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四十二話 ラファエルとお出かけデートよ ④
しおりを挟むここは邸から近く街や領民の生活圏から離れているところだから、あまり人が寄り付かないからとフレオがここを選んで連れてきてくれている。
それにこの丘は一方向からしか行き来出来ないから、その方向を護衛が警護してくれているのに、どうしてケイトは茂みの方向を警戒しているの?獣でも出てくるのかな?
何が起こっているの?
私はどんどんと緊張が高まってきて、怖くなってきて足が震えてくるのを何とか叱咤して、ラファエルを抱きしめ直す。
私の緊張が伝わってラファエルが泣き出すかと思ったけど、ラファエルは今のところ大人しくしてくれている。
私はラファエルをさらにキュッと抱きしめて引き寄せる。
「…ケイト?」
「奥様大丈夫でごさいます。
奥様とラファエル様を絶対守りますから、そこから動かずジッと、していて下さい」
「わ、わかったわ」
ケイトの冷静な声と絶対守りますという言葉に、少し安心出来てほぉ~と息を吐く。
「っ!…」
その時に茂みからガサガサという音が大きくなり、枝がベキベキッと折れる音が聞こえてきて私は声も出せず、その場に突っ立っている。
ラファエルラファエルだけは守らないと!
「大丈夫!大丈夫よラファ…」
怖くて震えているけど、ラファエルの為よ!と私は自分にも言い聞かせるようにラファエルの背中を撫でながら声をかける。
より一層ガサガサという音と枝が折れる音が大きくなったと思ったら、中が人が出てきた!
「ヒッ!…」
悲鳴が漏れる。
薄汚れた服の柄の悪そうな男二人が手に剣を持って現れた。
「フレオ様、わたくしは剣術、体術の心得があります。
飛び道具を持たない破落戸二人くらいなら何ともありません。
どうか奥様とラファエル様の側を離れないで下さいませ」
「わかった」
ケイトとフレオが私たちにしか聞こえない音量でやりとりしている。
「へぇ~豪華な馬車が止まってたけど、お上品な女がいるぜ!
もしかしてここの領主の女かなぁ?」
「ああ、騎士二人が走ってきたけど、騎士二人くらいならアイツらで倒せるだろうよ、腕利きがいるからな。
すぐに茂みに隠れた俺たち賢いよな~お上品な女と若い女、おっさんだけなんて運が良いよな~俺たち」
男二人が下衆い笑みを浮かべながら私の方を見てくる。
護衛に見つからないように茂みに隠れて、その中からこっちに来たって訳ね。
何なの?コイツら!馬車にはサウスカールトン家の紋章がある。
それを知らないってことはここの領民じゃないってこと?
どこからこんな破落戸が入ってきたんだろ?
「良いドレス着てるな~金目の物持ってそうじゃねえか!」
破落戸の一人が私の方を見ながら近寄ってくる。
その時、ケイトが破落戸たちに向かっていき、フレオが私たちを庇うように前に立つ。
「ケイト!フレオ!」
「奥様落ち着いて下さい。
ケイトに任せましょう、大丈夫です。
私も死んでも奥様とラファエル様をお守りします!」
フレオが前を向いたまま私に声をかける。
「ありがとう、でもフレオ駄目よそんなこと言っちゃあ!
死んだら駄目なのよ!貴方はこれからもちゃんと生きて幸せにならないといけない人なの!」
私は恐怖で喉がカラカラだけど、自分の思いをフレオに叫んだ。
「…っ!そうですね!さすがは奥様です!
私はちゃんと生きてこれからも奥様とラファエル様の為にお仕えしますよ」
「そ、そうよ!そうなんだから!」
私はフレオのシャツの裾をを握り締めながら凄く怖いけど、叫んでいた。
で、どうなったかと言うと護衛二人が戻ってくる前にケイトが破落戸二人をあっという間に簡単に倒してしまった。
破落戸は今気絶して転がっている。
凄かったわ、本当に一瞬のことで私もフレオも呆気に取られてポカンとしたもの。
ラファエルも私もフレオもケイトもみんな傷ひとつなく無事だった。
でも私は安心してヘナヘナと力が抜けてその場に座り込んでしまったわ。
あの時大きな物音がしたのは、ここに来た二人の男以外の仲間の五人が私たちが逃げられないようにか馬車を壊した音だった。
馬車を引っ張る馬も護衛の馬も破落戸たちは下手に手を出さなかったみたいで、馬車の馬は逃げて無事だったようだし、護衛の馬も興奮しているみたいだったけど、木に括り付けられたまま大人しくしていたようでそちらの馬も無事でそれも良かったわ。
その後、護衛一人がすぐに邸に戻り知らせたようで、しばらくすると護衛たちと一緒にフィンレルが馬に乗ってやってきた。
「ベレッタ!ラファエル!大丈夫か!」
髪も服も少し乱れていて、焦ってすぐに来てくれたようだった。
フィンレルの顔を見たら安心して私涙が出てきたわ。
つか、フィンレル私のこと初めて名前で呼んだわね。
「ごめんなさい、心配かけてごめんなさい」
私は泣きながら謝る。
「旦那様、悪いのはすべて私でございます。
私が奥様をここに案内したのです。
どうか私だけを処分して下さい!お願い致します!」
「フレオ…貴方は何も悪くないわ。
わたくしがラファエルとお出かけしたいと言ったからなのよ。
ねぇ旦那様フレオは何も悪くないの!悪いのわたくしなの!」
フレオが私を庇って自分がすべて悪いとフィンレルに訴えたのを、私はそうじゃないと必死にフィンレルに訴える。
「…誰も悪くないし処分なんてしない。
君とラファエルが出かけることを許したのは私だ。
それにフレオ、ケイト君たちがベレッタとラファエルを守ってくれたことをちゃんと聞いている。
礼を言う、君たちにも怪我がなくて本当に良かった。
すぐに代わりの馬車が来るからとにかく邸に戻ろう」
フィンレルの言葉に私はさらに涙が出てきた。
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