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三十三話 旦那様に了解を取り付けるのよ ②
しおりを挟むランディスがこの世界の食事情にずっと不満を持っていたってすごくわかる!
この世界の料理味は悪くはないの、味が濃いとか薄いのはあるけど。
でも前世日本で生きてきた人間にはレパートリーが圧倒的に少ないと思ってしまうのよね。
ステーキなどのメインの味付けは結構濃いの。
だけど、逆に野菜や豆を茹でたものなどは塩や胡椒のみで凝った味付けではなく薄味だったりするし、卵もオムレツはあるけど、茹でたり焼いたりでこれまた塩胡椒だけの単純な味付けだったりする。
実家やアカデミーの食堂、寮ではスープはたぶん全部ブイヨンベースだったけど、こちらではクリーム系スープもあるのよ。
美味しいのは肉や野菜素材そのものが良いものだからっていうのも大きいと思う。
単純な野菜サラダが野菜そのものの味が良くて凄く美味しいから。
パンもシンプルだけどとても美味しいわよ、固くもないしね。
ランディスに聞いたけどベースやソースとかに必要な調味料が前世に比べて圧倒的に少ないのだそう。
当然出汁も、味噌、醤油もないから和食もないのよね。
お米もないから白米大好きな私は玉子かけごはんやお茶漬けが前世を思い出してから、無性に食べたくなっている。
ランディスは自分の為に料理人になったようだけど、頑張って修行したようでいろいろと工夫してくれてるから、他と比べてこの家の料理のレパートリーはかなりある方だと思う。
こちらに嫁いできて、食事情に関しては実家との違いに驚いたもの。
子爵家と侯爵家の違いかと思ったけど、ランディスがいたからなのよね。
ところでランディスが料理長になったのが、三年前義両親が亡くなられた時くらいに、当時の料理長他三人が高齢を理由に辞めて、残った料理人の中で一番年上だったランディスが自動的に料理長になったらしいの。
ランディスは料理長になってから前世の食事を再現したくていろいろと試したり、食材を探したりしたかったらしいのだけど、ランディスは元々前世で料理をしていた人ではないから、味噌や醤油が大豆から出来ていることくらいしかわからず、そんなに大したこと出来てなかったって言ってたわ。
それとランディスが料理長になった時は、一気に四人も辞めたこともあって、余裕がなくて食材探しなんてする暇はなく手に入れられるものでやりくりするしかなくて、前世の料理を再現なんてことはとうてい出来なかったそう。
でもね、ある材料でいろいろと工夫してクリームスープとか、あとコロッケとかも作ってくれてるのよ。
それとランディスがちょこっと口を滑られてしまったのだけど、サウスカールトン家はフィンレルの婚約はフィンレルの有責ではなく白紙ということにはなったけど、どう見てもフィンレルの方に責があるからと、元婚約者の家に賠償金を支払ったらしい。
元婚約者に賠償金を支払ったことは知らなかったけど、その後のことは調べたり邸の使用人たちに聞いたから知っている。
フィンレルのことがあって領地では取引がなくなったり、少ながらず影響があったらしいの。
それでお義父様は家のお金を領民の為に回したそうなの。
元婚約者に賠償金を支払ってさらに領民たちへの損失の補填をしたにも関わらず、それでもそこそこはお金があったらしいから元は凄く裕福だったってことよね。
お義父様たちは元から貴族の対面の為や経済を回す目的以外は、普段からそんなに贅沢をする方たちではなかったらしいの。
でも支出が多くなったから邸内ではそこそこ質素な生活をするようになられたそうだから、ランディスも食材で贅沢など出来なかったのね。
そして今から三年程前にサウスカールトン領は大雨により、複数箇所で川が氾濫した大きな被害が出た。
その後被害状況の確認と領民を激励する為に夫婦で出かけられて事故に巻き込まれて亡くなってしまった。
それからフィンレルたちが頑張ってまた持ち直してきた頃に、今度は氾濫した川沿いの近くに住んでいた領民たちの中から続々と発熱者が出た。
流行り病だと自領のことだけではなくなるので、王都への報告と原因究明の要請をした結果食中毒だったらしいのだけど、氾濫があった場所近くということは氾濫の影響によるものだったのかもね。
氾濫後に植えた作物に何らかの菌が付着していたのか、衛生面だったのか。
その時の現場を見てないから何とも言えないけど…。
ちょうどその頃にフィンレルと私との縁談が決まったみたいなんだよね。
そりゃフィンレル忙しかっただろうね。
そんなことがありながらも私と結婚が決まってベレッタの実家に多額のお金も払ったんだよね。
それでその後侯爵夫人の予算もちゃんとあったなんて、サウスカールトン侯爵家の経済力というか、底力にビックリだわ。
まあフィンレルのことがあって一時取引がなくなったけど、この領地の特産であるぶどうや桃などの作物の品質が高くてどこよりも凄く美味しいらしいし、領内で飼育されている馬も血統が良く身体的にも強く国一番と言われているくらい優れているらしいし、馬具の販売もしていて、馬具職人も凄く優秀らしいから領地領民の底力があって、お義父様もフィンレルも頑張ったから短期間で建て直すことが出来たんだろうね。
でも私は仕事復帰して今は家の予算がどれだけあるかとか、わかったけど私の庶民感覚ではまだまだ凄いあるように思うけど、いち侯爵家としては普通くらいになっているのだそう。
元がどれだけ裕福だったんだよって思うわ。
だからランディスはいろいろと試したいけど、今まで出来なかったのはわかった。
今後みんなで頑張っていこう!私も大した知識ないけど、頑張るわよ!美味しいものを食べる為にね!なるべく前世の食事を再現したいしね!
