怒れるおせっかい奥様

asamurasaki

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六十六話 敵陣?に突撃ですわよ ②

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 私の左側の隣のエスフィテバン侯爵夫人のシャルロット様は白に近いブロンドの長い髪を後で緩くまとめていて、光の加減かシルバーにも見えるライトグレーの瞳を縁取る目は円な可愛らしい一見癒し系の美女だ。

 メリアンナ様の右隣のプラグリジェン伯爵夫人のマナベル様は長い暗めのブロンドの髪を後で高くひとつに結んで、オレンジに近い薄めの赤の瞳を縁取る目はアーモンド形で大きく、旦那様もご実家も騎士の一家なのがわかるようなキリッとした活発そうな美女だ。

 アンジェリカ様の紹介が終わる頃に、みなさんの斜め前それぞれにひとつずつ銀の段になっているまさにアフタヌーンティーの時の食器が置かれていく。

 えっ?私この食器この世界では見たことないわよ!

 うちにはないだけかしら?もしかして前世を思い出してから最初にアンジェリカ様たちの噂を思い出した時、アンジェリカ様も転生者かな?と思ったのだけど、当たっている?

 私は動揺を見せないように装っていたけれど、正面から視線を感じてゆっくりを心がけて顔を上げると、アンジェリカ様は私を見つめて微笑んでいるの。

 それが何だか意味ありげに見えて私の予想は当たっているような気がしてきたわ。

 でも私早まるではないよ!まだ判断するには早計だし、まだこれだけだもの。

「さあ召し上がれ」

 アンジェリカ様がみなさんに声をかけられてから、みなさんはトングを使い上品に、ひとつ取って自分の目の前のお皿に乗せて食べ始める。

 私もみなさんと同じようにする。

「本日はメリアンナ様からサウスカールトン侯爵夫人がわたくし主催のお茶会に、出席なさりたいと仰っているとお聞きしたので、理由をお聞きしていいかしら?」

 おっと!アンジェリカ様が前置きもなくいきなりストレートに聞いてこられたわ。

 通常は手紙の時候の挨拶的なお話から始まると教えてもらってあたのだけど、これは私試されてるのかな?

 メリアンナ様始め他の方も私を見て注目している!

 これは間違えられないわ!私どうする?

「レノバングリー公爵閣下、正直に申し上げますわ。

 実はメリアンナ様にお会いする数日前に王太子妃殿下からわたくしの主人のフィンレル宛に手紙が届きましたの」

 私は正面突破を選択した。

 私が話してから周りの様子を伺うと、みんなが目を見開いている。

 当然よね、いきなりそんなことを言われたら誰でもビックリするわ。

 でも私は周りくどいことは苦手なの。

 だから理由を聞かれたからストレートに答えたのよ。

「まあ、王太子妃殿下が?」

 アンジェリカ様が更に私の話を促すように微笑む。

「はい、主人から訳がわからないからと手紙を見せられて、わたくし読ませて頂きましたの」

「サウスカールトン侯爵閣下が訳がわからないから夫人に読んでみてくれと仰ったの?」

 アンジェリカ様が興味を持ったようで聞いてこられた。

「そうでございます。

 主人は王太子妃殿下とはアカデミー卒業後会ったのは夜会の場など公式の場での挨拶だけで、当然手紙のやりとりなども一度もなかったので、突然の手紙とその内容にかなり戸惑っていましたの」

 私がそのままを話すとアンジェリカ様だけでなく、ここにいるみんなが「まあ~」と声を出した。

「そうですの、あの支障がなければ手紙の内容を掻い摘んででも結構なので教えて頂いても?」

 アンジェリカ様が聞いてくる。

「はい、言い辛いのでごさいますが正直に申し上げます。

 まだ正式に発表はされておりませんが、王太子殿下が側妃を娶られることが決定した件についてでごさいまして…そのことを知った妃殿下が信じられない何故なんだと。

 そして主人と…その、殿下の側近候補だった皆様はまだ自分のことを少なからず慕っているだろうから主人に何とかして欲しい助けて欲しいという内容でごさいました」

 私は一気に話して周りに目をやる。

 さすがはみんな高位貴族夫人だわ、ちょっと見ただけでは表情はまったく変わらないけれど、少しだけ目の下辺りがピクピクッと動いていたりする。

「王太子妃殿下がねぇ~。

 そのことにサウスカールトン侯爵閣下は困惑しておられるとそういうことなのですね?」

 先程からずっと場を仕切っているアンジェリカ様が更に私に聞いてきた。

「そうでございます。

 主人がわたくしに話してくれましたが、確かにアカデミー在学中は妃殿下を慕っていると思っていたが、卒業後あれは彼女の無邪気で屈託のない笑顔に自分は恵まれているにも関わらず、彼女が自分とは違い自由に生きているように見え、それが羨ましく憧れのようなものであっただけなのだと気付いたそうなのです。

 そして今は目が覚めて彼女に対して一切の気持ちは残っていないと申しておりました」

「そうなのですね~。

 確かにサウスカールトン侯爵閣下はアカデミー在学中と卒業後では、妃殿下に対する態度は変わっておりましたね…。

 それは妃殿下が王太子殿下と婚約、結婚されたからと思っておりましたが違っておりましたのね」

 アンジェリカ様が昔を思い出しているのか、私から少し視線を外して遠くを見るような目をした。



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