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二十九話 叔父様との再会 ⑤
しおりを挟む私は叔父の怒ったような表情を見て焦ってしまう。
「…叔父様怒らせてしまいましたか?」
私が叔父の顔を下から覗き込むように尋ねると、叔父は首を横にゆっくりと振る。
「違うよ、怒ってなどいないよ。
ベレッタはこんなに賢くてちゃんと物の道理をわかっていて、正義感も強く私なんかにも感謝をしてくれていることがとっても嬉しいと思う反面、そんな君が長年苦しんでいたのに、私が何も気付かなかったからさらに辛い目に遭わせてしまい、私は後悔しても仕切れないんだよ…」
叔父が目に涙を溜めながら唇を噛んで堪えている表情をしている。
「叔父様もう済んだことですわ。
過去は変えれないけれど、これからはいくらでも変えることが出来るとわたくしは今希望でいっぱいなんですの。
愛しい息子のラファエルが生まれて、叔父様やケイトたちが側にいてわたくしを助けてくれ、わたくしは自分が前を向いて立ち上がろうとした途端に、パァッと前が開けてわたくしは孤独じゃない!
今のわたくしには周りに助けてくれる人がいる!愛するラファエルがいる!と思うと、先が楽しみで仕方ないのです。
それにわたくしは実家にいる時もどんなに辛くとも、叔父様がわたくしに会いに来て下さいました。
叔父様はわたくしを忘れてはいないと思うだけで、わたくしは救われていたのですよ。
叔父様には本当に今も昔も感謝しているのです。
ですからもう後悔するのはやめて下さいませ。
わたくしはそんなことを望んでいませんわ」
ベレッタが実家にいる時に叔父が唯一の救いになっていたのは事実。
ベレッタの記憶が私にそう言ってるわ。
あの頃のベレッタも叔父にとても感謝しているもの。
ベレッタが虐げられて孤独の中押し潰されなかったのは、本当にこの叔父が居てくれたお陰なのよ。
それに今の私にとっても叔父がいたから、あらゆる手を尽くしてくれたからこんなに早く環境を変えることが出来た。
叔父がいなかったらもっと大変だったはず!それでも私はラファエルの為に諦めなかったけれどね。
だから叔父にはもう後を向いて欲しくない。
私と一緒に前を向いてこれからも歩んでいきたいわ。
だってまだまだこのサウスカールトン家には問題が山積みなんだもの。
これからも助けてもらいたいことがきっとたくさんある。
私は意地など張らず、これかも叔父に頼るところは頼らせてもらうつもりなんだから!
「…フッ、ベレッタそうだね…うん君の言う通り、…だよ…これからの方が、…もっと長く、て…大事だよね…」
叔父がポロッと涙を流した。
あら私叔父を泣かせてしまったわ。
「会長ったら何を泣いておられるんですか…」
そこに今まで音もなく後で控えていたケイトが叔父に近寄り、ハンカチを手渡した。
ケイトは無表情のままだけど、心なしか目が潤んでいるのは私の気のせいかしら?
「…ハハッ、そうだね!涙なんて見せて恥ずかしいよ、申し訳ない!もう大丈夫だ。
ケイトも言うようになったね!鉄仮面ケイトはベレッタのお役に立てているのかな?」
叔父がケイトが手渡したハンカチでそっと涙を拭いながら、戯けたように明るい声でケイトを誂う。
「会長覚悟はよろしいですか?」
ケイトがの指をポキポキと鳴らしながら目を細めて叔父を見下ろして、睨み付ける。
「おぉーっ怖い怖い!暴力反対ーっ!」
と大袈裟にソファの端へと飛び退く。
「ふふふっ、…アハハハッ」
私はそんな叔父とケイトを見て我慢出来ずに大きな口を開けて笑ってしまった。
貴族としてははしたないけど、今はいいよね?
叔父が目を丸くしてそんな私を見てから、叔父もアハハハハッと声に出して笑った。
「…ハハハッ笑い過ぎてまた涙が出てきそうだよ。
それでさっきの話だけど、ベレッタ本当にお金はいらないからね」
叔父がキッパリと言う。
「そうですか、それではどうしましょう?旦那様もわたくしも叔父様に言葉だけでなく、感謝の気持ちを表したいと思っているのですけれど…」
「本当にいいんだよ。
ベレッタとラファエルが元気で幸せでいてくれれば私はそれでいいんだ。
ベレッタからお礼でお金なんて受け取ってしまったら、もっと儲けてやるぞって気持ちがなくなっちゃうんだよね。
私はそういうタイプだからさぁ~。
それにベレッタからお金を受け取ったりしたら、妻のウテナに凄く叱られて口を利いてもらえなくなるよ…。
それはすご~く困ってしまうからね。
だからベレッタは気にせずにこれかもどんどん私を使ってよ」
叔父がテヘッと軽い感じで笑った。
えっ?叔父って本当はこんな人なの!?
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