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三十二話

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 シリウス様に手を引かれてしばらく街を歩いていると。

「そうだ、我が魔道具を贈るのはどうだ?」

 シリウス様は思いつたとばかりに何故か目を輝かせる。

 私は目が覚めてから今までシリウス様にあらゆる贈り物をしてもらっている。

 日常生活に必要なもの、ドレス、ワンピース、靴、帽子、宝石など身に付けるものはもちろん魔法書や本などしょっちゅう部屋に運び込まれてくるのだ。

 それらの贈り物も魔法書や本は有り難く読ませてもらっているけど、いつもこんなにたくさんどうしよう?どうすればいいんだと思っているけど、せっかくシリウス様が私に贈ってくれているものだからもう十分ですとは言えなくて、有り難く頂いているけど…実はかなり戸惑っているのだ。

「あの、シリウス様には普段からたくさん贈り物をしてもらっています。

 十分過ぎると言いますか、使い切れない程でこれ以上は…」

 私はシリウス様と手を繋いだままなので、空いている左手を胸の前で左右にブンブン振る。

「それはそれこれはこれだ。

 我とリゼットが街で買い物するのは初めてだ。

 我がリゼットに記念に何かを贈りたいのだ。

 我の願いを叶えてはくれないか?」

 そんな言い方をされてしまうと断り辛いわ。

 私は困ったように笑ってしまう。

「…でも魔道具は大変高価なもので…私には相応しくないと言いますか…」

「リゼットよ、自分で相応しくないと決め付けるものではないのだ。

 贈りたい者は貰う者が喜んでくれるかどうかなのだ。

 相応しい相応しくないではないのだ。

 そなたは我からの贈り物を喜んではくれないのか?」

 シリウス様が寂しそうに眉尻を下げる。  

 こんな表情をされるなんて…。

「そんなことはありません!

 シリウス様が下さるものすべて初めてのものばかりで、嬉しくとても喜んでいます!」

「そうか!なら魔道具店に参ろう。

 街の魔道具店は城のものよりそれ程高価ではないから気にするな」

 シリウス様は笑って何だか上機嫌になり、目的地に向かって歩き出した。


 そしてある小じんまりした少し古ぼけたお店?の前で立ち止まった。

 店に看板などはない、一見お店には見えない民家のようなところ。

「ここだ」

「ここが魔道具店…」

「ああ、ここは昔は城の魔道具研究の責任者だった者の店だ。

 品は間違い物だ、さあ入ろう」

 シリウス様がそう言って店の扉を開いた。 

「入るぞ」

 扉を開けてシリウス様が声をかける。

 店内は明かりがポツポツとあるくらいの薄暗さで狭くひっそりとしているが、店内の中央にあるテーブルや壁際の棚には商品が所狭しと並んでいる。

「おぉ、これはこれはファーシリウスさまではないか!

 わざわざおいで下さったのか」

 店の奥から少し低くハスキーな声がした。

「レナンドよ、久しぶりだ元気にしておるようだな」

 シリウス様が声がした方を見ながら声をかけると、店の奥から魔族が現れた。

 私はハッとする。

 白い短髪に口の周りに同じ色の髭を蓄えていて、金の瞳をした年は50くらいの男性だったからだ。

 魔人ではないよね?

 シリウス様は自分以外の魔人は滅んだと言っていたもの。

「リゼット紹介しよう、この者はドラゴン族のレナンドだ。

 元はドラゴン族のトップで我の側近だった男だ」

 ドラゴン族の方だったんだ、そういえば、少し空いた口から牙が見えている、ここからでは瞳の中の瞳孔は見えないけど。

「初めましてリゼットです」

 ドラゴン族の方はとても警戒心が強いとここに来て知ったので、緊張しながら挨拶する。

「…魔人?」

 紹介されたレナンドさんが目を見開き私を見る。

「間違いではないな、リゼットは先祖返りだ」

「ほぉほぉ、ヒト族をファーシリウスさまが保護したとは聞いておったが、見目も魔力も魔人そのではないか!

 …おっと、挨拶をしてくれたのに申し訳ない、リゼットさま初めましてわしはレナンドと申しますわい、お見知りおきを」

 レナンドさんは挨拶をした後、人懐っこい笑顔をしたので私はビックリして目を見開く。

 王城や外で会ったドラゴン族の方たちと全然違ったからだ。

「ククッ、レナンドはドラゴン族の中でも変わり者と言われておるし、ドラゴン族の長でもあり我よりも長生きしている唯一の魔族だ。

 リゼットを一目見て魔人と判断出来る者はそう多くはない」

「ファーシリウスさま変わり者は余計ですわい。

 ほぉ~わしはファーシリウスさまに出会う前に魔人に会ったことがありますがな、リゼットさまは魔人そのものの気を放っておられますわい。

 ファーシリウスさま以外に魔人の気を放っているのは以前会った魔人以来じゃわい」

 レナンドさんにマジマジと見つめられて、私は少しだしろぐ。



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