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百三十二話 こちらも恋の花咲きますか?
しおりを挟む私がアランに「うちのケイトのことどうしてくれるんじゃい」とガンガンと攻めた結果。
アランがケイトを庭の奥に引っ張って行って速攻でプロポーズしてケイトがOKしたみたいで、アランとケイトが手を繋いで戻ってきて、フィンレルと私に「私たち結婚します」って宣言したのよ。
それからのフィンレルの行動が早かったわ!今から教会に行くぞって言って、フレオとリリアンナにテキパキと指示して、二人と私を教会に連れて行き、その日にアランとケイトは結婚したの。
婚姻証明書を書いて、フィンレルと私が立ち会い人、前世でいう保証人になり私たちもサインしてフィンレルが侯爵家の権力を使って?すぐ神父を呼び宣誓も済ませた。
これぞスビード結婚ってやつよね?
私フィンレルの行動力に「フィンカッコいい~」って叫んじゃったわよ。
本当にフィンレルってば男らしくてカッコ良かったわ。
私本当にまた惚れ直しちゃったわよ!
あの陛下が横槍を入れてくることはないとは思うけど、本人たちがその気ならすぐに動いた方がベストよね。
まあ陛下がその気になれば王命という手段があるのだろうけどそこまではされないと思うわ。
愛情深い方だもの、きっとアランの幸せを思って祝福してくれると思うの。
アランの継承権云々の問題はまだ残っているけど、ギルバード様もいるし第一王子も生まれているからもしもの可能性は低いと思うのよね。
だから陛下がアランを実子として籍を入れない限り大丈夫だと思うの。
それがどうなるかってことが残っているんだけど、それはされないような気がしているのよ。
陛下は愛するレティシア様の子であるアランとこれから親子として交流したいとは思っているだろうけど、アランを強引に王族にしようとは思ってないはずよね。
一方アランは陛下のことに関して複雑みたいよ、当然よね。
いきなり陛下が自分の父親だと言われても実感もなければどう思えばいいのかわからないわよね。
そりゃ私もそうなると思うわ。
アランから聞いた訳ではないけど、実の父親である陛下のことを恨んだりはしてないみたいなの。
でも長年父親はいないものとして生きてきたのだからいきなりお父様会いたかったですとはならないわよね。
まあこれは徐々にという感じで周りはとやかく言わずに見守っていくことよね。
ところでアランとケイトがいろいろとすっ飛ばしての結婚になっちゃっけど、うちのもう一組がまだウダウダしております。
今ランディスが私の前に座ってズズーンと落ち込んでいるのよ。
ランディスが私に相談があると言ってきたから、庭で二人でお茶会をしている。
今周りに誰もいないから気安く喋れるわ。
「何?私に相談て、リリアンナにフラれたの?」
「うぉっ!奥様いきなり傷口抉らんで下さいよぉ~」
ランディスが眉をハの字に寄せてボヤく。
「だってランディスわかりやすいんだもの~すぐわかったわよ」
「…フラれましたぁーあああぁ」
ランディスが頭を抱えて前にあるテーブルに突っ伏す。
デカ筋肉ゴリラのランディスがゴンとテープに突っ伏したから、テーブルが弾みでグラグラと揺れた。
ちょっとケイトが入れてくれた美味しいお茶が溢れそうになっているじゃない!
「リリアンナは何て断ってきたの?」
「…あまりにもランディス様が若いので…って言われてん…」
ランディスがシュンッとしながらボソっと言う。
「なるほどね~ランディスとリリアンナって九歳差だっけ?
そりゃ女の方は気にするよ。
でも年齢差だけを気にしているのならまだチャンスはあるんじゃない?」
私がニコニコしながら言うと。
「…そんな気楽な…相談してんのに俺フラれたんスよぉ」
ランディスが落ち込んでグチグチ言う。
「あら一回フラれたくらいで諦めんの?ランディスのリリアンナに対する思いってそんなものなの?」
「ち、ちゃう!俺のリリアンナさんに対する思いはスッゲーのよ!
何年片思いしてきたって思ってるんねん!
…でもやっとやっと決心して告白したのに…あえなく撃沈して落ち込んどるんです…」
片思い歴をドヤ顔で言われてもね~。
「私が見てるにまったく脈がない訳でもないと思うのよね~。
ただ女性は自分の方がかなり年上となると結構悩むと思うよ。
いざ付き合ったり結婚してもいつか若い子の方が良くなるんじゃないかってやっぱり思ってしまうと思うな~。
そんな男性ばっかりではないことをちゃんとわかっていてもね…」
「ハァ~俺はそんなことないねんねどな~」
ランディスが溜息を吐く。
「まああんたとは付き合うつもりなんかないわ!キモッ!近寄んな!チッチッって感じではないんでしょ?」
「っ!…そ、それはないと思うねん…」
ランディスの声がだんだんと小さくなっていく。
「う~んなら当たって砕けろで押せ押せでいくしかないんじゃない?
リリアンナからは絶対こないと思うから」
「やんな~でも押せ押せで嫌われたら…俺仕事手につかんようになるわ…辞めへんけど…でも…辛っ…」
ランディスが大きな身体を丸めて泣きそうに目をウルウルさせている。
それが何だか可愛くてもっと誂ってやりたくなるけど、それは意地悪だからやめておく。
「何とも思ってない人に押せ押せでこられたらうっとおしいだけだけど、私はたぶん違うと思うんだよね~。
う~ん告白する時に何かプレゼントするとか?」
ランディスが首を傾げる。
「プレゼント?貢ぐくんになるん?俺?」
「出た!昭和ワード!
