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十三話 謝罪されても今更なのですけれど…でもどういうこと? ①
しおりを挟む「…それは…アランが…」
「アラン様が?」
アランとはフィンレルの側近なのよ。
短髪のブロンドの髪に濃い碧眼の鋭い瞳の眼鏡をかけた冷たそうだけど、フィンレルほどではないが綺麗な顔をした平民の出の男性だ。
ブロンドの髪に碧眼なんて平民では珍しいので、何か事情があるかもしれない。
「…アランが…以前君の専属侍女の様子がおかしいと言ったことがあったんだ…。
でも私は使用人を信用し切っていて、アランの気の所為だとちゃんと取り合わなかったんだ。
だけど…アランが先程見かけた君の専属侍女たちの様子がおかしく、気になるからちょっと様子を見に行きましょうと私を強引に君の部屋まで連れてきたんだ…そしたらあんなことになっていて…」
フィンレルの側近のアランは前から使用人の様子がおかしいことに気付いていたということ?
あら、アランの方は優秀みたいね。
フィンレルは顔色を悪くして俯いている。
「そうですわね、わたくしは旦那様と結婚した時から専属侍女だけでなく使用人たちに冷遇されて蔑ろにされてきましたわ」
私は貼り付けた微笑みを浮かべながら冷静に告げた。
「…っ!…そうか…そうだったのか…私の君への態度を見て…使用人たちもそれに倣って君を蔑ろにしていたんだな…すまない。
しかし君は一年もの間何も言わなかったのに、何故今になって?」
はあ?それを貴方が聞く?
「ラファエルが生まれてこのままではいけないと思ったのですわ。
わたくしがこの家で冷遇されて蔑ろにされたままでは、わたくしだけではなくラファエルにも悪い影響しか与えませんわ。
何よりわたくしの子であるラファエルもわたくしと同じように冷遇されて蔑ろにされるなんてことになったら、絶対に許せることではありません。
ですからわたくしは自分の環境も改善していかなければならないと思いましたのよ」
ラファエルのことを思ってのことは本当だけど、私は前世の記憶を思い出してから性格も変わったのよ。
「…そうか、そうだよな…。
そんなことも気付かず私は何て愚かなことをしてしまったんだろうな…本当にすまなかった。
今更謝っても君にしてしまったことは変わらないけれど…
君とラファエルのことはちゃんとするから…使用人たちのこともちゃんとする!」
私に謝罪して随分と殊勝な態度だわね。
でも私はお人好しでもなく優しくもないのよ。
謝られたからってはい!今までのこと水に流して許せすわとはなれない。
今までベレッタがされたことは消えない忘れることは出来ない、だから簡単には許してはあげないわ。
でも今日ミランダとユリアンナがクビになることが決まった。
それで私の予算か邸のお金を使い込んでいるかもしれない執事長と侍女長が、この騒ぎに気付いて証拠を隠滅してしまうかもしれない。
彼らが他にやらかしていることはもう証拠を掴んでいるから、クビになることは確実だと思うけど、邸のお金の使い込みだけはまだ証拠を掴めていない。
今のままだとここをクビになって終わってしまう可能性がある。
ちゃんと証拠を掴んで突きつけてやらないと気が済まない。
だからそこはもう時間がないから、早急にフィンレルに動いてもらうしかないわね。
「謝罪は受け取りますわ。
許す許さないは別問題ですけれどね。
わたくしはラファエルと自分の為にやらなければならないことをするだけですの。
旦那様は最低限のことをして下されば今まで通りで結構です」
「っ!…しかし使用人のことは私の責任で…」
フィンレルが私の言葉に傷ついたような顔をして俯く。
傷ついたのはベレッタの方なのよ!一年もの間、冷遇されて蔑ろにされてきたベレッタはどれだけ辛酸を舐めてきたと思っているの?全部今更だわ。
「そうですわね、確かにこの家の主は旦那様ですから使用人についての責任がありますわね。
なので旦那様に今から動いて頂くことにしますわ。
旦那様、わたくしの侯爵夫人の予算についてはどうなっていますの?」
「えっ?…予算?それは君が使っているものだが…」
フィンレルが戸惑った顔で私を見つめてくる。
「わたくしこちらに嫁入りしてから一度も自分で買い物などしたことありませんわ」
「は?…そんな…君は毎日のようにあちこちで散財していると聞いているのだが…」
フィンレルが疑わしげに私に冷たい視線を向けてくる。
「それはどなたが仰っているのですか?」
私も負けずに冷たい鋭い視線をフィンレルに向ける。
「…それは、執事長のオルフェルと侍女長のアテナだ」
「わたくし自分の予算について旦那様からも執事長からも誰からも今まで一度も何も聞かされておりませんわ。
ですので、どれくらいあるのかも自分に予算が組まれていることすら知らなかったのですけど?」
私が目を細めて言うと、フィンレルが目を見開き顔を引き攣らせ顔色も青くなっている。
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