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三十六話 旦那様に了解を取り付けるのよ ⑤
しおりを挟む私はホホホッと笑って誤魔化すけど、さっきの言葉遣いはマズい!謝らないと!でも言った内容については謝らないわよ。
フィンレルが驚いて目を丸くして口をポカンと開け固まっている。
後ろのアランもまた同じ表情をして固まっているわ。
「旦那様、わたくし口汚ない言葉になってしまったこと謝罪致します、申し訳ございません。
ですが申し上げたことについては謝罪は致しませんわ」
しばらく固まっていたフィンレルが。
「…いや、まったく君の言う通りだし、…謝る必要などない。
私はずっと子供の頃から誰かに甘えたままで変わっていなかったんだな…。
そうだな、…私が切り替えて前を向かないと領民も使用人もそれからラファエルも君もみんなが困ることになるんだよな…。
君に言われて目が覚めたよ!最初から諦めずにこれから私の出来ることを何でもやってみる!
こんなに叱ってくれる人今までいなかった…ありがとう」
そう言ってフィンレルが嬉しそうにお礼を言ってふんわりと微笑んだ。
えっ?私ガッツンガッツン怒って口悪く罵ったのよ?何で笑うの?おかしくなった?それとも変態?
「んっんんん、…わかって下さればそれでいいのですわ…。
それではリリアンナのことはわたくしが説得してみますわ。
どうなるかはわかりませんけれど…ですから侍女長の件も待って頂けますかしら?」
私は咳払いをしてさっきのことがなかったかのように取り繕った。
「ああ、よろしく頼むよ。
家のことは大丈夫だから安心してくれ」
フィンレルが私を見ながら何故かキラッキラッしながら美しく微笑んでるいる。
あれ?ヤバい?おかしくなったの?
何嬉しそうにしてるのよ!予想もしていない反応に私が焦ってしまうじゃない!
あー私も切り替えないと!まだまだフィンレルに了解を取り付けないといけないことがあるんだから。
「えっとですね、それからわたくしの専属侍女のことなのですけれど、ケイトがこのままわたくしの専属侍女を続けたいと言ってくれまして、正式に雇用という形にして頂きたいのですけれど?」
私はフィンレルに戸惑いながらも何とか用件を話す。
「そうか何の問題もないよ!了解した!もう正式な雇用状態になっているから手続きなど変わらないからこのままだな。
でも専属が一人だけでは君が不便かもしれないし、ケイト嬢も大変だろうからあと二人くらい君の専属を増やしたらどうかと思うんだか?」
「ええ、そうですわね。
それも考えておりまして、新たに雇うのではなく今いる使用人の中から選ばうと思ってますの。
ですが、まずは優先しなくてはならない執事長と侍女長が決まってからでもわたくしは大丈夫ですわ。
なるべく自分で出来ることはしてあまりケイトに負担をかけないようにしようと思っていますが、ケイト大丈夫かしら?」
私がケイトの方を振り返ると。
「奥様はご自分のことを進んでされるお方なので、何も負担になっておりませんので大丈夫でございます」
ケイトは表情を変えずに淡々と答えた。
「…そうか、なら君の専属についてもしばらくはこのままということにしよう」
フィンレルが納得というふうに頷いた。
「それからもうひとつございまして、わたくしに家庭教師を付けて頂きたいのですわ」
そうなのよ!叔父の奥様の親友さんに家庭教師になってもらって、私はラファエルと王都に行きたいのよ。
「家庭教師?」
フィンレルがキョトンとして首を傾げる。
「ええ、わたくしの家庭教師ですわ。
家の恥となりますけれど、わたくし実は…実のお母様が亡くなってから貴族令嬢としての教育を大して受けることが出来なかったのです。
アカデミーで淑女教育がありましたけれど、それでも侯爵夫人としては不十分だと思っておりますの。
ですから今のままでは表に出ますと恥をかいてしまいますわ。
今後のサウスカールトン侯爵家の為にも次の社交シーズンまでに教育のし直しをしたいのです!」
ビシッて感じて言い切ったわ私!
「ああ、…確か君は家族に虐げられていたんだってな…。
君との結婚を決める時にアランが調べてくれたんだ。
その時忙しかったこともあるがそんなに人員も使えなかったこともあり、以前勤めていた数人のメイドからの証言だけに留まってしまい、確固とした証拠を掴めぬままで対処が出来なかったんだ、申し訳ない。
だから君が実家にいるよりは評判が悪くともこちらに来た方が君にとってらいいんではないか?と思い結婚を決めたんだ。
そうか…教育さえも受けさせてもらえてなかったということなんだな…わかった!家庭教師を雇って来てもらおう!」
えっ?フィンレルはベレッタが実家で虐げられていたことを、調べて知っていたの?
それを知ってベレッタの為に結婚を決めたと言うの?
ちょっと!本当に?!でもそう言っているから間違いないわよね?
私はフィンレルから聞かされたことに驚いて言葉を失くした。
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