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番外編
ヴァネッサの里帰り ③
しおりを挟む「わぁ~懐かしい~。
当時のまま!」
ジーンに案内されて、クリスと私の自室だった部屋に入った。
部屋の中も改修されて壁とか天井は綺麗になっているけど、色や他のものはすべて私がいた頃のままだ。
白いカーテンが付いた天蓋付きのベッド、勉強などに使っていた机と椅子、植物に関する書物や他の勉強の為の本などが並んだ本棚。
それにテーブルを挟んで二人がけのソファが2つと鏡台とその前に椅子が置かれている。
あとはクローゼットなど。
当時ジーンがよく花を生けてくれた花瓶までそのままにしてくれている。
部屋はベージュ色に統一されていて、貴族令嬢ながら当時からそんなに物を置いてなかった。
貧乏だったこともあったけど、宝飾品などに興味もそんなになかったしね。
「ブレンダーザス小公爵様、ヴァネッサ様こちらでお茶をご用意致しましょうか?」
ジーンが微笑んで気を遣って言ってくれたので、お茶を用意してもらって、ソファでクリスとしばし寛ぐことした。
ジーンがお茶を出してくれてから部屋を出て行ってクリスと二人きりになる。
隣に座るクリスが私の肩に手を回して、私を引き寄せる。
「ブレンダーザスの部屋とは比べものにならないくらい狭いでしょ?」
と私はクリスの顔を見ながら自分の昔の姿を晒しているようで恥ずかしくなり、少し照れながらエヘッと戯けてサラッと言ってみる。
「広さじゃないよ。
ヴァネッサらしいオシャレでスッキリとした素敵な部屋だね。
よく勉強していたんだろう?書物も棚にいっぱいある。
ヴァネッサが育った部屋を見れてとても嬉しいよ。
ヴァネッサの香りもするしね」
「なっ!…」
クリスに私の香りがするっと言われて、恥ずかしくなって顔を真っ赤にする。
邸は改修したけど、ベッドとか調度品がそのままだから私の香りするかな?
私は慣れ親しんだ家の香りだと思ったけど違うの?
そんな私にクスッとクリスが笑って私の額にチュッとキスをする。
「香りなんて恥ずかしいこと言わないでよ!」
私は額にキスをされて余計恥ずかしくなって顔に熱が集まり、思わずクリスを責めるような言葉を言ってクリスの太ももをパンッと軽く叩く。
「ふふっ、ヴァネッサはいつまでも初だな…」
柔らかな熱のある蕩けるような瞳でクリスに見つめられて、私はクリスから目を逸らす。
初とかじゃないよ!
私の香りがするって言われて、おまけにクリスの熱い瞳を見てしまったら、ちょっと夜の想像してしまったじゃない!
そんな自分が恥ずかしい。
「ヴァネッサが今何思ったのかわかってるよ。
そんな顔しないで、我慢出来なくてなるから」
クリスが私の頬を両手で包んで顔を近づけてくる。
うっ!やめて~。
今二人きりだけど、まだお昼過ぎだし、ここ私の実家。
私はクリスに私がちょっと想像したことがバレてたことに羞恥にもっと顔が熱くなって、口をパクパクさせてしまう。
これ以上ないくらい顔が赤いだろう。
「…駄目だよ、そんな誘うような顔をしたら」
「…そ、そんな顔してない!」
クリスの色気ダダ漏れの顔にドキマギしてしまう。
いつまで経ってもそんなクリスに慣れない私。
「到着して早々ヴァネッサの自室だったところで押し倒したりしないから安心して」
クリスニヤッとされて私はムスっと口を尖らす。
「当たり前よ!」
ムキになった私にクリスはククッと笑う。
「ヴァネッサの生まれ育った部屋に私も連れてきてくれてありがとう。
とても嬉しいよ」
クリスがニコッと笑う。
現金にもクリスの笑顔を見て私も嬉しくなる。
「クリスそう言ってくれてありがとう」
私も笑うとクリスがチュッと唇にキスを落としてくれたので、私も自分からクリスの唇にキスした。
ここで私からキスしてくるとは思わなかったのか、クリスが目を見開く。
「…駄目だ…我慢だ…」
クリスの小さな呟きが聞えてきて今度は私がクスッと笑う。
その時コンコンと扉をノックする音が聞える。
私が「はい」と返事をすると、お母様がわざわざ迎えに来てくれたみたいで、クリスと私は手を繋いで、お母様の後をついて行く。
案内されて応接室に入ると、レオは楽しそうにお父様と遊んでいて、部屋の中にジョルジュがいた。
「ジョルジュ!」
「義兄上、姉上ようこそいらっしゃいました」
ジョルジュが立ってにこやかに迎えてくれた。
「戻ったのね、おかえりなさいジョルジュ」
「ええ、ただいま戻りました。
ミーナは学院があるので、今日は無理ですが、明後日は学院が休みなので明日学院が終わったら、迎えに行って連れてきますよ。
ミーナも姉上に会いたがっていますからね」
ジョルジュから明日ミーナを連れて来てくれると聞いて嬉しくなる。
「まあ、明日ミーナも来てくれるのね!嬉しいわ、楽しみしてる」
「さあさあ、クリス様もヴァネッサも座って!大したおもてなしも出来ないけど、食事を用意したのよ、お昼まだでしょ。