ランディスには私も転生者だって話して、前世の話で盛り上がったけど、ランディスは喋ってる時前世の私と話しているからか関西弁になってた。
ランディスはこの世界に来て初めて前世の話が出来ることに大喜びだった、もちろん私もね。
昭和の時代に見たドラマとかアニメの話楽しかったなぁ~。
ランディスは時代劇とかアニメが好きだったみたいで、あの時は私が処分しないって言ったのだけど、それでもランディスは知らなかったといえ自分たちにも責任はあるし、後で料理人たちみんな処分されたらって思って、処分されるなら自分だけにしてくれって、切腹って思わず出たんだって!
そういえば「副料理長の名前アメデオって言うんやで!」ってランディスが言って「「母を◯ずねて◯千里のサル!」って同時に言って大笑いした。
ランディスは赤銅色の短髪に青紫にも見える濃い碧眼の鋭い目つきの背が高くで筋肉ゴリゴリのおよそ料理人には見えないゴリマッチョ。
でも私美形も好きだけど、ゴリマッチョの強面も好きなんだよね。
映画『トリ◯ルX』の主演のスキンヘッドのハリウッド俳優の◯ィン・◯ィーゼルとか好きだった~。
強面さんが笑う時に顔がクシャッてなるのが可愛いって思ってたんだけど、ランディスもそんな感じ。
ランディスは37歳で独身なんだけど「俺みたいな体格と顔ここでは全然モテへんのよ。モテへんのは前世と一緒やけどな~」って笑って言ってた。
「今好きな人いるの?」
って聞いたら頭ガリガリ掻いて、オロオロと明らか挙動不審になった。
「これいるね!絶対いる!ねぇねぇここにいる?」
って聞くと顔を赤くして目が泳いでアワアワしてたから絶対この邸にいるな。
「…や、やめてくれや!前世八十近くまで生きてそこそこの人生経験してきたんやけど、ランディスになったらまたちゃうねん。
こうなんちゅうか女性経験のない元のランディスに引っ張られるちゅうかな、説明難しいんやけど…」
元のランディスに引っ張られるか…私は今のところ元のベレッタに引っ張ららるっていうのはない感じなんだよね。
どうなんだろ?これからそういうことがあるのかな?
ランディスに前世の記憶を思い出す前と後では、人格が変わったとか別人だとか思う?って聞いたら。
「う~ん、俺の場合は前世の記憶を思い出す前から性格は変わってへんかったと思うねんなぁ~。
ずっと貴族っていうのに馴染まれへんかったしな」
ということは、まったく性格が変わってしまった私とは違うみたいなのよね。
元々ちゃんとベレッタがいた?私が勝手に中に入っちゃったのかな?それで元のベレッタを追い出したりしてしまった?ってまた思った。
それをランディスに言ったら。
「俺がなんか言うのもおかしいけど、ベレッタさんのこと聞いたらもし元のベレッタさんと今のベレッタさんが別人やとしたら、元のベレッタさんは何らかの原因で消えたのかもな」
と言われた。
「そうかな?」
「いや確信はないけどな。
でも今のベレッタさんが元のベレッタさんの分も後悔せんように精一杯生きたらええと俺は思うで、それが元のベレッタさんの為にもなるんちゃう?」
「そっかそうだよね、ありがとうランディス」
私は元のベレッタがいて私がその立場を奪ったのだしたらって胸がギュッて苦しくなったけど、ランディスに話して気が楽になった。
そうだよね!私が今のベレッタなんだから自身が後悔しないように生きるよ!
切り替えないと!今の私には宝物のラファエルがいるんだから!
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