怒れるおせっかい奥様

asamurasaki

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二十五話 叔父様との再会 ①

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 執事長、侍女長、私の専属がまだ決まっていなくて、その選考のことと、お礼をする為に叔父に会うことになった。

 今回は叔父をフィンレル、私や使用人たちが門の前でお出迎えをした。

 叔父は馬車を下りた時に前回とのあまりの対応の違いに驚いたようだけど、そこは大商会の会長ね。

 サッと表情を作りフィンレルを見つけてスマートに歩み寄って行き、程よい距離で頭を下げた。

「これはこれは妻の叔父殿のラバートリー卿ようこそ来てくれた」

「サウスカールトン侯爵様初めましてアントニオ・ラバートリーにございます。

 私めの為にわざわざお出迎えまでして頂き恐悦至極でございます」

 フィンレルの挨拶に叔父が丁寧な挨拶を返す。

「こんなところで立ち話も何だから、さあ中へ入ってくれたまえ」

「はい、ありがとうございます」

 堂々としたフィンレルに自ら案内されて、応接室へと私たちは入って行く。

 フィンレルもこんなに堂々と饒舌に喋れるのね。

 余所行きの顔ということなのかしらね。

 ということは最近私といる情けないフィンレルが素のフィンレルということなのかしら。


 部屋の中のテーブルの上にはお菓子が用意されていた。

 もちろん前回のようなことはなくケーキ、焼き菓子や軽食のサンドイッチなどがテーブルの上いっぱいにこれでもかと並べられていた。

 お茶も高級茶葉を使用した香りが良くコクのある凄く美味しい適温のお茶が出された。

 私が一口飲んで美味しいお茶の味に感心していると、フィンレルが湯気の出てるお茶をゴクゴク飲み出した。

 えっ?私も叔父もビックリして、目を丸くする。

 フィンレル何してるの?どうしたの?あっ?私が叔父に挨拶したらとっとと出て行けって言ったから、出されたお茶を飲み干そうとしてるとか?

 フィンレルは表情を変えず優雅な仕草で、もの凄い早さでお茶を飲み干した。

 そしてお茶を飲み干したフィンレルは徐ろに叔父に真摯にお礼と謝罪をしてから。

「すぐで申し訳ないのだが私は執務があるので、これで失礼する。

 ラバートリー卿どうぞゆっくりとしていくと良い。

 それから良かったら後で息子のラファエルの顔も見てやって欲しい」

 と挨拶してから本当にアランと共に部屋を出て行った。

 私が挨拶をしたらとっとと出て行けって言ったから、出されたお茶を一気飲みしたって訳?口の中火傷してるんじゃないの?

 それでもラファエルの顔を見てやってって言うなんて、ちゃんとしてるじゃない。

 叔父はちょっと面食らった顔をしている。

「叔父様申し訳ございません。

 わたくしが旦那様に叔父様と二人で込み入った話をしたいから、挨拶が済んだら席を外して欲しいの言いましたの」

 と私はフィンレルを庇うようなことを言ってしまった。

 でも叔父にフィンレルがこれ以上悪印象になることは、家の為に望まないもの。

 私が結婚してからこの邸の庭で叔父に最初に会った時フィンレルのことも正直に全部話したからね、叔父はフィンレルにあまり良い印象を抱いていなのよ。

「ベレッタそうだったのかい。

 それにしても前回とこうも違うとはね」

 叔父が苦笑いをする。

「これも叔父様の多大なるご協力があってこそ、出来たことでごさいますわ。

 本当に感謝申し上げます」

「いや、私は自分に出来ることをしたまでだよ。

 上手くいって本当に良かったよ。

 それでラファエルの乳母のジェシカ夫人はどうだろうか?」

 叔父がラファエルのことを気にかけてくれている。

「ええ、ラファエルがすぐジェシカに懐きましてね。

 ジェシカはとても明るくて面倒見も良い方で、安心してラファエルを任せられていますわ」

「それは良かった、安心したよ。

 専属侍女の方はどうだい?」

 叔父がその柔和な顔をより柔らかくしながら微笑む。

「何から何までありがとうございます。

 カーラもテレーゼもとてもしっかりしていて、ジェシカのフォローもしてくれてますし、よく気が付く良い方ですわ。

 良い方たちを紹介してもらって本当に感謝しておりますのよ」

「そうか、ひとまずひと安心だね。

 それで今いる使用人たちの情報なのだけれど、以前も少し渡したけどこれで私が調べたこと全部だよ。

 ベレッタ見てみてくれないかい?」

 そう言って叔父が書類の束を出して私に差し出してきた。

「ありがとうございます。

 拝見させてもらいます」

「ああ、ベレッタがこの邸の中の使用人で優秀な者を登用したいと言っているからね。

 出来るだけ細かく調べてきたんだ」

 叔父がフフッと口角を上げる。

 今までの書類を見てもそうだけど、叔父は本当に優秀だわ。

 大人数いるこの邸の使用人の経歴から家族構成、周りの評価など、細かく調べ上げてくれている。

 その中で以前から私が何人か気になっている人物の報告を今探し出す。

「わたくしが最初に叔父様の手紙を届けるようにお願いした御者のフレオは子爵家の第三男で、優秀な文官で宰相補佐にまでなったけれど、その当時の宰相の汚職が発覚して彼も解雇となり王都追放となりましたけれど、後に彼は一切関わっておらず無実だとわかったのですよね。

 それでこちらにくるまでどこにいたなかなど記載がありましたけれど、今回のものはより詳細ですわね」

 わたくしは御者のおじさんフレオがとても優秀だったのに目を付けていた。





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