怒れるおせっかい奥様

asamurasaki

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百二十八話 人を愛するということは…

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 えっとあれから王宮から邸に戻ってきたんだけど、王妃殿下のことやアランのことなどいろいろあり過ぎて、本当に一度落ち着いて考えないといけないわよね。

 でも今日のところは脳がパンパンでキャパオーバーになっているから、後日ゆっくりとお話することになった。

 フィンレルもアランのことをお義父様から聞いたことがないらしい。

 まあいくら息子にでも陛下のことだから簡単には言えないことだったんだろうけど、フィンレルも戸惑っているわ。

 それにアラン本人は表情はいつもと変わらないけど、何かどこかフワフワとしているように見えて、いろいろと考えて自分の中でまとまらないんじゃないかしら?

 彼にも考える時間が必要よね?

 だから今日は何も聞かずまた後日にすることにしたの。


 翌日フィンレルはまた王宮へ行ったわ。

 まだ後処理とかこれからのこととかで忙しいみたい。

 落ち着くまでまだしばらくはかかりそうね。

 私は二日ほどはゆっくりしたわ。

 ちょっと脳を休めないと大変なことになっていたから。

 今でも王妃殿下のことを思い出すと気持ち悪くなるのよ。

 本当にヤバかったよね?もうまともではなかったと思うわ。

 悪いけどバケモンよね。

 人を好きになること自体はわかるわ。

 私だって前世で十代二十代の時に人を好きになって恋したことあるもの。

 嫉妬したりとかはもちろんあったわよ。

 でもあそこまで病的なまでに一人の人に執着して、周りがみんな自分の敵みたいに思うことはなかったわ。

 前世でヤンデレって言葉があったけど、王妃殿下はまさにそういうのかしら?

 ん~でもヤンデレよりサイコパスっぽい?ヤンデレとサイコパスのミックスって感じかな。

 本人の元からの資質が大きいのかもしれないけど育った環境も関係あるよね。

 王妃殿下は侯爵令嬢として生まれて何不自由なく育った方だと思うの。

 それに可憐で美しい方だもの、幼い頃からそれはそれは周りからチヤホヤされて、蝶よ花よって育てられたんだろうね。

 タイプは違うけど自分が欲しいものはすべて手に入ると思っているのはエレナ様と王妃殿下は同じだったかもね。

 王妃殿下は陛下のことを本当に愛していたんだと思うわ。

 王妃殿下は最初は陛下も自分を愛してくれるって自信があったのかもね。

 でも陛下にはレティシア様がいた。

 陛下はレティシア様だけを愛していたし、レティシア様も陛下だけを愛していた。

 そこには誰も入り込めないくらいだった。

 でも陛下は王太子でレティシア様は力がそんなに力のない伯爵令嬢だった。

 お互いの立場がありお互い愛し合っても簡単に婚約とはいかなかった。

 たがら陛下はその時はレティシア様と王妃殿下も含めた何人かを婚約者候補とするしかなかった。

 陛下はその間に当時の国王陛下や貴族たちの支持を取り付けてレティシア様を婚約者にしようと奔走して、やっと外堀を埋めれたところで、王妃殿下と実家がレティシア様を排除する為に、レティシア様の両親とお兄様を事故に見せかけて殺害してしまって、結局レティシア様を婚約者にすることが出来なかった。

 前世私が生きた時代の日本では考えられないことかもしれないけど、前世でも身分制度があった昔の江戸時代とかの日本ならきっとあった話だよね。

 陛下はレティシア様を婚約者候補にしてしまったのが間違いだったと言っていたけど、そうだったのかもしれないし違うかもしれない。

 だって誰が見たって陛下が愛しているのがレティシア様ってわかるならレティシア様を排除しようとする勢力は王妃殿下たちだけではなかったのかもしれないし、婚約者候補になっているなっていないは関係なかったかもしれないよね。
 

 そして陛下のお父様の前陛下だけど、前陛下は陛下を助けてはくれなかったみたいだけど、陛下が王太子なんだから自分で何とか出来るようでなければ、国を任せられないと思っていたから手助けをしなかったのかもしれないよね。

 陛下は自分に力がなかった、自分が政争に負けたんだと言っていたけど、それはよくわかるんだけど前世自由恋愛を許されていた私の立場だと陛下のこともレティシア様のこともとても悲しいと思うわ。

 そんなに愛し合っているなら望み通り結婚出来ていたら良かったのになって思うわ。

 でも陛下が王妃殿下の子でも子には罪はないからってちゃんとギルバード様に向き合って愛していたのは良かったと思った。

 これで陛下がギルバード様を憎んで疎んじたりしていたらギルバード様が救われない。

 王妃殿下も結婚しても陛下に愛されなかったことは可哀想だと思う。

 でも陛下からしたら愛してる人を排除したかもしれない人を愛せなかったんだろうね。

 その時は確かな証拠はなかったんだろうけど、陛下は十中八九王妃殿下とその実家だと思っていた。

 それでも陛下は愛せなくても国の為、民の為に王妃殿下とそれなりに上手くやっていくつもりだったんだろうけど、王妃殿下は陛下の愛を求めた。

 王妃殿下は国より民より陛下の愛が欲しかった。

 でもそれが得られないからああなってしまったのね。

 悲し過ぎるね…王妃殿下がやったことは許せることでは決してないけど、でも可哀想な人だとは思うわ。

 人を愛するって難しいっていうか思い通りにならなかったりもするんだね…。


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