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五十七話 家庭教師様と叔母様 ①
しおりを挟むみんなで王都に到着してから落ち着くまでバタバタしていたけど、使用人たちはみんな本当に優秀よ。
先に到着していた使用人がちゃんと準備をしていたくれたから、私たちが到着して一週間もすれば落ち着いてきて、今までの領地での日々と変わらない生活になった。
それでラファエルの乳母のジェシカ一家なのたけど、王都では一緒に邸に住むことになったのよ。
サウスカールトン家の王都での邸周辺事情もあって、近くに手頃な物件がなかったこともあるの。
サウスカールトンの王都のタウンハウスは中心地にあって、高位貴族の邸がズラッと並ぶ一画にあるのよ。
前世でいうハリウッド俳優とかセレブが多く住んでいるあの超高級住宅街って感じで、そこで家族四人が住んで二人くらいの通いのメイドがいてって程度の良い家を探すのは難ししくて、ジェシカもご主人のショーン様もタウンハウスで一緒に暮らして問題ないって言ってくれたから。
私はジェシカも一緒に住んでくれる方が何かと助かって有り難いから大歓迎だったわよ。
ジェシカの三歳の娘カレンちゃん、九ヶ月になる息子のケインくんもめちゃ可愛くて、ラファエルと戯れて遊んでいるのを見てるだけで癒されて疲れなんて吹っ飛んでしまうもの。
ジェシカのお子様たちもそうだけど、ラファエルも場所が変わったけど、すぐ馴染んでくれたから良かったと思ったわ。
それでこちらにやってきて一週間経って、いよいよ私の家庭教師の先生を紹介してもらう日がやってきた。
叔父と叔母も一緒に来てくれることになっているの。
今日は顔を合わせるだけなのよ。
でも家庭教師になってくれるカエンシュルト伯爵夫人がどんな方なのか、すぐ馴染めるのか?仲良くなれるのか?
叔母のウテナ様にも初めて会うからどんな方か気になるところ。
叔父がとても良い人だから大丈夫だとは思うけれど、女同士というのはまた違うと思うのよね。
だから私とても緊張しているの。
二度目に叔父を領地で迎えた時と同じように、フィンレル、私と使用人たちでお出迎えする為に門の前で立っている。
普通は爵位が上の者が下の者を自邸で向かえる時、当主本人や夫人が門まで出迎えることは、夜会や舞踏会を主催してホストとなっている時以外、あまりないことなんだって。
でもフィンレルも私もちゃんとお出迎えしたいと思ったから門の前で待っているの。
しばらくすると前方のもうひとつの門から馬車が二台入ってきた。
一台は見覚えのある叔父の馬車ともうひとつ一際豪華な作りの馬車。
叔父の馬車も十分貴族並に凄い馬車なのよ。
叔父が仕事で長距離を馬車で移動することもあるから、良い馬車を用意しているらしいの。
でもさすが歴史ある名家と言われているカエンシュルト伯爵夫人の乗っている馬車は、しっかりと磨かれて光っている黒塗りの車体の横には金の紋章がデカデカとあり、豪華で迫力を感じる。
サウスカールトン家の馬車もさすがは侯爵家というもので同じくらいだけど、サウスカールトン家は髪、瞳の色が青だから車体が藍色なのよね。
また黒になると違う印象を受けるんだと思った。
その迫力ある黒の馬車から一人の女性がエスコートされながら下りてきた。
薄い茶色ミルクティーブロンドというのかな?そのフワフワと揺れる長い髪に、薄めの翠眼の大きな瞳、透き通るような白い肌に華奢な体型。
馬車から下り立ったカエンシュルト伯爵夫人はアカデミー時代にカエンシュルト伯爵令息に見初められたと叔父に聞いたけど、そりゃ見初められる!惚れられるよ!っていうくらいのとびっきりの美少女だった。
二十代の女性に美少女というのは失礼かもだけの、美女というより美少女という表現がピッタリとくる容姿なのよ。
でも可憐で愛らしい見た目ながらスクッと姿勢良く立っている姿からは威厳を感じた。
ただの愛らしい美少女ではない。
もうひとつの馬車からは叔父が先に下りて、叔母らしい女性が叔父にエスコートされて下りてきた。
暗めのブロンドの長い髪を緩く結んで右前に垂らして、叔父や私の琥珀色の瞳より明るいオレンジの瞳の大きいけど猫みたいに少し吊り上がった目で、これまたカエンシュルト伯爵夫人と同じくらい美しい白い肌のスタイルの良い美人、それが叔父の奥様のウテナ様だ。
カエンシュルト伯爵夫人と叔母が馬車から下りてきただけで、場が華やぐくらいに美しく圧倒的な存在感で、私はふわぁ~と心の中で歓声を上げた。
この世界美男美女だらけ!
うちでは私は埋もれてしまうような地味な見た目だけど、フィンレル始めアランもリリアンナ、ケイト、ジェシカなど美男美女があちこちにいる。
他の使用人もみな揃って私から見て平均以上だけど、先程の二人は格別に美しいの。
フィンレルだけは別格でこの中でも一番美しいのだけれどね。
彼はやはりゲームの世界の攻略者って立場だったのかしら?
「よくぞ来てくれた、カエンシュルト伯爵夫人、ラバートリー卿、夫人」
フィンレルの言葉で私はハッと現実に戻った。
「サウスカールトン侯爵閣下、この度はお招きに預かり有り難く存じますわ。
先の夜会ではご挨拶をさせて頂いたのみでごさまいましたが、お久しゅうごさいます。
遅れてしまいましたがお子様のご誕生お祝い申し上げます」
カエンシュルト伯爵夫人がカーテシーをしてからフィンレルの挨拶に答えた。
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