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十二話 専属侍女がね… ⑤
しおりを挟む「…えっと、あ、あの…このおん…奥様がシーツに針が刺さっていたり…靴に針が仕込まれていたのが、証拠もないのにわたくしたちのせいだと…おっしゃいまして…」
ミランダが私のことをこの女と言おうとして慌てて奥様と言い直したわね。
ミランダは焦りながらもフィンレルに媚びる視線を向けながら言い訳する。
「それは当然じゃないか」
「えっ?…」
キッパリ言い切ったフィンレルを驚きを隠せない信じられないものを見る目でミランダがフィンレルを見る。
「証拠があるなしではない、君たちは侯爵夫人の専属侍女なんだぞ。
その侯爵夫人に対しての不手際…いや不手際なんかというものではなく、侯爵夫人を害しようとする行為を例えやっていなくともそれを見過ごしたのは君たちの責任だ」
フィンレルが凍りつきそうな冷たい表情をしながらミランダを睨み付ける。
「…それは……あっ!それはケイトが、…ケイトがやったことですよ!なのに奥様はわたくしがやったことにしてわたくしに罪を着せようとしているんです!」
こんな状況に陥っているのにミランダはまだ白を切り通して逃れようとしている。
「あんたなんかフィンレル様に見向きもされない愛されない妻のくせにだったか?…」
「あっ!…」
フィンレルがさっきミランダの言ったことを口にした。
ミランダの顔色が青から白に変わり、ブルブルと身体を震わせる。
フィンレル最初から聞いていたの?
「君は侯爵夫人の専属侍女であるにも関わらず、主人を主人とも思わない口の利き方はどういうことなのだ?」
フィンレルがさらにミランダを問い詰める。
「!…っ……」
ミランダがもう何も言えなくなり顔を俯かせる。
「君とペサベド嬢は今日で辞めてもらう」
「…そ、そんな…」
ミランダが絶望の顔をして泣きそうな顔になる。
ペサベド嬢とはユリアンナのこと、彼女はペサベド子爵令嬢だ。
「…ちょ、ちょっとお待ち下さいませ!旦那様!
…わ、わたくしは!何もしておりません!
すべてミランダ様に命令されて、やらないと家族がどうなってもいいのかと脅迫されて仕方なくしたことなんです!」
この場に及んでユリアンナがミランダを裏切って、ミランダにすべて罪を着せようとする。
「なっ!…ユリアンナあんた何を言ってるの?!
あんたも喜々としてやっていたじゃない!
あんたもフィンレル様に相応しいのはわたくしだとこの女を追い出してわたくしがフィンレル様の妻になったらずっとお仕えしたいと言っていたじゃない!」
ミランダがユリアンナに飛びかからんばかりに叫ぶ。
「そんなこと言ったことなどございませんわ!」
ユリアンナがミランダから目を逸らす。
「見苦しい!やめろ!」
フィンレルの声にミランダとユリアンナは肩をビクッと跳ねさせる。
「アラン連れていけ!今日中にここから出て行ってもらうようにしろ!
君たちには紹介状は出さないからそのつもりで」
「承知しました」
もうミランダもユリアンナも諦めたのか何も言わずに、俯きながら肩を落としてアランに連れられて部屋を出て行った。
そこで私はケイトのことを思い出す。
「ケイト!大丈夫なの?」
私は慌ててケイトに歩み寄る。
「奥様何もありませんでしたよ。
あの方が何かする前に旦那様が入ってきて下さいましたので。
旦那様と奥様のお茶をご用意してからわたくしはいったん外しますね。
ご用が終わられた後にまた参ります」
ケイトが何事もなかったかのように表情を変えず、二人分のお茶の用意をして部屋を出て行った。
フィンレルと二人きりになり気まずい空気が流れる中、今フィンレルとソファに向かい合って座っている。
「…すまなかった!これもすべて私の責任だ!」
フィンレルが私に頭を下げながら謝罪してくる。
確かにフィンレルの責任よね。
「ええ、確かにそうですわね」
私が目を細めながらフィンレルを見ると、フィンレルは肩をビクつかせる。
「…ああ、その通りだ…私が…君をずっと放置していたから…こんなことになっているとは…本当に侯爵家として責任者として恥ずかしいばかりだ…」
フィンレルが唇を噛みながら俯く。
「そのことはとりあえず置いておいて、今回どうしてわたくしの部屋までいらっしゃったのです?
今ラファエルは眠っていて別の部屋におりますわ」
そうなのである、今ラファエルは私の部屋にいない。
ラファエルの居室でお昼寝をしているところである。
私はもうすぐ出産後1ヶ月になり侯爵夫人として仕事の復帰が近くなって、ラファエルがこれから慣れるように、今はお昼寝の時だけはラファエルを私の部屋の隣の自分の居室で、叔父様がケイト同様送り込んでくれたレニが侍女としてラファエルの様子を見守ってくれている。
まだ夜などは私と一緒に眠っているのだけどね。
だから今ラファエルは私の部屋にいないからフィンレルが私の部屋に来ることはないはずなのだ。
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