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番外編
新たなデーモン族がやってきた ①
しおりを挟む魔国が大陸と不可侵条約を結んで、私とこの世界の神だったエンタリアと決着がついてから二年が経った。
魔国は以前と変わらずな日々である。
シリウス様は大陸とは一切関わらないことを決めているけど、それでももしものことを想定してデーモン族、ヴァンパイア族、ドラゴン族などに定期的に大陸に飛び監視するように命じている。
ゲイング王国とカナンゲート聖王国は失くなった。
王都が完全に封鎖され逃げた平民以外王都の民はすべて魔族により処分された。
王都以外の自領にいた貴族たちも大した抵抗はなかったらしい。
抵抗の姿勢を見せた貴族がその日に魔族により処分されたことが大きく、抵抗しても無理だと他の貴族が悟ったようだ。
魔族は抵抗した者だけ処分してその領地で暮らす平民には手を出さなかった。
その後両国は大陸いちインベルダ王国と周辺国四国との話し合いで、周辺四国が両国を支配することになった。
元々両国とも小国で大した資源もなかったことからそんなに揉めることなく、それぞれの周辺国に吸収される形となった。
シリウス様も側近さんたちも大陸が騒がしくなっていても、何らいつもと変わらず本当に両国に侵攻して滅ぼし、大陸と話し合いを持ったのかと思うほどだ。
私も今までと変わらず、ナリナさんたちと王城や街を歩き回りみんなとあれこれとお話をしたり、訓練所で戦闘訓練をしたりして過ごした。
シリウス様と街に出かけることもある。
王城も街も以前と変わらないのんびりと平和な日々が過ぎていた。
変わったことといえば、私の部屋がシリウス様の隣の部屋になったことくらいかな?
夜はシリウス様の寝室で過ごすようになった。
シリウス様は以前と変わらず私を大切にしてくれて、愛してくれている。
所詮溺愛というやつである。
シリウス様は言葉も行動も本当にストレートで、「愛している」や私のことを「美しい」「可愛い」と常に言ってくれて、側にいるとピッタリとくっついて片時も離れないなど凄いのだ。
私はとても嬉しいけど恥ずかしくて顔を赤くして照れていたけど、それにも二年も経てば慣れてきたし、私も自分に正直に気持ちを伝えて行動にも表すようになった。
そんな平和なのんびりとした日々が二年過ぎた頃に、ひとつの事件が起こった。
ある日急に魔国に襲撃があったのだ。
それは大陸の人間ではなかった。
突然上空に大きな黒い翼を広げた人物が現れて、王城に近くに飛び降りたのだ。
「あれ?あれ何かしら?」
私はちょうどナリナさんたちと街に出かけて、レナンドさんに会いに行っている時で、レナンドさんの魔道具店の外でレナンドさんと話している時だった。
「ありゃ、あれはデーモン族のようですわい」
レナンドさんも空を見上げながらのんびりと言う。
「デーモン族?今日は大陸に行っていたっけ?」
私が空を見上げながら首を傾げる。
デーモン族のみんなは普段は転移で行き来しているから、上空にあんな派手に翼を広げて現れたりしない。
「いや、ありゃぁ新たな者のようですわい。
自分の存在を誇示する為にわざと空を飛んでやってきたのですわい。
これはひと騒動を起こりそうですわい。
リゼットさまさあ部屋に戻りましょう。
わしが部屋に送り届けてファーシリウスさまに会いに行きますでな」
「えっ?えっ?」
私は何?何?とキョロキョロとしている間に、レナンドさんが私の側に来る。
「リゼットさま行きますぞ!」
その後すぐ浮遊感を感じて私の部屋に戻ってきた。
「レナンドさん?新たな者?デーモン族って?」
「恐らくですが、人間に召喚されて契約が終わってから膨大な魔力を感じてここにやってきたのだろうですわい。
もうファーシリウスさまも察知しているでしょうが、ちょいとわしがお知らせに行ってきますわい。
リゼットさまはここを動かないで下されよ。
ナリナたち頼むぞ」
「はい!承知しました!」
「えっ?ちょ、ちょっとレナンドさん?」
ナリナさんが返事して私がどういうこと?レナンドさんに聞こうとしたのに、レナンドさんはもう消えて姿がなくなった。
「ナ、ナリナさんどういうこと?」
私がナリナさんを振り返り見つめる。
「申し訳ありません!
命知らずの馬鹿な同種がやってきてしまったようです…」
ナリナさんが唇を引き結び大きなその愛らしい黒い瞳を吊り上げている。
「ナリナさん怒っている?」
私はそんなナリナさんの顔を見て少しビクッとなるり
「リゼット様同種が申し訳ありません。
別次元にいる同種はデーモン族こそが最強だと思い、この世界の者を下に見ている者が結構いるのです。
実際わたくしたちも昔はそうでしたから…」
ナリナさんが怒りに目を光らせながらも、呆れたような困惑の表情を浮かべている。
「いや、ナリナさんが謝る必要はないわ。
えっと…ここに新たなデーモン族がやってきて…その、何をしようとしているのか…っ!」
私が話している途中にドーンッと外で派手な爆発音がした。
「えっ?!何?」
「リゼット様お待ち下さい!
ファーシリウス様かアンディナ様の指示があるまでは動かないで下さい。
窓にも近寄らないで下さい!」
私が反応して窓の方へ行こうとしたのをナリナさんに止められる。
そこに背後でヒューッと風が吹く。
振り向くとアンディナさんが立っていた。
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