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百三十五話 あの方たちの結末とこれからのお話ですわ ②
しおりを挟む「殿下いいだろうか?とは殿下のことも含めてとはどういう意味ですの?」
アンジェリカがギルバード様の発言に対して聞き返す。
「それは陛下が三年で退位されてもいいかということと私がこのまま国王になってもいいかということなんだが…」
ギルバード様はアンジェリカに聞かれて少し顔が引き攣っている。
「殿下以外誰が国王陛下となれますの?」
アンジェリカがすぐに切り返す。
「っ!…それはアンジェ、いやレノバングリー公爵も継承権があるてはないか。
君が国王、女王陛下になれば反対する者などいないと思う」
「お断り致しますわ。
何ですの?それ!今更わたくしへの罰ですか?」
アンジェリカが心底嫌だという顔をする。
「な、何故罰などと言うのだ?」
ギルバード様が驚きに目を見開く。
「わたくしにとって罰以外の何ものでもないからですわ。
わたくしが女公爵になったのは権力が欲しいからではございませんのよ。
あのままお父様が公爵であったりお兄様が新たに公爵となっても、どちらであってもわたくしはまたお家の為の駒としか扱われないことがもう嫌だったのですわ。
あとキャロのこともございましたが、それともうひとつわたくしジークとずっと一緒に居たかったから、それらが一番すんなりといく方法が、わたくしが公爵になるということだっただけですの」
おっと!ここでアンジェリカジークハルト様のことぶっちゃけちゃったよ!
いいのか?陛下やギルバード様の前だけど?
「そ、そうなのか?…」
ギルバード様が驚いて目だけじゃなく口まで開いてるよ!
「ええ、それにわたくしまだ殿下のことを許しておりませんわよ」
「っ!…そ、それは当然だ。
私が長年渡り公爵にしてきたことは許されることではない本当に申し訳なかった」
ギルバード様は真摯にアンジェリカへ頭を下げる。
ギルバード様はアンジェリカにタジタジだわ。
「前に謝罪はして頂きましたのでもう必要はありませんわ。
償いは行動で示して下さいませ。
それは殿下には国王陛下になって頂き一生国の為民の為臣下の為に尽くして頂くことですわ」
アンジェリカがツンッと顔を上に上げてギルバード様を半目で見つめる。
「っ!…そうか、公爵がそう言うのなら…そうだな…私は一生をかけて国に民に臣下に償っていかねばならないな…」
「殿下その通りでございますわ。
それに第一王子殿下もお生まれになり、今の王太子妃殿下のお腹には二人目のお子様がおられるのです。
殿下は王太子妃殿下の夫としてそしてお子様たちの父親として見本とならないといけないお人ですのよ。
迷っている場合ではございませんわ!」
アンジェリカがビシッと言った。
「わ、わかったレノバングリー公爵!しかと胸に刻むよ」
「ええそうして下さいませ」
そこでアンジェリカはフフッと微笑み、ギルバード様も口角を上げて二人は顔を合わせて微笑み合った。
アンジェリカって結構ツンデレよね。
ギルバード様にはツンツンツンちょいデレで厳しくガツガツ責めてるけど。
アンジェリカは何だかんだ言いながらギルバード様のことをもう許しているんだね。
「クックッ、アンジェリカは相変わらずだな」
フィリップ様が堪らず笑いを漏らす。
「ああ、アンジェリカもだが、キャロライナも負けず劣らずのしっかり者の女傑であるぞ」
「そうみたいですな~ギルにはちょうど良さそうだ」
陛下の言葉にフィリップ様が同意してニコニコとしている。
フィリップ様って影のトップって聞いたけど王族の中で一番取っ付き安く、みんなの潤滑油の役割をして下さっているような人なのよね。
ギルバード様は眉を寄せて一人居心地悪そうな顔をしている。
「ところで改めてアランのことなんだが、アランよ結婚したのだなおめでとう」
陛下が切り替えるように顔を引き締めてアランを見やって結婚のお祝いの言葉を述べた。
いよいよアランのことだわ。
私が緊張してきちゃったわ!
「陛下より私どもに祝言を頂き感謝申し上げます」
アランは表情をまったく変えない。
「して、私に望むことは何かあるか?」
「陛下に望むこととは何でごさいましょう?」
「そなたが望むなら爵位を与えることもやぶさかではない」
陛下はキッパリとアランに告げた。
「私は今のままフィリップ様と奥様に一生お仕えする為、そして愛する人と一生共にいる為に結婚したのです。
望みはそれだけでごさいます」
「…そ、そうか…」
陛下が切なそうにアランを見つめる。
アランの気持ちもわかるけど陛下を見てると胸がギュッとしてしまうわ。
「アランよ、私から発言してもよいか?」
そこにギルバード様がアランに呼びかける。
「王太子殿下が私なんぞに断りを入れる必要はございません」
アラン陛下にもギルバード様にも不敬な態度よ!
もうハラハラしちゃうわ。
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