が同意してニコニコとしている。

 フィリップ様って影のトップって聞いたけど王族の中で一番取っ付き安く、みんなの潤滑油の役割をして下さっているような人なのよね。

 ギルバード様は眉を寄せて一人居心地悪そうな顔をしている。


「ところで改めてアランのことなんだが、アランよ結婚したのだなおめでとう」

 陛下が切り替えるように顔を引き締めてアランを見やって結婚のお祝いの言葉を述べた。

 いよいよアランのことだわ。

 私が緊張してきちゃったわ!

「陛下より私どもに祝言を頂き感謝申し上げます」

 アランは表情をまったく変えない。

「して、私に望むことは何かあるか?」

「陛下に望むこととは何でごさいましょう?」

「そなたが望むなら爵位を与えることもやぶさかではない」

 陛下はキッパリとアランに告げた。

「私は今のままフィリップ様と奥様に一生お仕えする為、そして愛する人と一生共にいる為に結婚したのです。

 望みはそれだけでごさいます」

「…そ、そうか…」

 陛下が切なそうにアランを見つめる。

 アランの気持ちもわかるけど陛下を見てると胸がギュッとしてしまうわ。

「アランよ、私から発言してもよいか?」

 そこにギルバード様がアランに呼びかける。

「王太子殿下が私なんぞに断りを入れる必要はございません」

 アラン陛下にもギルバード様にも不敬な態度よ!

 もうハラハラしちゃうわ。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

旦那様には愛人がいますが気にしません。

りつ
恋愛
 イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。 ※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。

侍女から第2夫人、そして……

しゃーりん
恋愛
公爵家の2歳のお嬢様の侍女をしているルイーズは、酔って夢だと思い込んでお嬢様の父親であるガレントと関係を持ってしまう。 翌朝、現実だったと知った2人は親たちの話し合いの結果、ガレントの第2夫人になることに決まった。 ガレントの正妻セルフィが病弱でもう子供を望めないからだった。 一日で侍女から第2夫人になってしまったルイーズ。 正妻セルフィからは、娘を義母として可愛がり、夫を好きになってほしいと頼まれる。 セルフィの残り時間は少なく、ルイーズがやがて正妻になるというお話です。

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る

家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。 しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。 仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。 そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

年に一度の旦那様

五十嵐
恋愛
愛人が二人もいるノアへ嫁いだレイチェルは、領地の外れにある小さな邸に追いやられるも幸せな毎日を過ごしていた。ところが、それがそろそろ夫であるノアの思惑で潰えようとして… しかし、ぞんざいな扱いをしてきたノアと夫婦になることを避けたいレイチェルは執事であるロイの力を借りてそれを回避しようと…

王命での結婚がうまくいかなかったので公妾になりました。

しゃーりん
恋愛
婚約解消したばかりのルクレツィアに王命での結婚が舞い込んだ。 相手は10歳年上の公爵ユーグンド。 昔の恋人を探し求める公爵は有名で、国王陛下が公爵家の跡継ぎを危惧して王命を出したのだ。 しかし、公爵はルクレツィアと結婚しても興味の欠片も示さなかった。 それどころか、子供は養子をとる。邪魔をしなければ自由だと言う。 実家の跡継ぎも必要なルクレツィアは子供を産みたかった。 国王陛下に王命の取り消しをお願いすると三年後になると言われた。 無駄な三年を過ごしたくないルクレツィアは国王陛下に提案された公妾になって子供を産み、三年後に離婚するという計画に乗ったお話です。  

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

本日、貴方を愛するのをやめます~王妃と不倫した貴方が悪いのですよ?~

なか
恋愛
 私は本日、貴方と離婚します。  愛するのは、終わりだ。    ◇◇◇  アーシアの夫––レジェスは王妃の護衛騎士の任についた途端、妻である彼女を冷遇する。  初めは優しくしてくれていた彼の変貌ぶりに、アーシアは戸惑いつつも、再び振り向いてもらうため献身的に尽くした。  しかし、玄関先に置かれていた見知らぬ本に、謎の日本語が書かれているのを見つける。  それを読んだ瞬間、前世の記憶を思い出し……彼女は知った。  この世界が、前世の記憶で読んだ小説であること。   レジェスとの結婚は、彼が愛する王妃と密通を交わすためのものであり……アーシアは王妃暗殺を目論んだ悪女というキャラで、このままでは断罪される宿命にあると。    全てを思い出したアーシアは覚悟を決める。  彼と離婚するため三年間の準備を整えて、断罪の未来から逃れてみせると……  この物語は、彼女の決意から三年が経ち。  離婚する日から始まっていく  戻ってこいと言われても、彼女に戻る気はなかった。  ◇◇◇  設定は甘めです。  読んでくださると嬉しいです。

真実の愛は、誰のもの?

ふまさ
恋愛
「……悪いと思っているのなら、く、口付け、してください」  妹のコーリーばかり優先する婚約者のエディに、ミアは震える声で、思い切って願いを口に出してみた。顔を赤くし、目をぎゅっと閉じる。  だが、温かいそれがそっと触れたのは、ミアの額だった。  ミアがまぶたを開け、自分の額に触れた。しゅんと肩を落とし「……また、額」と、ぼやいた。エディはそんなミアの頭を撫でながら、柔やかに笑った。 「はじめての口付けは、もっと、ロマンチックなところでしたいんだ」 「……ロマンチック、ですか……?」 「そう。二人ともに、想い出に残るような」  それは、二人が婚約してから、六年が経とうとしていたときのことだった。

処理中です...