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七十二話 新しい専属侍女その1
しおりを挟む私がアンジェリカ様に会って戻ってきたら、心配していたフィンレルが早速私を訪ねてきたわ。
「アンジェリカ様は美しくて聡明でお優しくて可愛らしくもあり、わたくしにも気を遣って下さる言葉では言い尽くせないくらい素敵な方でしたわ!」
私がテンション高くアンジェリカ様の魅力を捲し立てるように語ったものだから、フィンレルはビックリしてちょっと引いていたけど。
「‥そ、そうか、君が閣下とそんなに親しくなれて私も嬉しいよ…」
ええ、ええ、そうでしょう?私はとても有り難く嬉しいのよ。
私はその日に早速ランディスに会いに行ってこそっとアンジェリカ様のことを話したら。
「えええぇーっほんまにぃー?」
って大声で言ってから周りに人がいるのに気付いて、慌てて口に手を当ててたけど、ランディスも大喜びだった。
後で食材の入手方法とレシピを
書いた紙をもらうことになっているから、絶対食材をゲットしてランディスに作ってもらわないと!
もちろん私も出来ることはお手伝いするわよ!
それからもアンジェリカ様とは度々手紙のやりとりをするようになったの。
お互いに忙しくてそんなにすぐには会えなかったけど、これからのことを思うと不安より、ワクワク楽しみに思う日が過ぎていった。
そうそう、私の新しい専属侍女になる二人を紹介するわね。
一人目は掃除メイドのリーダーをしていたピアナで濃い灰色の髪をキッチリ団子にして、赤銅色の瞳をしていて前世で有名だったあの方のような口元にホクロがある見た目は出るとこは出て引っ込むとこは引っ込んでるセクシー美女なの。
彼女を観察していると、仕事はキッチリしているし、細かいところまでよく気の付く子なんだけど、いつも全身からトゲを出しているようにツンツンしていて、同僚たちにキツいことも言う子で誰か特定の子と仲良くすることもなくいつも一人で行動していることが多かったわ。
でも彼女の言っていることは正論で決して相手を貶したり虐げたり何かを押し付けたりなんてことはしないのだけど、いつもツンツンしていて顔もいつも厳しい顔をしているから、同僚に距離を置かれている子だったの。
だけど同僚からは怖いけど、自分が率先して動くし言うことは正論だからと、そんなに悪くは思われていない子だったわ。
彼女にはね、元々この領地の庭師をしていた父親がいるのだけど事故で片腕を失くしてしまって、庭師の仕事が出来なくなってしまって、荒れて酒浸りになって奥様に逃げられちゃったらしいの。
彼女はそんな父親を見捨てることなく、独身のまま自分が働いて父親に仕送りをしている子だった。
彼女は家庭環境からいつも一人で気を張っていて、そうならざるを得なかったみたいな感じなのよね。
だから私がおせっかいを発揮して彼女と護衛を四人連れて父親のドノバンのところへ乗り込んで、説教をかましてしまった。
「ドノバン!庭師の仕事が出来なくなって奥様にも逃げられて、現実から逃げたいのはわかるけど、いつまで逃げるつもりですの?
娘さんは貴方の生活を支える為に自分の楽しみや買いたいものも我慢して、一人で必死で働いているのですよ!
子供にそこまでさせて貴方は何朝からお酒飲んだくれているのですか!
仕事をしたいなら片腕がなくたってやれることはありますわ!
今すぐ来なさい!」
って彼女の父親をタウンハウスに連行したのよ。
それでドノバンに補助の男の子を二人付けて、庭の整備を命令した。
ドノバンは呆気に取られていたけど、侯爵夫人の私には逆らえないものね。
こういう時は地位があるのは良いことよね。
最初は渋々やってたわ。
でもドノバンは元々庭師の仕事に誇りを持っていたみたいで、そのうち一生懸命庭の整備や花を植えたり、補助に付けた男の子二人にいろいろと教えるようになっていった。
そしていつしか表情が変わってきたから、また私が会いに行ったら私を見てビビっていたけど。
「ドノバン貴方がこれからもやる気があるなら、補助の男の子イアンとジョンと共に雇ってあげます!」
「えっ?…あ、あの奥様…わ、ワシが断ったらこの子らはどうなりますか?」
ドノバンは私を伺うように見てくる。
「もちろんイアンとジョンは頑張り次第でドノバンと関係なく雇うつもりですよ。
彼らにも自分で考えて判断してやってもらわないとね」
「っ!そ、そんなイアンとジョンはまた幼いんですよ!
庭のことはまだやり始めたばっかりで、何の知識もないのです!自分で考えて判断してなんて無理です!」
「ここには他にも庭師もいてよ。
貴方がいなくてもね」
私がすんなりと言うとドノバンは肩をビクッとさせた。
「奥様お願いします!ドノバンおじさんと一緒に雇って下さい!働かせて下さい!
僕たちドノバンおじさんと一緒がいいです!ドノバンおじさんは最初はやる気がなかっけど…でも今は一生懸命で、僕たちにもいっぱいいろんなこといっぱい教えてくれるんです!」
「そうなんだっ…あっです奥様!
ぼ、僕たち庭師の仕事凄く楽しいんだ、です!もっとやりたい!
僕たちドノバンおじさんの手にも足になって、何でもどんなこともするからだからだからお願いします」
まだ七歳、八歳のイアンとジョンが私に土下座して頭を下げる。
「お、お前たち!……お、奥様どうかワシも雇って下さい!イアンとジョンと一緒に雇って下さい!
イアンとジョンには必ず役に立つように仕込みますんで、お願いします!もちろんワシも役に立つように精一杯頑張りますので」
「フフッ、ドノバンよく言ったわね。
よろしい!三人とも雇いましょう。
ですが、お金を貰うというのはその働きに対する対価なのです。
貰うお給金に見合う成果を出さなくてはならないのよ。
それには大人も子供も関係ないのよ。
だから働きがお給金に見合うものでなければ、即クビにするけれどよろしくて?
わたくしはこれからも貴方たちをちゃんと見ていますからね。
しっかりと働いてお給金に見合う成果を出してちょうだいね」
「は、はい!」
「奥様ありがとうございます!」
「奥様!ありがとう、です」
ドノバン、イアン、ジョンは良い返事をしてくれたわ。
そして私は三人を雇うことしたわ。
子供を巻き込んで使うなんて卑怯だと思われるかもしれないけど、イアンもジョンもずっと家族を助けたいと思っていた子たちだったから、結果的には良かったのじゃないかしら?
ドノバンのことが解決してから彼の娘のピアナを私の専属侍女に指名したの。
ピアナは凄く驚いていたけど、涙を流しながらドノバンのことをお礼を言ってくれて、リリアンナたちに付いて今一生懸命頑張ってくれてるわ。
平民だった彼女が侍女になることは大変かもしれないけど、彼女なら大丈夫だと思ってるわ。
あとリリアンナの次になる副侍女長も侍女の中から指名したしね。
それにリリアンナ、副侍女長の他にお義母様の専属侍女をしていた方二人は高齢で辞めたのだけど、使用人の教育係として週に二回来てもらうように、フィンレルが頼んでくれて来てくれるようになったのよ。
とても助かるわ。
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