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八十四話 帰りの馬車の中ですわ ②
しおりを挟む私はフィンレルの話に驚いて目を見開いた。
「ラバートリー卿はどんなことよりもベレッタが長年あの者たちに虐げられていたこと、自分がそれにずっと気付かなかったことが絶対許せない!と言っていた。
だからあの者たちをどんな手を使っても徹底的に調べ上げると言ったんだよ。
ラバートリー卿は自分の手の者を使って、そして今まで培ったあらゆる情報網を使ってコローラル子爵家を丸裸にしていったんだ。
そして私はラバートリー卿と密に連絡を取り合うようになって、平民では入り込めないところを少し手助けさせてもらった。
そしたらベレッタのことはもちろんのこと、子爵家のことあの男とあの女がずっと切れていなかったことや、娘が実の娘であることを掴んだんだ。
確固たる証拠付きでな。
だが、あの家は自分の娘のことにしても法に触れることは一切していなかった。
それにあの娘の夫の家、ラットビア伯爵家は真っ当でとても優秀な家でね。
子爵家が法に触れることをしていないのに、さすがにラバートリー卿や私でもすぐにあの家をどうこうすることは出来ない。
だけどこれからあちらが何かしてきたらこちらも黙ってはいないという姿勢を見せることは出来るからね。
だから今日のことはちょうど良かったよ」
フィンレルが微笑むけど、少しその水色の瞳が陰っていて裏があるような目をしていてドキッとした。
私はフィンレルにこんなところがあるんだと感心するくらい。
「そうだったのですか。
わたくしとても驚きましたわ」
「そうか、ラバートリー卿は私のことも最初は絶対許さないと思っていたようでね、私のことも調べ上げて私のことを注視していたようだけど、私がベレッタに対して変わったし私のことを見ていて信用してくれるようになったんだ。
本当に良かったよ、ラバートリー卿はベレッタの叔父殿というだねでなく敵に回したくない人だからな」
「そうですわよね…」
確かにあの叔父を私でも敵に回したくないわ。
今までを見ていて私もよくわかる!
「それでベレッタの評判を変える為の策はラバートリー卿と一緒いろいと練っているんだ。
事実と違う噂が出回っていたからな。
ラバートリー卿も私はそれが許せないないからな!
同じことをやり返してやるつもりだよ」
フィンレルがフフッと悪い笑みを浮かべる。
「えっ?そうですの?!」
「ああ、あの男とあの女にはずっと続いていたことと、あの娘が実の娘だったという過去のことしか今のところ落ち度はない。
あの娘が実の娘だったことは大きいことではあるが、それも今は養女にしているから実子なのに自分の子として扱っていなかった逆のことではないからね。
あの女も貴族だから平民のラバートリー卿を騙したということだけで、評判は悪くなってもそれほどダメージは与えられないだろう。
あの娘の夫の実家が息子の為に何としても守ろうとするかもしれないしな。
そこはこちらからは今は突っつかず静観することにしている。
だが、あの娘はいろいろとネタがあるんだ」
えっ?フローリアが?
私はフィンレルをジッと見つめる。
「あの娘は今日のことでもわかるように、あの小賢しい女の娘ながら愚かで頭が良くない。
アカデミー時代も今もあの見目と甘え上手なことを生かして、いろんな男にちょっかいをかけているんだ。
夫の目もあるから他の男と一夜を共にするようなことまではしていないが、いろんな貴族男性を振り回していろんな物を貢がせているんだ。
それでな、その男たちの妻や婚約者に反感を持たれて蛇蝎の如く嫌われているんだ」
「えええ?そうなのですか?」
私はまったく知らなかったわ。
アカデミー時代に男性から凄い人気だったのは知っていたけど。
「ああ、今までコソコソとやっていて貴族女性たちの評判は悪いが、それ以外は上手く立ち回っていてあの娘の美しさに周りが妬んでいるからだということで済んでいるがな…。
それでもちょっかいを出されている男の妻や婚約者は腹に据え兼ねているようだからな。
そこを上手く突っついていけばどうなるかな~」
フィンレルは今本当に悪どい笑みを浮かべているわ。
私はフィンレルのことを今まで生真面目で融通が利かなくて、優しいけど気弱な男だと思っていたけど、そんな認識を改めなくてはいけないかもしれないわ。
フィンレル彼も一人だけでも貴族たちとやり合える立派な貴族なのだわ。
「どうしたベレッタ?」
「いえ、フィンレル様も立派な貴族なのだと思ったのですわ」
「そうか、褒め言葉と受け取っておくよ」
フィンレルのその美しい顔でニッコリと微笑んだ。
それから確かにフローリアに関する噂が出回るようになったのよ。
昔から既婚者であろうが、婚約者がいようがお構いなしにちょっかいをかける悪女だという噂が。
それに付随して過去に義姉ベレッタに虐げられていたと噂されていたけど、本当は逆だったんじゃないかって噂も出回るようになっていったのよ。
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