怒れるおせっかい奥様

asamurasaki

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百二十話  いよいよですわ ①

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「直勝は日に焼けたなあ。久々すぎて誰かわからなかったぞ?」

 氏政は隣に座る直勝の肩を叩きながら話しかけた。周りのメンバーも気心の知れた連中ばかりなので近況を話しながら時間を潰し始めていた。

 「若殿も昔に比べて大きくなられて感無量にございまするぞ。」

 「そうだな…昔から直勝には助けてもらっていた。今も手が回らない水軍関係を直勝には任せてしまっている状態だからな。助かっている。」

 「そう思われるのでしたらもう少し無茶振りを減らしてもらってもよろしいでしょうか?」

 氏政が神妙そうな顔をしながら感謝の言葉を投げているが口元が途中でピクピクしているのに気づいた直勝は白々しいといった表情で苦言を呈する。

 「はっはっはっ、来年再来年は我も海に力を入れるつもりだから許してくれ。陸の方は今年までで大分落ち着かせる事ができた。これ以上は父たちに放り投げても大丈夫だ。」

 この言葉を聞いていた近くの綱成や幻庵 康虎はゲンナリしていた。確かに氏政がいなくてもこのまま北条で培ってきたノウハウで他の新しい土地も回せるだろうし大きな計画や砦については氏政達が決めるだろうが、実際には激務が待っているのだ。そこで氏政が担当していた地域がごっそりとこちらに回ってくるとなってくれば来年の忙しさは想像したくもない。となっていた。

 「それは有難い事ですが、何をされるつもりで?」

 直勝は氏政が単に手伝いに来ただけでは無いことを理解していた。新しい船を開発するのか、どこかに攻め込むのか。はたまた予想もできないことをしてくるのか謎である。

 「なに、それは父上が来てから皆の前で話そうぞ。それに、新しいことを始めるにしても直勝の仕事は減るはずだ。港と文官達の滑らかなやりとりができるように整備したりこちらでできることは大体やろう。むしろ任せたいのは実働の方だからな。」

 「はっ、私としては有難いですが。」

 ガラッと音がして氏康が入ってきたことで皆が話をやめ姿勢を正した。

 「はぁ、疲れたわ。茶をくれ。それと皆のものも楽にせい。ここでは本心で話し合う場所じゃ、堅苦しいのは後で良い。」

 氏康が片足を上げて胡座をかき楽な体勢で茶をしばき始めた為皆も少し楽にして会話を再開し始めた。

 「父上も大変そうですね。」

 「誰のせいじゃ、ここ数年で挨拶にくるものが一気に増えた為年末年始がさらに忙しくなった為に今年からは年末の挨拶と新年の挨拶で各家や使者を出す勢力ごとに分けたのだぞ?」

 「それは申し訳ないですがまあ、我らの悲願に近づいた証拠だと思って耐えてくだされ。」

 ニコニコ顔で返す息子を見て何を言ってもダメだと思ったのだろうか一息はぁといって茶を啜っていた。

 「ですが、実際年末と年始で分けるのは大切だと思いますがね。後は、北条家は年末年始より少し早めと遅めにきてもらうとかですかね。これは必要なことなので受け入れてもらえることでしょう。その分、年末年始は近くの直属の城に集まって宴会させればよろしいかと。」

 「成程、来年からはそうしてみるか。」

 「それと、そろそろ競馬場も整備され普及し始めましたし、世代交代が起きたり血統が分かれてきた為面白いことになっていますが報告は行っていますか?」

 「ああ!あれは面白いな。各外国馬と日本の馬毎の家系図を作り新しく生まれた馬達の特色や特性を纏めることで掛け金や利息が変わるのは良くできているな。ちなみに私の推している馬は春風号系列だな。」

 春風号とは輸入してきた外国馬同士でできたガタイがよくパワフルな走りをする牡馬の事だ。この馬は各競馬場の重賞を勝ち、その産駒も春風の力を受け継ぐように同じような走りを見せる事で最近巷を賑わせている。

 
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