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六十七話 敵陣?に出撃ですわよ ③
しおりを挟む「なるほど、わたくしの旦那様やマナベルの旦那様だけじゃなくサウスカールトン侯爵閣下も目が覚めていたのですね…」
ここでアンジェリカ様以外のシャルロット様が初めて染み染みと発言した。
「そうでごさいます。
今では息子ラファエルも生まれて、主人は家のこと、ラファエル、わたくしのことをまず考えてくれていますわ」
私は夫婦円満をアピールするようにあえて私も入れて発言した。
「わかりますわ、私の旦那様のエンディナーもアカデミー卒業後すぐに目が覚めたようですけれど、娘が生まれてからは顕著になりましたからね」
マナベル様が話すとシャルロット様もうんとひとつ頷いた。
そうなんだ、他の元側近候補の人たちがアカデミー卒業後妃殿下に近寄らなくなったとは、噂で聞いていたけど子供が生まれたらより責任感が生まれたということかしら?
「だいたいサウスカールトン侯爵夫人が仰りたいことがわかってきましたが、でわたくしたちにお話をされた真意は?」
アンジェリカ様はニッコリと微笑んで私を挑戦的な目で見てきた。
微笑んでいるのに威厳と迫力があり、私の胸がドクンッとなるけどここで尻込みしてはいけないわ!
「はい、こんなことを言うのは何なのですが、妃殿下がどういう方なのか周りに聞きましたの。
お恥ずかしながら我がサウスカールトン侯爵家は領地など持ち直してきたとはいえ、まだ評判はよろしくないことは存じております。
ですが、後継となる息子が生まれました。
わたくしは息子が後を継ぐ時に何の憂いもなくしたいと思っているのですわ。
ですので、また評判を落とすようなことは何が何でも避けたいと思っておりますの。
わたくしは息子の為ならどんなことでもするつもりでございます!
例え火の中水の中の精神でございます。
なので皆様とは初対面で大変烏滸がましいとは存じますが、どうかお力添えを頂けないでしょうか?」
私は願いを込めてアンジェリカ様始めみなさんをそれぞれ一人ずつ見つめていく。
「アンジェリカ様わたくしからもお願い申し上げますわ。
わたくしも子を持つ母でございます。
ベレッタ様がお子様の為、そして家の為にわたくしに教えを乞いどんなに厳しくとも耐えて教育を受けてこられた姿を間近で見て参りました。
ベレッタ様の並々ならぬ決心と努力、彼女の真っ正直さにわたくしは心を打たれたのでございます。
どうかよしなに」
メリアンナ様が頭を下げてくれた。
「メリアンナ様…」
私はメリアンナ様を見て目が潤んでくるけれど、ここで涙など流してはいけないと奥歯を噛んで堪える。
「そうねぇ~サウスカールトン侯爵夫人は何も悪くないものね。
貴方様もある意味被害者ですわ。
妃殿下のことはわたくしたちの方がよく存じ上げておりますもの、ねぇ~」
アンジェリカ様がメリアンナ様以外の夫人に目をやる。
「ええ、何をなさるか読めないですものね~」
「ずっとお変わりにならず無邪気で可愛らしくていらっしゃるからね~」
シャルロット様が妃殿下のことを言った後、マナベル様が嫌味を言ったわ。
そうなのよね~あの手紙でもフィンレルやアランの話を聞いても、無邪気と言えば聞こえはいいけど、いつまでも成長していない自分をずっと物語のヒロインだと思い込んでいる頭お花畑さんだもの。
場を読まず公の場でも自分が思っていることをそのまま言いそうで怖いのよ。
おまけにフィンレルと私はエレナ様より身分が下だから、下手に相手の話を遮ったり出来ない立場だから、とんでもないことを言われても止めることが出来ないのよね~。
「承知しましたわ。
わたくしは何とかお力添えさせて頂きたいと思っておりますわ。
皆様よろしくて?」
「ええもちろんですわ」
「サウスカールトン侯爵夫人はわたくしたちの同志のようなものですもの、承知しましたわ」
アンジェリカ様の後、シャルロット様マナベル様も了承してくれた。
良かった!本当に良かった!
「皆様突然のお願いにも関わらず快い返事を下さいまして、心より感謝申し上げます」
私は頭を下げながらお礼を言った。
それから来月の夜会に向けてみなさんと作戦会議をしたのだった。
その時にアンジェリカ様始めみなさんに私ももう同志だからと、名前呼びを許してもらった。
それから一時間程話をしたのだけど、みんな聡明で話題も豊富それでいて肩肘張らない話し方をしてくれるようになったので、和やかに楽しい時間が過ぎていった。
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