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三十話 叔父様との再会 ⑥
しおりを挟む叔父はどうあってもお金は受け取ってくれないだろうな、なら受け取ってもらうことは諦めよう。
その代わり何かまた別の感謝を表す方法を考えよう。
フィンレルに相談しないといけないわよね。
「叔父様わかりましたわ。
叔父様の気持ちを有り難く受け取らせて頂きます。
本当にいろいろと助けて下さり改めて感謝申し上げますわ」
私は叔父を見てニッコリと笑った。
「うんうん!笑顔のベレッタが見れただけで十分だよ。
あっ、そういえばベレッタは今使用人の選考で忙しいだろうけど、今後は表に出ていかなきゃならないだろう?
教育のやり直しをした方がいいと思うのだけどね」
叔父がにこやかにしつつも私を慮ってくれている表情で問いかけてきた。
そうなんだよねぇ~ベレッタは幼い頃に母が亡くなってから、貴族令嬢としての教育をまったく受けさせてもらえなかった。
それでも使用人のような扱いをされながらも、義母と義妹を見ていたんだろうし、アカデミーに通ってた頃のベレッタは自分なりに頑張ってたわ。
アカデミーに淑女教育の科目があったのだけど、でもそれは幼い頃から長年ちゃんと教育を受けた上でさらにというものだったので、ベレッタはかなり苦労していた。
それでもベレッタは努力したのよね。
アカデミーを卒業する頃には最低限は出来るようになっていた。
今の私はそのベレッタの努力と前世の私の経験から誤魔化し誤魔化し何とか様になるようにやってきたつもり。
でも叔父が言う通りなのよね。
叔父にはベレッタがちゃんと教育を受けさせてもらえなかったことを話したから、それを知ってくれている。
これから侯爵夫人として表に出て行かなくてはならない。
今後のラファエルの為にも私が恥をかく訳にはいかないわ。
「叔父様そうでしたわ。
わたくし今後の侯爵家、ラファエルの為にも侯爵夫人としてちゃんと振る舞えるようになりたいですわ。
それには教育のやり直しが必要ですわね」
私が言うと、叔父がうんと大きく頷く。
「そうそうそれでね、ベレッタの家庭教師も私に任せてくれないかな?」
「えっ?本当にいいんですの?」
叔父アントニオよ!貴方は本当によく気が付く男ですわ!
前世の私よりもうんと若い息子とそんなに変わらない年齢なのに、何てしっかりとしているんでしょ!
「もちろんだよ~そちらの方もちゃんと当たりを付けているんだよね。
私の妻のウテナは元は男爵家の娘だったんだけど、幼い頃からの親友の子爵令嬢がねアカデミー時代にカエンシュルト伯爵様の嫡男に見初められて、結婚したんだよ。
伯爵といえば高位貴族の中では下の方だけども、その中でもカエンシュルト伯爵家は歴史のある名家でね。
彼女はアカデミー時代に婚約が決まってそれから高位貴族夫人になる為の教育がはじまったからね。
いくら貴族令嬢として幼い頃から教育を受けてきたとはいえ、子爵家と名家の伯爵家では違ったみたいで、かなり苦労したみたいなんだ。
でも今は立派に伯爵夫人をしているんだよ。
私も何度も会ったことがあるんだけど、人柄も明るくて気さくで問題ないし、彼女自身も苦労してきているからベレッタのことをわかってくれると思うんだよね。
ベレッタの家庭教師にオススメだよ」
叔父ってば本当に頼りになる!
「えっと叔父様の奥様のウテナ様は現在28歳ですわよね?
カエンシュルト伯爵夫人も同い年ですの?」
私は興奮して前のめりになりそうになるのを必死に堪えて、殊更冷静さを装ってゆっくり質問した。
「そうだよ、ウテナと同い年なんだよね」
「ではお子様もまだそんなに大きくはないでしょうし、伯爵夫人のお勤めもあったりしてお忙しいのではありませんか?」
「子供はね、一番上が8歳で下に5歳と3歳の子がいるから、確かにまだ幼いね。
彼女はとても活発で行動的な人でね、それにご主人の小伯爵様が彼女の言うことなら何でも聞くようなベタ惚れだし、とても協力的な方なんだ。
だからウテナの身内なら喜んで引き受けてくれると思うんだ。
でもベレッタが王都に出てこれるかだね。
彼女は今だいたい王都にいるんだよね、たがらベレッタが王都に出てこれるんなら、時間を作ることは可能だと思うよ。
王都には私の家族、ウテナもいるしね。
だけど今領地のこととか、使用人のことでベレッタ忙しいからなぁ~」
なるほど!王都かぁ~王都には行ってみたいなぁ~。
でも今は領地の使用人をちゃんとしないといけないのよね。
執事長、侍女長を決めてそれから私付きの侍女も確保しないといけないわ。
いつまでも叔父の従業員を貸してもらう訳にはいかないしね。
今の状況を見てもし叔父の従業員五人がいなくなっても、今のところちゃんと回っているから、新たに雇う必要はないように思うのよね。
それと私が王都に出るなら王都での使用人も確保しないといけないわね。
今、王都のサウスカールトン家は何人かの人間で管理しているだけの状態だったはず。
私が王都に行くとしたらラファエルも絶対連れて行くから、乳母のジェシカ一家と侍女のカーラとテレーゼの都合も聞かないといけないわ。
私の領地での侯爵夫人としての仕事は、私が王都で熟しつつ、フレオとリリアンナが執事長、侍女長になってくれたらどうにかなると思うのよね。
それにここから王都はそんなに遠くないはずよ。
私はこの前に見たこの国の地図を頭で開く。
やらなきゃいけないこと山積みだけど、それが出来たら私とラファエルが王都に行くことは可能だと思うわ。
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