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二十八話
しおりを挟むこの日私は午前中アンディナさんに案内してもらって、また街に繰り出していた。
「今日はリゼット様と買い物しようの思っての」
とアンディナさんに言われて今までは見学だけだったけど、街で初めて買い物をすることになった。
私は生まれてから孤児院にいたり王都の教会にいたりしたけど、街に出て買い物するという自由が一度もなかった。
孤児院にいた時にお使いなどで買い物を頼まれる子供がいたけど、私はそういうことをさせてもらえなかった。
私がお金をくすねたりすると言われていたからだ。
あの頃は私の見目を忌避されてまったく信用されてなかったのよね。
幼い頃はそれが悲しかったけど成長するにつれて私なんかと諦めてしまっていた。
だから生まれて初めての買い物にドキドキワクワクと胸が弾み少し緊張している。
アンディナさんに魔国のみに通用する銀貨3枚を渡されて、「リゼット様の好きなものを買うとよいのじゃ」と言われた。
魔国にも通貨があって、金貨、銀貨そして銅貨だ。
すべてシリウス様の顔が描かれている。
銅貨10に対して銀貨が1、銀貨100に対して金貨1というもの。
街で買い物にはだいたい銅貨1枚から5枚くらい、一度の買い物なら銀貨2枚で十分事足りるらしい。
余程の高価なもの魔道具や宝石でも買わない限り金貨を使うことはほとんどないらしい。
私は貰った銀貨を握り締めてキョロキョロしながら、アンディナさんたちと街をウロウロとする。
しばらく歩いていると、露店を見つけて魔国にもこういうお店があるんだと思い近付いていく。
リボンや髪止めが縦長のテーブルにたくさん並んでいる。
私はそこで赤いリボンに目がいった。
私がそのリボンを見つめていると。
「リゼット様これかえ?」
アンディナさんが指差して私の顔を見上げる。
見た目10歳の少女くらいのアンディナさんは私の肩くらいまでの身長なので、私を見上げてくる。
魔族は幼い少女の見た目をしているデーモン族以外大人は女性てもみんな私より遥かに身長が高い。
魔族は成長が早いのか子供ももちろんいるけど、赤ちゃんや5歳くらいまでの幼児以外の子供は私と同じくらいか私より身長が高いのだ。
私が人間の世界でも成長が遅くて、年の割に身長が低い方からなのだろうけど。
「はい!その赤いリボンが目に入って…」
「良いではないかえ、きっとリゼット様に似合うのじゃ」
「そうですか?じゃあそれにしようかな」
アンディナさんだけじゃなくナリナさんたちもうんうんと頷いて同意してくれたので、赤いリボンを1つ買った。
銅貨3枚だったので、銀貨1枚を渡して銅貨7枚のおつりをもらう。
何だかこれだけのやりとりに私はジワッと嬉しさを感じる。
「リゼット様良い買い物じゃ。
魔王ファーシリウスの瞳の色じゃの」
「えっ?」
アンディナさんに言われて私は目を瞬く。
買ったリボンを見ると、ヴァンパイア族より少し濃いシリウス様の片方の赤い瞳を思い出しす。
そのリボンの赤は本当にシリウス様の瞳のような色をしていた。
「あっ!…」
私は顔に熱が集まる。
シリウス様のことを考えていた訳ではないはずなのに、並んでいた数あるリボンや髪止めの中からその色を選んだことに恥ずかしくなる。
「これは魔王ファーシリウスに妾が何か言われてしまうかもじゃ…」
「アンディナさん何か言いましたか?」
「いや、何も」
アンディナさんが何か呟いたけど、私には聞こえなかった。
「リゼット様あちらの噴水の所にベンチがあります。
そこでそのリボンお付けしましょうか?」
シニョンさんに言われて、前方左側の方に少し広場があって中央に噴水があった。
ちょうど街の真ん中辺りが広場になっている。
「そうですよ~リゼット様!せっかくですのでそのリボンお付けしましょうよ!」
ナリナさんがニコニコしながら言う。
「それじゃあお願いしようかな」
「はい喜んで!」
私たちは広場へ行き、私がベンチに座りシニョンさんがリボンを付けてくれた。
毎日シニョンさんが髪を整えてくれるのだけど、今日はサイドを編み込みにして後ろで緩くまとめて黒いリボンを付けてくれていた。
その黒いリボンを外して先程買った赤いリボンを付けてもらった。
「まあ、リゼット様よくお似合いじゃ」
「本当にリゼット様の美しい白い髪に花が咲いたようですわ」
アンディナさん、ナリナさんが褒めてくれる。
「ありがとう嬉しい」
こうやってアンディナさんやナリナさんたちは事あるごとに褒めてくれる。
今までそういうことがなかったから恥ずかしくて照れてしまう。
「さあ、リゼット様他に欲しいものは何かの?」
「他に欲しいもの…」
アンディナさんに言われて欲しいもの…と考えるけど何も浮かんでこない。
お金を持って買い物出来ることが凄く嬉しいのに、何を買えばいいのかわからない。
どうしよう~と思っていると、広場の脇に食べ物を売っている露店が目に入った。
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