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六十八話

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「シリウス様ありがとうございます。

 でも明日は私もシリウス様と一緒に行かせて下さい、そして結末をちゃんと見させて下さい」

 私はゲオング王国とカナンゲート聖王国の最期はちゃんと見届けようと思っている。

「そうかわかった。

 それでなんだがリゼットよ、両国の王族王都にいる貴族並びに勇者、聖女の血を持つ者は許すことは出来ぬが、平民についてはそなたはどう考えておる?」

「平民についてですか?」

「そうだ」

 私は自分の胸に聞いて少し間を置いてから。

「私は魔獣討伐やプリシラの仕事国内外の結界を張ることや、王族高位貴族を癒やすことを主にやってしました。

 平民は第一聖女と第二聖女が嫌がる貧民層の人たちだけ癒していました。

 そんな中、私が怠慢でろくな仕事をせず、神聖魔法を持ちながら大したことが出来ないサボってばかりの無能で役立たずの聖女だと噂が出回るようになったのです。

 今日のプリシラの話で彼女たちがその噂を流したのだと知りましたけど…その噂のせいで私は母国の平民たちに嫌われていて、罵声を浴びせられたり、石を投げられたりしました」

「…そうであったな」

 シリウス様には前に話したことだけど、シリウス様は怒りと共に切ない視線を私に向ける。

「…私は確かに平民にも嫌われていました。

 でも私が癒した貧民層の人たちはその場で私に感謝してくれました。

 それらすべても第一聖女と第二聖女がやったことになりましたけど…。

 でも私に感謝してくれたのは彼らだけで私は彼らに救われたのも事実です。

 私は貧民層以外のほとんどの平民の人たちを癒したりする機会はありませんでしたから、平民たちはその噂を本当だと思ったのでしょうし、噂の真意を調べる術はありませんでしたから、仕方のないことだったと今は思っています」

「なるほど、リゼットは平民まで滅ぼすのは望んでいないということでいいか?」

 私はシリウス様に聞かれてもう一度よく考えたそして。

「はい…正直言えばそうです」

「なら他の国も滅ぼすことも望んでいないということだな?」

「シリウス様、私は魔族だと言いながらすみません」

 私はシリウス様みんなにすまない気持ちになる。

 するとシリウス様がゆっくりと首を左右に振る。

「リゼットよ、何も謝ることはないのだ。

 そなたは真っ直ぐで優しく魂の芯は美しいままだから、いくら酷い目に遭わされてもすべてのヒト族を滅ぼすことは望まないであろうとわかっていた。

 そう言うであろうと、明日攻め滅ぼすのは王都だけにしておる。

 王都の平民はまったく殺さないとまではいかないが、王都から逃げる平民は追わないよう指示してある。

 王都は封鎖する予定であるからそれまでの時間だがな…。

 狙うのは王都の魔法剣士、騎士と王族貴族並びに勇者と聖女の血を持つ者を殺すことにしている。

勇者と聖女の血を引く者は例え王都にいなくとも殲滅対象だが、両国ともすべて王都にいることは調べ済みだ」

「えっ?」

 私は知らなかったことで目を見開く。

「今回の毒のことで両国の王族と王都にいる貴族、特に勇者と聖女の血は絶えさせるつもりだ。

 だから明日両国の王都を攻め制圧し、王城を包囲した後我らが王族貴族を処分した後、周辺国並び大陸のすべての国に我らを排除しようと両国があの毒を使ったことを伝える。

 あの毒は500年前に使用されて以降、大陸で禁忌となり使用禁止となったものだ。

 それを使用したゲオング王国とカナンゲート聖王国の方に非があると伝え、我らが攻め滅ぼしたのは正当性があるのだと示す。

 そしてその後ヒト族の他国の出方を我は見るつもりだ。

 他国が我らを攻めてきたら問答無用で迎え撃つが、他国が我らの正当性を認め、今後一切我らに手出しをしてこないと不可侵を認めるなら、我らは他の国を両国の王都以外は攻めないとしてもよいと思っている」

 シリウス様はゲオング王国とカナンゲート聖王国の王都と王城を落とて両国は滅ぼすけど、魔国に手を出してこなければ大陸のことは他国に後は委ねると言っているのだ。

「シリウス様や他の方たちはそれでいいのですか?」

「側近たちにあの神との邂逅のことを話し彼らの望みを聞いた後、側近から他の者たちに周知するように言ってあったのだ。

 他の者たちから不満が出ることもなくみな納得しておる。

 それに我はこれから魔国でリゼットと他の者たちと穏やかに生きていきたいと思っておる。

 それを邪魔されなければ他のことは興味がないのだ。

 みなも我と同じであるようだ。

 リゼットはどうなのだ?」

「私はシリウス様たちがそれでいいのならそうして欲しいと思います。

 私もシリウスと生きていきたいです…」

「そうか良かった!」

 シリウス様はホッしたような微笑みを浮かべた。

「私のことを気遣って配慮してくれてありがとうございます!」

「当然のことだ、我はリゼットが望むことを叶えたいのだ」

 シリウス様は私のことを考えて今後動いていこうとしてくれている、そのことがとても嬉しかった。

 シリウス様本当にありがとうございます!

 私は心の中でも何度もお礼を言った。






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