ここでみなさんで頂きましょう、座って」
お母様に言われて、レオとお父様の前のソファにクリスと座る。
「おかぁしゃま~」
お父様と遊んでいたレオが私を見つけて満面の笑顔で走り寄ってくる。
「レオ~お食事の時間よ。
一緒に座りましょうね」
「はぁ~い」
抱きついてきたレオを私の膝の上に乗せる。
「ヴァネッサ大丈夫か?変わろうか?」
長旅の後だからかクリスが気遣ってくれる。
「大丈夫よ、食事になったらクリスとの間にレオに座ってもらうから」
「わかった」
クリスはレオの頭を撫でる。
レオはクリスに頭を撫でられて、嬉しそうに目を細める。
食事がどんどんと運ばれてきて、私は目を丸くする。
ブレンダーザス公爵家と変わらないくらい豪華だからだ。
私がいた頃は貧乏な時はもちろん持ち直してからも、お祝いの時でもこんなに豪華なことはなかった。
「ちょっとこれ何?」
私は驚きをそのまま言葉にした。
「何って、クリス様とヴァネッサ、レオが来てくれたんだ。
これくらいしないとね」
お父様が余裕の笑みを浮かべているいる。
「凄いじゃないですか!」
私はまだ驚きで声を上げる。
「ヴァネッサのお陰よ。
モンファのオイルが凄く売れて、おまけにブレンダーザス公爵家と共同でいろいろと開発してくれたから、うちもこれくらい出来るようになったのよ」
お母様がニコッと私を見る。
「そうなの!?邸も凄く綺麗になってるし、料理もこんなに豪華になってる!」
「ヴァネッサが嫁いで以降ランドル様とクリス様の助力を頂いたからね」
お父様が柔和な笑みのまま言う。
お父様は優秀な魔術師だけど、経営の方はあまり向いてないと言える。
それは経営の才がないのではなくて、ほんとに欲がなく領地のことに関しては人が良すぎるのだ。
お父様だけじゃなく歴代のダベンサードル辺境伯がそうだったみたい。
良い領主とは言えるのかもしれないけれど。
防衛とか敵に対しては容赦ないお父様らしいのだけど、領地経営に関しては違うみたいなのよね。
昔から自分たちより領民や自領の騎士魔術師たちを優先するから、いつも自分たちのことは後回しだった。
でもお母様も私たちもそれが当たり前だと思っていたから、それに不満はなかった。
それが今は領地だけじゃなくてうちもこんなに裕福になったってこと?
「ランドル様とクリス様の経営手腕は凄いですからね。
姉上が発見したモンファのオイルだけじゃなく、アイディアを出したっていうベビーベッドもうちも関わらせてもらってるからね。
ベビーベッドは今や平民の間で大人気で、ご懐妊された王太子妃殿下からも発注を頂いたというのを知った貴族からの発注も増えているのですよ。
今後貴族の間でも流行しそうです。
それにモンファのオイルの方は母上とミーナも頑張って商品を開発してくれて、今度新しい商品を出したいからって姉上に相談するって言ってますよ」
ジョルジュから新たな情報を聞いて、さらに驚く。
私さっきから驚いてばかりだわ。
「そうなの?ベビーベッドのことは私はこんなのがあったらいいなと言っただけよ?
後は全部お義父様とクリスにお任せしてるから、どうなってるか全然知らなかったし、お母様とミーナもモンファオイルのことで頑張ってくれてるってことも知らなかったわ」
「わたくしたちはそれほどでもないわよ。
元々ヴァネッサが考えたことを元にしているだけだから」
「えっ?お母様とミーナはどんな商品を開発したの?聞きたいわ」
私は興奮して前のめりになる。
「ヴァネッサわたくしたちが言い出したことだけど、ちょっと待って。
先にお食事にしましょう?
モンファのオイルの新商品についてはヴァネッサに相談したいし、ミーナも明日こちらに来ることになっているからその時にしない?」
「あっ!そうだったわね。
ごめんなさい」
私は自分が勝手に興奮してしまったことに恥ずかしくなってみんなを見回しながら謝った。
「ヴァネッサ謝ることないよ。
ヴァネッサは一生懸命になっているだけだからね」
クリスが私の耳の近くまで顔を寄せてきて囁く。
「うん、クリスありがとう」
クリスはこうやって私のことを一番に気遣ってくれるとこほんとに嬉しい、好き!
私はクリスとレオ、そしてお父様たち家族と久しぶりに食事を楽しんだ。
食事後、レオはお昼寝してクリスと私は庭を散歩したり、邸の中でゆっくりと過ごした。
夕食もみんなで食べた。
明日はレオとお父様お母様に案内してもらって、領地でピクニックをするつもり。
レオが喜んでくれたらいいなぁ。
クリスは明日は王宮に行かなければならないようで、夕方には帰ってくるみたい。
明日はお義父様も来ることになっている。
明日を楽しみに私は早めに寝ることにした。
レオは寝る場所が変わったから寝れるか心配したけど、早くに寝て起きたりしていないようでレオのことも安心することが出来た。
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