貢ぐくんって言うのは女性側が全然その気がない人に、自分が欲しいものを買ってもらうだけの都合の良い存在だと思っているから貢ぐくんって言うんだよね?
リリアンナにとってランディスはその気がない訳ではないと思うの。
だから女性ってちょっと気になる人とかが自分の好みや趣味を知ってくれていたり、ちょっとしたものをプレゼントをされると嬉しいと思うものじゃないかな~。
みんながみんなそうな訳ではないかもだけどね」
「なるほどな~でも何とも思われてへんかったら…」
ランディスがショボンとする。
「また凹む~一回くらいフラれたくらいでもう諦めんの?」
私はジロッとランディスを睨む。
「っ!…い、いや諦められへん…」
「ならリリアンナの心を掴む努力してみようよ!
プレゼントって言っても高価過ぎるものは駄目だよ!付き合ってもないからね。
いきなり高価な物送られたらただ重いだけだからね」
「…う、うんそれくらいはわかる…」
ランディスが素直に頷く。
「そうね~あっ!ランディス腕かまあるじゃない!」
「腕~っ?!」
ランディスが自分の腕を見てスリスリと自分で触っている。
「そっちじゃない!料理人の腕の方だよ!
スィーツ作って箱にお洒落に可愛く入れてそれをプレゼントしてみれば?」
「そ、そっかスィーツか!」
うんうんと私は頷く。
「リリアンナが好きなものをね。
これからはランディスが自分でリサーチしていって欲しいけど、例えばリリアンナはね~紅茶の茶葉が入ったものが好きだと思うわ。
紅茶のクッキーとかシフォンケーキとかね…あとそう!大福!」
「大福かぁ~リリアンナさん大福好きか~俺も大好き!」
ランディスが嬉しそうに顔を綻ばせる。
侍女長のリリアンナと料理長のランディスは同じうちの使用人でも仕事柄接することがほとんどないから、ランディスが個人的にリリアンナに話しかけたりしない限り今までリリアンナと接することがそんなになかっから、ランディスがリリアンナの好みを知らなくても仕方ないんだよね。
リリアンナは自分の好みを大っぴらにに言う人じゃないし。
そうそう、今我が国ではトーハンブームがやってきている。
あれからトーハン国との交易もどんどん広がってきていて、服や家具、装飾品に食料品など輸入品目が増えて貴族平民共々大ブームになっているのよ!
米や味噌、醤油の材料なども入ってきて我が国でも製造されるようになって、和食、和菓子ここではトーハンフード呼ばれているものが大人気になっている。
トーハンフードレストランとかも王都で出来始めたし、トーハン王国のかんざしとか漆の食器を販売するお店なども出来たのよ。
そして我がサウスカールトン家でも和食がメニューに出るようになったのよ!
たまごかけご飯がそこそこの頻度で食べれるようになった訳。
でもとても貴重なものだからまだ毎日は食べられないのよね。
で、和菓子も種類はまだ少ないけど作ってもらえるようになって、その中でもリリアンナは大福がかなり好きっぽい。
リリアンナはあれが好きこれが好きって私には言わないタイプだけど、大福を食べている時のリリアンナは目がキラキラしているから絶対好きなはず!
「そうそう、そういうリリアンナが好きなスィーツをお洒落に詰め合わせにしたものを贈ったら喜んでくれると思うわ」
「そ、そうか!わかった!早速作って渡す!」
ランディスの目が輝いてきたわ。
「あとは花とかかな~。
これはリリアンナの好きな花をリサーチしてみるとか、手頃なものを庭師のドノバンに聞いてみるとかかな」
「ドノバンおじにか、うんいいかもな!」
「でしょ?あとは王都で今流行ってるトーハン王国のかんざしとかプレゼントするとか?
トーベル王国のものはまだそんなに出回ってないから結構高価なものが多いけど、かんざしくらいならまだお手頃だと思うのよね。
リリアンナは長い髪を後でお団子にしているからそのお団子のところにかんざしを挿したらとても似合うと思うわ」
ふむふむとランディスが顎を手で触る。
「…かんざしか~でも俺女性がどんなもんを好むのかからっきしわからんのやけど…」
「しょうがないな~今度私が王都にお買い物に行く時にランディスが荷物持ちしてくれるなら、一緒に見てあげるよ」
パァッとランディスの顔が輝く。
「ほ、ほんま~?めさ有り難いです!
あっ!でも…旦那様が~あんまし俺が奥様と親しくしてると俺に当たりがキツくなるんや~。
俺~旦那様に睨まれたないしな~…」
「フィンが?」
私は何で?と首を傾げる。
「旦那様は俺らのこと疑ってるとか全然ないと思うけど、奥様と仲良くしてると気分良くないんかもや~」
「えええ?ランディスと私が?ナイナイ」
私は手をフルフル振って笑う。
「やっ!そうやけど~それでも旦那様は嫌なんちゃうかな?」
「そうかぁ~じゃあフィンにランディスがリリアンナのこと好きって言っていい?
まあランディスわかりやすいからフィンも気付いてそうだけど、それで私がランディスに協力してあげようと思ってるって伝えたら、一緒に買い物に行っては駄目って言わないだろうし機嫌も悪くならないと思うけど?」
私が聞くと。
「う、うん別に言うてもかまへんよ…」
ランディスが顔を赤くする。
「ちゅーぼうかよ!」
「言わんといて下さい!よろしくお願いします奥様」
私が突っ込むとランディスが殊勝に頭を下げて頼んできた。
ということでリリアンナリサーチ作戦とリリアンナの好きなもの贈って告白作戦が発動したのだった。
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