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五十四話 なるほど〜そうなの〜
しおりを挟む二月にフレオが執事長に三月の初めにリリアンナが侍女長になってくれてから忙しいながらも順調な日々だ。
リリアンナとは家政のことで廊下などでよく簡単な打ち合わせをするようになったの。
私がにこやかにリリアンナと話していると、何故かよく料理長のランディスがチラッチラッとこちらの様子を伺うように見てくるのよ。
何だろう?私に用事?と思って後でランディスのところへ行ってみると。
「わたくしに何か用があるの?」
と聞いたら。
「い、いや!用事はないねん…」
ランディスが目を泳がせて挙動不審になっている。
ていうか、今後にケイトがいるんだけど、ランディス関西弁になっているよ。
「わたくしに用事がないのにどうして廊下をウロウロしていたの?」
ランディスが後にケイトがいることに気付いてハッとしている。
「えっと…それは…厨房にいたら何ていうか…いろいと煮詰まるというかですね…それで雰囲気を変えたくて、ちょっと出てきてる訳であります!」
「でもランディスが廊下にいる時ってわたくしがリリアンナと打ち合わせしている時が多くなくて?」
私が大きいゴリマッチョのランディスを見上げながら聞くと。
「うえっ?!…そ、そんなことは…気のせいではないでしょうか?ハハハッ」
ランディスがわかりやすく狼狽えて頭をガシガシと掻く。
「あれ?リリアンナ?」
私がリリアンナの名をもう一度出すと。
「ギョッ!い、いやそんなことそんな訳ないやないですか~」
ギョッ!って(笑)前世の言葉だし、前世でももう口に出して言う人いなんじゃない?
明らかに挙動不審なランディスを見て、ハハァ~ンランディスが好きなのはリリアンナなのか~そうかそうか。
「ふぅ~んそうなのねぇ~」
私が意味ありげにニヤリとすると、ランディスはハッとして目と口を開けて私を見てくる。
これ、私に気付かれたとわかったみたいね。
「あっ!…いや、…うっ…」
ランディスしどろもどろじゃない。
でもこれ以上責めるのは可哀想だし、良くないことだと思い私は仕事へと戻って行った。
ランディスがリリアンナをねぇ~。
確かにリリアンナはとても美人だし、優秀で実は優しい人で使用人たちからの信頼も厚いのよ。
元侍女長が自分の気に入らない人間を冷遇したり、キツく当たっていたりしていた時に、リリアンナがさり気なくフォローしたり庇っていたらしいの。
だからリリアンナが侍女長になってからは、使用人たちが働きやすくなりましたって言ってくれるようになったのよね。
うん!本当にリリアンナを侍女長にしようとした私グッジョブよ!
なんて自画自賛してみたわ、私。
リリアンナとランディスってリリアンナの方がかなり年上じゃないかしら?
でも年齢なんて関係ないわよね。
今度ランディスとはゆっくり二人きりで話してみようかな。
うん!なんかランディスとリリアンナ良いんじゃない?
リリアンナを落とすのはかなり難しそうだけど、あのランディスならもしかしたら出来るかも。
恋バナ恋バナよ!私だって女だから恋バナ大好きよ!
それからフィンレルと私のことなんだけど、彼が元気になってから朝食だけでなく時間が合えば夕食も一緒に食べるようになった。
それはフィンレルの希望なんだけど、私も今は彼のことムカつくとか嫌だとか思ってないしね。
それにフィンレルの体調もちゃんと見ておかないといけないし。
まあ私もだけどフィンレルにも無理をさせないように、しっかりと休んでもらうようにしている。
フィンレルもちゃんと休息を取った方が効率が上がると気付いたみたいで、休憩したり夜もちゃんと寝るようになったみたいなのよ。
でも私たちは他は何も変わってないわよ、寝室も別だしね。
いくらフィンレルの印象が変わったと言ってもね…どうこうって気にはならないわ。
別に好きではないしね、フィンレルは確かに誰もが見惚れる程の美形なんだろうけど、私はその美形に見つめられてもドキッとしないんだよね~。
ラファエルに見つめられるとドキドキワクワクするけどね。
だから今のままでもいいんじゃないかと私は思ってるのよ。
だって後継のラファエルがもういるしね。
同志のように仲良く協力していければいいんじゃないかな。
なんて私はその時奥底に芽生え始めた気持ちに気付いていながら、それを見ない振りをした。
そうそう、今もう三月だから来月には王都に向かわないと、いくら頑張っても七月の社交界シーズンには間に合いそうにないわ。
四月からでも三ヶ月しかないから間に合うか不安が残るけど、やるしかないのだけど。
でもフィンレルが過労で倒れて私も少し体調を崩したこともあって、本当に三ヶ月私が王都にいていいのか心配になってきたのよね。
叔母様の親友の方に家庭教師をしてもらうのを諦めて、領地で誰か雇って家庭教師をしてもらうことも考えた方がいいかも?と私は思ってきている。
それで今日今から王都で雇う使用人のことについて話があるとフィンレルから先触れが届いて、これからフィンレルの執務室に向かうところなのよ。
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