怒れるおせっかい奥様

asamurasaki

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九十一話 あっ!これはヤバいやつですわ ④

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 私の話にエレナ様が呆然となった。

「お、王太子妃殿下?…」

 フローリアがオロオロしながら焦ってエレナ様を見る。

「っ!…な、何を言ってるの!

 私はこの世界のヒロインだと言ってるでしょ!

 あんたはね、ここで媚薬を飲んで男たちに穢されて、それでフィンレルに軽蔑されて惨めに捨てられるのよ!

 そうだわ!私が簡単にギルと離縁出来ないなら王太子妃のままでいいわ!

 その代わりフローリアがフィンレルと結婚すればいいのよ!ねぇ、フローリアいい考えじゃない?」

 エレナ様がフローリアを見つめてニヤリとする。

 えええ、何でそうなる?フローリアが今の夫と離縁してフィンレルと再婚するの?有り得ないわよ。

 フローリアの夫と離縁なんてしたらコローラル子爵家は大変なことになるわよ。

「まあ、エレナ様それ!良い考えですわ~。

 わたくしがフィンレル様と結婚したらエレナ様もフィンレル様と頻繁に会えますわよね~」

 フローリアがパアッと顔を明るくしてパンと胸の前で手を打って良い考えだわと嬉しそうに笑う。

 ヤバいヤバい!そんなこと有り得ない。

「そうでしょう~?そうすればフローリアにはギルにも会わせてあげるわ。

 それにギルに言ってフィンレルをギルの側近に戻してもらうわ。

 そうしたら、ギルにもフローリアにもフィンレルにも度々会えて、ずっと一緒にいれるわ」

 エレナ様とフローリアが現実には有り得ないことをキャッキャッとはしゃいで語り合っている。

 私が後に立っている騎士たちを見ると、彼らは呆然とエレナ様とフローリアを見つめている。

 と、その中の一人の騎士と私がバチッと目が合った。

 私は彼を見つめながら『愚かなことはやめなさい。今ならまだ引き返せる』と言葉には出さないけど、目で訴えかけた。

 こんな常識知らずのヤバい人たちの言うことを聞いたら地獄に行くことになるわよ!他の騎士たちも見つめながら首を横に振った。

 騎士たちはビクッと肩を跳ねさせて、自分たちがどれだけ愚かなことをしようとしたのかわかったのじゃないかな?

 今でも十分ヤバいけどね。

 これでエレナ様の命令を騎士たちが無視するか止めてくれればいいのだけど…。

 逆にヤケクソになって開き直られたらどうしよう…。

「フフッ、それじゃあエレナ様この地味平民女にさっさと媚薬を飲ませて後の騎士たちに襲わせてボロボロにしてやりましょうよ」

 フローリアがニンマリと口角を上げて嫌らしく笑う。

「そうねぇ~そうしましょ」

 とエレナ様が言ってドレスのポケットからケバい薄い紫のようなピンクのような液体が入っている瓶を出してきた。

 わぁ~ヤバい!ヤバいわ! 

 何とか思い留まらせることは出来ないかな?

 騎士たちはかなり動揺しているわ!

 ここでエレナ様とフローリアが思い留まってくれれば最悪の自体は免れることが出来るはず!

「いいですか?お二人様ともそんなことをしても貴方様たちが思い描く通りには決してなりませんわ。

 どうか気付いて考えを改めて下さいませ!」

「何を~?偉そうにこの地味ブス女が!

 お前が私に偉そうな口を利くなんて百万年早いんだよ!」

「いっ!…」

 エレナ様が私の髪を掴んで無理矢理顔を上げさせて自分の顔に近づけてくる。

 痛い!髪を引っ張られて悲鳴を上げそうになるけど、何とか我慢する。

 でもエレナ様の目がイッててかなりヤバい。

 もう正気ではないように見える。

 ちょっと煽り過ぎてしまったかな?でも時間を引き伸ばすのには煽って向こうもこっちもたくさん喋り倒すしかないと思っちゃったんだよね~。

「王太子妃殿下、フローリア今の現実を見て下さい!

 フローリアにはジョシュア様がいるではありませんか!」

 私は何とかもう少しでも時間を稼ごうとする。

「はあ?あんたに何がわかるのよ!

 ジョシュアはね、生真面目で融通が利かないちょっと顔が良いだけのつまらない男なのよ!

 わたくしがドレスや宝石を買ったら、そんなにいらないだろ!とか贅沢のし過ぎだとかとにかく駄目駄目ばっかりで最近は特に鬱陶しいったらないのよ!

 それに比べフィンレル様はジョシュアなんかよりも凄く美しくておまけに侯爵様よ!

 わたくしがジョシュアと別れてフィンレル様と結婚すればお父様もお母様も大喜びしてくれて、またわたくしに優しく何でも許してくれるようになるわ。

 あんたが居なくなればいいのよ!」

 フローリアも目が澱んでニヤついてヤバいわ!

 どうしよ!どうしよう!なんかこれヤバいやつ!フィンレル!フィンレル助けて!

 私は何とか口を開く。

「そんなこと無理ですって!

 ジョシュア様と離縁なんてしたらコローラル子爵家は終わってしまうのですよ!」

「うるさい!うるさいうるさい!

 卑しい平民女の娘のお前なんかがわたくしより上の立場なんて許せないのよ!

 絶対許さないわ!

 あっ、そうだわ…あんた媚薬飲んで男に穢されてショックで自分で死ねばいいのよ!そしたらあんたが居なくなってくれるわ!清々するわ!」

「いいわね~後で自殺に見せかけて殺してあげるわ~ふふふっ」

 フローリアとエレナ様が楽しげに笑って近付いてくる。

 ヤバいヤバい!私を殺すってエスカレートしてるじゃん!

「いやっ!…んんんんっ」

 私は媚薬を絶対飲まないぞと口を真一文字に閉じて粘る。

 エレナ様が騎士たちに命令したけど、騎士たちは動かず呆然と立っているだけ。

 私は何とか抵抗したけど、フローリアに押さえ付けられて、強引に口を開けさせられて、エレナ様に口に媚薬の瓶を放り込まれた。

 私は抵抗したけど苦しくて、嚥下してしまい媚薬をゴクンッと飲んでしまった。

 フィンレル!嫌だーフィンレル以外の人なんて嫌よ!

 フィンレル!!



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