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三十一話
しおりを挟む何と今私はシリウス様と街を手を繋ぎながら歩いてます。
えっと、アンディナさんたちと街で買い物をして、串焼きを一緒に食べた日から次に見学に行く前の日にシリウス様が「明日は我がリゼットを視察に連れて行く」と言われたのだ。
シリウス様自ら?アンディナさんは外せない用事でも出来たのかしら?午後の訓練もだと、シリウス様が私に同行してくれるのが午前も午後もだけどいいのかな?と思ったけど、当日になってナリナさんたちも誰も付けずシリウス様と二人きりだったのでさらにビックリ。
シリウス様は魔王で恐ろしく強い方らしいし、この魔国でシリウス様は魔族にとって自分より大切な存在だから、襲ってきたりする者なんているはずがないので、シリウス様に付いている者も元々いないし、何の心配もないとはわかっているのだけど、シリウス様と私の二人きり?それも城の私の部屋から街に転移してからずっと手を繋いでいるんですけど?
「あの…シリウス様?」
私が戸惑ってシリウス様を見上げると。
「どうしたのだ?リゼット」
手を繋いで歩いたまま柔らかく微笑んだシリウス様が私の顔を見てくる。
シリウス様には私の心の声が聞こえているはずなのに聞いてくる。
「えっと…シリウス様自ら案内してもらうなんて申し訳ないというか何というか…」
「リゼットよ、気にするでない。
我がリゼットと街に出かけてみたかったのだ」
「えっ?」
私は目を瞬いてシリウス様を本当に?という顔で見上げる。
「ああ、アンディナたちがリゼットと一緒に買い物をして広場のベンチで同じものを食べたと聞いてな、我がリゼットの初めてでありたかったと思ったのだ」
「それってどういう?…」
私はシリウス様の言っていることが理解出来なくて首を傾げる。
私の初めてでありたかったとは?
「ククッ、リゼットよこれは嫉妬というものだ」
「嫉妬?」
シリウス様がいつものククッという笑い声を上げながら嫉妬と言いながら何故か楽しそうだ。
「そう嫉妬だ。
リゼットに買い物をさせてやってくれと言ったのは我なのに、いざリゼットが楽しそうに買い物したり串焼きを外でベンチに座り笑顔で食べたと聞いて、我とはまだしていないことだと思うと嫌だと思ったのだ」
「えっ?それって…」
「そうだ、我はそなたを好ましく愛おしく思っておる。
家族になりたいとはそういうことのつもりであったのだが、そなたは親子やペットのようになるつもりであったのか?」
シリウス様が尚も楽しそうに笑う?
「…えっと…」
私はシリウス様のストレートな言葉に顔に熱が集まってくる、赤くなっているだろう。
「クックッよいよい、まだ我の気持ちに答えを出す必要はない。
そなたが今だと思う時に言葉にして言ってくれたら我はそれだけで満足するのだ。
さあ、今日は何を買いたい?」
そう言ったシリウス様が身体を屈めて私の顔の近くに、その美しい顔を近づけてきた。
私の顔はより一層熱くなって心臓はバクバクと音が早くなる。
このままだとずっとシリウスの言った言葉が頭を回ったまま過ごすことになると、頭をブンブンと振って切り替えようとする。
買い物、買い物と違うことを考えようとするけれど今何か欲しいものと思っても何も浮かんでこない。
「まだ何も浮かんでいなくて…」
シリウス様にはわかられているから正直に言う。
「ふむ、そうだな歩いて見て回っているうちに見つかるかもしれぬ、それでは参ろう」
シリウス様が繋いでいる手を引っ張ってまた歩き出した。
王城や訓練所などでシリウス様を見かけた魔族はみんなすぐに礼を取るけど、街にいる魔族は遠巻きにシリウス様を見ているけど、礼をしたりする方はいなかった。
みんなが礼を取っていたらひっきりなしになってしまうものね。
でもみんなのシリウス様を見つめる眼差しは尊敬よりもっと上の敬慕とか、人間が神を崇めるものに見える。
あらためて魔族にとってシリウス様がそういう存在なのだと感じた。
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