【本編完結、番外編は不定期更新】蔑まれ虐げられ裏切られた無能と言われた聖女は魔王の膝の上で微睡む

asamurasaki

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八十話

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『フフフッ、パールティアラにプレゼントだよ。

 君の愛しのシリウス様を呼んであげたのさ。

 感謝して欲しいな~君は彼を神聖魔法で眠らせたみたいだけど、私が起こしてあげたんだよ』

 エンタリアが私を間近に引き寄せニコニコと笑う。

 その勝ち誇った顔がムカつく!

 エンタリアがシリウス様の神聖魔法を解いてしまったんだね。

 だからシリウス様が起きてしまって、いない私を探して転移してきたんだ。

 エンタリアならそういうことをしてくるかも?と思っていたけど、私の予想より早い。

 早くに煽り過ぎたか。

 なるべく私だけで形を付けたいと思っていたけどもう仕方ない。

「リゼット!リゼット!何をしているんだ神よ!リゼットを離せ!」

 私たちに向かいシリウス様が叫ぶ。

「…シリウス、さま…グッ!…」

 エンタリアがまた力を強めた為に首がより絞まり苦しさに私は喘ぐ。

「何を!やめろ!神やめるんだ!」

『ファーシリウスよ、この女はリゼットではないんだよ。

 神のパールティアラというのだ。

 リゼットは元は君の嫌いな私と同じ神だったんだよ』

「なっ!」

 エンタリアがニンマリとする。

 シリウス様の声が聞こえた。そりゃ驚くよね?

『パールティアラは私を殺そうとして罪を冒して、記憶を消されて地上に降ろされた神の世界の犯罪者さ』

「それはお前が殺されるようなことをしたのであろう?」

 エンタリアの言葉に即座にシリウス様が反論した。

 私がやったことはエンタリアが原因だと言ってくれた。

『フンッ、愛し合う二人か…仲睦まじいことで…だがパールティアラが罪を冒したことには変わりはない。

 だから創造神の怒りを買って天界を追われたのだから』

「それが何なのだ!我は感謝しているのだ。

 リゼットが地上に降りてきてくれたから我と出会うことが出来たのだから」

「…シリ、…ウス、さ、ま…」

 シリウス様が私のことを微塵も疑うことなく全面的に信じてくれていることが、嬉しくてシリウス様が愛しくて堪らずまた涙が溢れそうになる。

 でもエンタリアの目の前では泣きたくなくてグッと奥歯を噛んで堪える。

「お前…もう…ひとつ、神の…理に反して…いるよな?

 シリ、ウス…様に…お前に…勝つ方法が…ある、と…言った…らしいが、…お前、は…そんな、もの…用意、してい…ないだろ?」

 私が目を細めて言うとエンタリアは少し目を見開いた。

『…それが何だというのだよ、私はこの世界の神なんだよ。

 私が決めたことがすべてなんだ、この世界は私の為のものだから私の自由にしていいのさ。

 ただの人間の君が口を出してくるのはおかしいよ』

 エンタリアはいつまでも成長しない駄々っ子のようなことを言い始める。

「ほんと、に…愚かだな…お前…は嘘、…をつい…たんだ…。

 神、の理…に反…する以前…の話…だよ」

『さっきから下等だとか愚かだとか私を貶めてどういうつもりなんだろうね。

 パールティアラ君には私に逆らったことをう~んと後悔してもらうよ。

 ファーシリウスよ、パールティアラを助けたくば己の命を私に捧げるのだ』

「なっ!…」

 エンタリアは私を助けたければシリウス様に自死しろと言ったのだ!どこまで腐った神なんだ!

 いやエンタリアなど神と呼ばれる存在などではない!

『パールティアラよ、これなら神の理に反していないだろ?

 私が直接手を下すのではないからね、私は何て良いアイディアを思い付いたんだろうね』

 ニヤリとエンタリアは勝ち誇って嫌らしい笑みを浮かべる。

「お、前は…やは…り馬鹿…で、下等…だ!自ら、手…を下さ…ずとも…自分…の、世界に…生き、るもの…に自死、を…進めるなんて…」

『うるさいよパールティアラ』

「うぐっ!」

 エンタリアが首の血管の部分を圧迫してきて頭に血が行き渡らなくなってきてクラクラしてくる。

「や、やめろ!やめるんだ!

 我の命でいいのならくれてやる!」

 シリウス様が叫ぶ。

「や、やめて…シリ、ウス、さま…おね、が、…い、や…め…て…」

 苦しくて目の端に溜まっていた涙が流れていく。

 私が苦しそうに涙を流しながら必死にシリウス様を止めようとするのを見て、エンタリアは満足そうにニンマリと笑う。

『さあファーシリウスよどうす…!?イッ!」

「っ!?」

 私がシリウス様を必死に止めようとする姿を見て、気を良くしエンタリアがシリウス様に注意を向けた瞬間に私の首を絞める力が少し緩んだ。

 その時を逃さず私は精一杯自分の腕も使って藻掻いて、自分の顔の近くにあるエンタリアの指を思いっきり噛んだ。

 エンタリアは私の噛んだの痛みに、咄嗟に私の首を絞めていた手を外して私を払い除けた。

 私はそのまま海に向かって仰向けに落ちていく。

 ああ、このまま落ちると死んでしまうかもしれない!

「創造神トーム!」

 私は落ちていきながら創造神を呼ぶ為に叫んだ。

 お願い!創造神トーム!見ていたら来て下さい!

「リゼットーっ!」

 シリウス様が私の名を叫びながら自らも迷うことなく丘から飛び降りた。

 シリウス様も海に向かって落ちていく。

 そんなシリウス様に涙が溢れる。

 エンタリアが何かしてこなければ助かるかもしれないけど、私もシリウス様も魔法を使えなくされていれば死んでしまうかもしれない。

 不老不死のシリウス様はどうなるのだろか?と冷静に考える私もいる。

 創造神トーム!お願い!何とかして!

 もうエンタリアを止めて!

 私は強かに海面に叩きつけられる。

 痛いと思う間もなく意識が途切れた。







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