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八十三話
しおりを挟む私の心臓はシリウス様の真剣な瞳に射抜かれてまたドクンッと大きな音を立てた。
「…確かにあの神であるエンタリアと対峙するにはもしかしたら死ぬことも有り得ると思っていました。
前世の記憶を思い出した頃は死を覚悟してエンタリアに対峙するつもりでした。
でも…ここでまたシリウス様との日々を過ごしているうちに私はどうしてもシリウス様のところに戻りたい帰りたいと思っていて…何とか死なずに戻れる方法を模索していました」
「ふむ、そうか…。
リゼット、そなたはあらゆるこたを想定していたということだな」
シリウス様が頷く。
「あ、あの!シリウス様とその…愛し、合いたいと言ったことはもしものことを想定はしていましたし、ヒト族とのことが終わったらと決めていました。
早急なことであったことは否めませんけど…えっと…でも私は…ただシリウス様が愛しくて…その…一番は愛しているから愛し合いたいと思ったのです!」
私は自分の言葉に恥ずかしくていたたまれなくなる。
きっとこれでもかと顔を赤くしているだろう。
「リゼット!」
「えっ?」
いつの間にかシリウス様が私の隣にいて私をギュッと抱きしめきた。
「ああ、良かったリゼットよ我はそれが一番聞きたかったのだ。
我は昨日これほどの幸せがあるのかと、満たされて至高の時間であったのだ」
幸せそうなシリウス様の声が耳の近くで聞こえて、堪え切れず涙が溢れた。
「シリウス様!」
私もシリウス様の背に腕を回す。
「我にとって他のことなど些末な事だ…ああ良かった。
リゼット愛している愛している…」
それからシリウス様が私に愛の言葉を叫び続けた。
それに答えて私も何度もシリウス様に愛していると伝え続けた。
それからシリウス様が急遽夕方にまた全魔族を王城の庭に集めて、あの時に何があったか私のこともすべて話した。
そしてシリウス様が不老不死でなくなり、蘇生も使えなくなったこと、魔族みんなの寿命が500年からいになったこと。
魔族みんなの繁殖力が上がりみんなに子が恵まれるようになり、魔族が後世に引き継いでいくことなどをみんなの前で話した。
私はシリウス様とのことばかりを考えていたから、シリウス様が蘇生を使えなくなったことや私のことに、みんなの寿命のことなどみんながどんな反応をするか考えていなかった。
だからみんなが私が神であったことにもシリウス様が蘇生を使えなくなり、自分たちの寿命も500年くらいになったというとても重大なことにも全く考えが及ばなくて自分たちで勝手に決めてしまったのに、それよりもシリウス様と私の子が出来るかもしれないことや、なかなか子が出来なかった特に上位の魔族が子に恵まれるかもしれないことに感激して大騒ぎになったことに驚いたけど、私はみんながそのことを受け入れ喜んでくれたことが嬉しくて感激した。
でも本当にそれで良かったのか、魔族の方たちは私たちが勝手に決めてしまったことに本当に納得しているんだろうかという思いも後から感じてきて、それが気になり始めた。
また宴会だぁーとみんながはしゃいで騒ぎになっていた。
これから大陸の各国と不可侵条約を結んだとはいえ、いろいろあるかもしれない。
それに魔族の繁殖力が上がれば魔族の数もどんどんと増えてくる。
数が増えてくれば魔族内でもそれだけ問題も出てくるだろう。
シリウス様や私みんなの寿命はあと500年くらいになった訳だ。
500年後にはこの魔国を長年統治していた圧倒的な存在のシリウス様もいなくなる。
人間とだけじゃなく魔族内で諍いが起こることがあるかもしれない。
だけど、私たちは今を大事に生きて子を生んで、子たちに大切なことは何かを一緒に考えて教え合っていき、後世もずっと魔国が平和で存在し続けることが出来たらいいなと思っている。
それまでにシリウス様や私たちがしなければならないことはいっぱいあると思う。
けれど私はみんなが命に限りがあるからこそ、自分の命を大切にして楽しく生きていけたらいいなと切に願う。
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