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番外編

新たなデーモン族がやってきた ②

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 背後で風が吹き振り返るとアンディナさんが立っていた。

「アンディナさん!」

 私がアンディナさんに近寄ると、アンディナさんはナリナさんと同様に呆れを含んだ目をして私を見上げてきた。

「リゼット様、申し訳ないのう~。

 おバカな同種がやってきたようなのじゃ」

「お、おバカ?!」

 私はアンディナさんの言葉に声が裏返る。

「おバカ以外の何者でもないのじゃ。

 自分より大きな魔力があちこちにあるのに、それでも堂々と自分の存在を誇示して飛んでくるなど…とんだおバカの愚か者じゃよ。

 ほんに同種として恥ずかしい限りじゃ…」

 アンディナさんがはぁ~っと溜息を吐く。

「あの…アンディナさん、今凄い爆発音がしたけど、大丈夫なのかな?」

「ああ、最初に王城に一発かますつもりだったんじゃろ?

 でも音だけで王城は何ともないから安心して欲しいのじゃ」

 アンディナさんがやれやれという表情で腕を上にあげる。

「そ、そうなの?それで誰が対処するの?」

 私がアンディナさんを見下ろしながら尋ねると。

「まああれからここに初めての襲撃だからの、魔王ファーシリウスが自ら出るとのことじゃ。

 ほんに申し訳ないことじゃよ」

「えっ?シリウス様が?」

 シリウス様自ら出て行くということなのね。

 シリウス様のことだから大丈夫だろうけど、デーモン族ってここでもドラゴン族と並んで最高位の魔族だからやっぱり心配になる。

「リゼット様大丈夫じゃよ。

 あれくらいのデーモン族なら魔王ファーシリウスが出て行くまでもないのじゃ。

 妾たち側近でも余裕だからフロムウェルが行こうとしたのを魔王ファーシリウスが止めて自ら行くと言われたのじゃ」

「そうなの…」

 レナンドさんにもナリナさんにもここにいるように言われたけど、どんなに大丈夫って言われてもやっぱり不安になる。

「はぁ~、リゼット様は心配しておられるのじゃな…。

 なら妾たちがリゼット様を守って差し上げるので、外に出てみるかえ?」

 アンディナさんがまた溜息を吐きつつ、私の心配を悟って外に様子を見に行くことを提案してくれた。

「アンディナさんお願い!必ず指示に従うから」

 私は両手を顔のところで合わせてアンディナさんにお願いする。

「…わかったのじゃ。

 少し離れた所で妾が結界を張るので、妾から離れないで欲しいのじゃ」

「わ、わかった」

 私はウンウンと頷く。

「ナリナたちも頼むのじゃ」

「承知しました」

 アンディナさんの言葉にナリナさんが返事して、アンディナさんの近くにみんな集まって転移した。


 王城の前には黒い長い髪を風に靡かせて、黒い切れ長の瞳の白い肌に鼻梁の高い少し厚めの唇をしたスラッと背の高い大層美形な男が立っていた。

 私たちが転移した時、まだシリウス様は姿を現していないみたいで、私たちを見つけてニヤッと笑い美形の背の高い男が私たちの方へ歩み寄ってきた。

「おっと!デーモン族が二体もいるではないか」

 近付いてくる間にアンディナさんとナリナさんの存在を認めた男がニヤリとさらに口角を上げる。

 私の隣のアンディナさんが興味なさげに冷めた視線で、その男を見上げる。

 その男が右手をこちらに向けた時に黒いもやのようなものが、男の手の平に集まってくるのが見えた。

 何かしてくる!そう思った瞬間、私たちの前に誰かが立った。

 それはシリウス様だった。

「シリウス様!」

 私がシリウス様を呼んだと同時にその男の手から黒いもやのようなものが飛んできた。

「あっ…」

 でもその黒いもやはシリウス様の前で霧散した。

 シリウス様は手さえも上げていない。

「リゼットそこにいるのだぞ」

 シリウス様は少し私の方を振り返ってから、前の男に向き直った。

「…何だ?!消えた?…」

 男がシリウス様が何もしていないのに、自分が放った黒いもやのようなものが消えたことに信じられないという顔で目を見開く。

「お前はデーモン族だな、この魔国に何の用だ?」

 シリウス様が私たちに背を向けているので、どんな顔をしているかわからないけど、シリウス様が少し覇気を出したようで、前の男が半歩後退る。

 シリウス様は手加減しているのだろうけど、私はシリウス様の覇気で少し息苦しさを感じる。

 アンディナさんが手を左右に振ると、息苦しさが一気に楽になった。

「リゼット様申し訳ないのじゃ。

 結界をもう少し強くしたけど大丈夫かえ?」

 アンディナさんは私を心配気に上目遣いで見てくる。

「ありがとう、今楽になったわ」

「そうかえ、良かったのじゃ。

 魔王ファーシリウスはだいぶと手加減して覇気を出しているけど、最初からもう少し強めに結界を張っておくべきじゃった」

 シリウス様はだいぶ手加減してこれなのか…凄いな。

「手加減してこれなんて凄いね」

 私は素直に感心した。

「あまりに強いと妾でも防げないからの、それにもう少し強くしてしまうとそれだけであのデーモン族くらいなら、あっさりと消滅してしまうのじゃ。

 魔王ファーシリウスはかなり手加減をしておるのじゃ」

「……」

 シリウス様は強いと思っていたけど、覇気だけでデーモン族を消滅させてしまえるの?

 シリウス様はこの魔国での魔族討伐隊ともゲオング王国やカナンゲート聖王国で王族たちと対峙した時はまったく覇気を出していなかったということよね?

 私は今更ながら背中がゾクッとした。


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