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七十話 アンジェリカ様の過去 ②
しおりを挟む実はジークハルト様もアンジェリカ様が彼を好きになる前からアンジェリカ様のことが好きだったらしいの。
それをアンジェリカ様はだいぶ後になって知ったんだって。
ジークハルト様はアンジェリカ様の噂されていた評判とは違う、優しくて真っ直ぐでしっかりしていながら天然で可愛いところもある彼女自身を知ってどんどんと惹かれていったらしいの。←ジークハルト様談
言いながら初々しく顔を赤くして照れてるアンジェリカ様は本当に可愛いかったわ。
その顔を見てるだけでジークハルト様わかるわかると私は思ったのよ。
アンジェリカ様の方もジークハルト様の見た目通りの真面目で穏やかで優しくどんな話もにこやかに聞いてくれるだけでなく、策略を張り巡らせ外堀を埋めていく腹黒な面もあるジークハルト様を見て、アンジェリカ様の性癖に刺さりまくり、婚約者がいながらも好きになってしまったらしい。
だけどアンジェリカ様には王太子殿下という婚約者がいたし、アンジェリカ様はジークハルト様の気持ちにまったく気付いてなかったから、好きという感情に蓋をして、幼馴染という距離のままいよいよアカデミーに入学してゲームスタートとなったのだって。
そしていざゲームスタートであるアカデミー入学以降、王太子のギルバード様は早々にヒロインのエレナ様に籠絡されたらしいのよ。
それだけじゃなく他の攻略者やアカデミーに通う多くの貴族令息が婚約者の有無関係なく次々と籠絡されていった。
だからアンジェリカ様は以前から交流のあった側近候補の婚約者たちと協力して本格的に断罪回避に動くことにしたんだって。
アンジェリカ様はもしもの時の為に、ちゃんと側近候補の婚約者となる方を前もって見つけて幼い頃から交流を深めていたらしいの。
アンジェリカ様はシャルロット様とマナベル様に自分が転生者だとは明さなかったけど、幼い頃からの交流で信頼関係が出来ていたから、ゲームがスタートして自分の婚約者たちがヒロインのエレナ様に籠絡されていくのを見て、協力してくれるようになったんだって。
それでその断罪回避の協力者と共にあれこれと動いている最中に、アンジェリカ様がヒロインを観察していて彼女も転生者だということもすぐ気付いたらしいの。
ヒロインはどう見てもシナリオ通りの逆ハールートというのに動いていたし、アンジェリカ様曰く頭がお花畑であまり賢くないようだから、アカデミーでの発言など自分が転生者だと隠しているようで、結構ゲームの内容を独り言で漏らしていたそうで、簡単だったわとアンジェリカ様は笑った。
それでヒロインはゲーム通りに進めてくると確信したアンジェリカ様はジークハルト様や側近候補の婚約者たちと協力して、虐めや誘拐未遂の自分たちの冤罪の証拠をどんどん集めていった。
そしてその時にアンジェリカ様曰くいくら鈍い自分でも、ジークハルト様の気持ちに気付いたそう。
でもアカデミー在学中はお互いに告白したり気持ちは確かめ合ってはいなかったらしいけど、もう言葉に出さなくてお互いの気持ちに気付いていたんだって。
アンジェリカ様はそれまでは断罪回避をしたら、平民になって家を捨てて国外に行こうと思っていたらしいの。
婚約者だけでなく家族とも上手くいかないままだったから。
でもジークハルト様が自分と同じ気持ちなんだと知って、自分がずっとジークハルト様と一緒にいれる方法を模索するようになったんだって。
それが卒業パーティーで断罪返しをした上で、婚約者のギルバード様との婚約を白紙にして王太子も側近候補も廃嫡などせず、ギルバード様はヒロインと結婚、側近候補も婚約者と結婚することだった。
そしてアンジェリカ様のお父様とお兄様を排除して、国王陛下に恩を売る形で自分が国内初の女公爵となり、ジークハルト様と結婚することに計画を変更したのだそう。
でも最初は婚約をなしにするのは自分だけにしようと思ってその計画をシャルロット様とマナベル様に話して、シャルロット様とマナベル様には無理に婚約を継続する必要はない、今からでも他に良い人を探すのをアンジェリカ様も手伝うからと提案したのだけど、シャルロット様とマナベル様はそれでも側近候補たちと結婚することを選んだって。
マナベル様は婚約者の裏切りにショックを受けて嘆き悲しんだそうよ。
でもマナベル様は家の為に自分の為に自分の冤罪を証明して、婚約者であるエンディナー様に対して断罪返しをすることにしたのだけど。
でもエンディナー様を断罪返しする決心をしたけど、彼女はその直前まで悩んでいたくらいだったらしいの。
マナベル様はエンディナー様に
裏切られていても、それでもエンディナー様を嫌いにはなれずずっと好きなままだったらしいの。
凄いよね、エンディナー様にそれくらい良いところがあるのかもしれないけど、一度裏切られたらなかなかそんなに一途に思い続けるのは難しいと思うわ。
私は無理だと思う。
アンジェリカ様曰くマナベル様は意地っ張りらしく今だにエンディナー様を愛し続けていることを認めていないらしいけど。
一方シャルロット様の方は愛らしい癒し系の見た目に反して、結構ドライな性格らしく、昔から恋や愛よりも実家の領地や領民を守ること、領地をもっと繁栄させることに一生懸命な人のようなの。
シャルロット様の実家のチェンジット伯爵領は王都の近くにありながら、海に面していて今やこの国の貿易の要となる貿易港を持つ力のある家だ。
しかしその歴史はまだ浅く長年違う海に面した領地が第一貿易港として栄えていて、チェンジット伯爵領は第二貿易港に甘んじてきた。
それに昔から第一貿易港を持つ領地の侯爵家から事あるごとに邪魔や嫌がらせをされてきた。
でもそちらの家の方が力があって長年泣き寝入りするしかない状態だったそうなの。
だけど十三年前にその侯爵が国内で違法とされている植物を秘密裏に密輸して国内で売り捌いていたことが表沙汰になり、侯爵家の人間たちは爵位を取り上げられてお家取り潰しとなり、それ以降その第一貿易港は王国直轄となったのだそう。
シャルロット様の実家の伯爵家は邪魔や嫌がらせにも屈せず貿易港を守ってきたが、今後一層の繁栄の為に今までお座なりだった海上や港周辺を警備する法を改正したいとずっと思っており、家が力を持ちもっと国政に深く関われるようになることがずっと一族の悲願だったらしいの。
それは家族だけじゃなくシャルロット様の悲願でもあり、そのこともあり宰相子息だったナイゲル様との婚約はシャルロット様のお父様が持ってきた話だったが、シャルロット様は家の為に進んでその話を受けたらしい。
あの卒業パーティーの断罪事件があり、ナイゲル様のお父様は宰相を退任することになったが、それでもシャルロット様はそのままナイゲル様と結婚して、アンジェリカ様、マナベル様と共に実家が国政の中枢を担うようになることを望んだそうなの。
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