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十六話
しおりを挟むシリウス様のお話を聞いてから2日後、私はまずシリウス様の側近の五名の方にお会いすることになった。
起きて朝食を食べてから湯浴みに連れて行かれて、全身の隅々を綺麗にしてもらってからお世話をしてくれているナリナさんたちにマッサージ、化粧をしてもらい髪を結ってもらった。
そしてシリウス様が用意してくれたというドレスを着せてもらった。
膝下までの身体のラインに沿った黒いドレスで華やかな金糸と赤糸の刺繍がしてあり、赤い花が描かれている。
花は薔薇に似ているようなだけど薔薇とは少し違う花で、魔国の花だろうか?
今まで大陸でドレスを纏っていた令嬢を見てきたが、足がすべて隠れる足首まである長さだったけど、膝下までの丈でコルセットもなしだった。
大陸では女性は足を見せるのをはしたないとされているけど、魔国は違うようでお世話してくれているナリナさんたちのお仕着せも膝下までの長さだ。
常識が違うのかもしれない。
私は聖女の正装と言える聖装のドレスしか着たことがない。
聖装のドレスも足首まで丈かあるけど、コルセットを必要としない上から被るだけのものだから今回もコルセットなしで私は良かったと思った。
それに膝下までの方が動きやすい。
今まで魔獣討伐の時に足首まである聖装が絡みついてきて、何度も転びそうになっていたからこのドレスは有り難い。
それにしてもこの黒に金糸と赤の糸の刺繍で、シリウス様の髪と瞳の色をあしらっているのだけど、どういうことだろう?サイズもピッタリた。
シリウス様が用意してくれたからということなのかな?きっとそうだろう。
サイズは?私がここに来て、まだ10日と少しでサイズも計ったことがないのにこんなに私にピッタリだというのは?
それに靴もピカピカの黒でヒールのあるもの、私は聖女の時はぺたんこの布製の粗末な靴しか履いてなかったから、ヒールのあるものなんて大丈夫かな?
「わぁ~リゼット様とてもよくお似合いで美しいですよ」
ナリナさんが両手を胸のところで合わせて、無邪気に笑う。
見た目10歳の美少女だから無邪気に笑うとほんとに可愛らしい。
「ナリナさんありがとう。
こんな素敵なドレス本当に私に似合ってるかな?」
私は褒められて照れてポッと顔が赤くなる。
「すっごくすっごくお似合いですよ」
「ええ、ええナリナ様の言う通りですわ。
リゼット様の髪と瞳の色がさらに美しく映えてとても素晴らしいドレスですわ」
「はい、元々とてもお美しいリゼット様がさらに美しくなっていますよ」
ナリナさんがニコニコしていて、シニョンさんとケナンさんがさらに褒めてくれる。
「シニョンさん、ケナンさんもありがとう。
何だかそこまで褒めてもらうととても恥ずかしくなるわ」
私が言うと、ナリナさんがフフッと笑う。
「とても美しいリゼット様にファーシリウス様もお喜びになられますわ」
ナリナさんのシリウス様も喜んでくれると言われて、私はドキッとする。
そうかな?喜んでくれるといいな。
「ファーシリウス様が用意して下さったドレスが似合っていて良かったです」
「そうですわね、もうすぐファーシリウス様がお迎えにいらっしゃいます」
シニョンさんがシリウス様がお迎えにいらっしゃると聞いて私は目をパチパチと瞬かせる。
「えっ?ファーシリウス様がわざわざお迎えに来て下さるのですか?」
いくらお客として扱ってもらってるとはいえ、シリウス様自ら迎えに来てくれるの?
シリウス様って魔王様よね?私から行かなくていいのかな?
「そうでございますよ。
もうしばらくしたらいらっしゃいますので、それまでソファにお座りになってお待ち下さいね」
ケナンさんにソファに座るように促されて、私は座ったけど何だか落ち着かずソワソワしてしまう。
そんな私をナリナさんたちが微笑みながら見守ってくれいる感じ。
それから十分ほどでノックする音が聞こえて、シリウス様が部屋に入ってこられた。
私はすぐに立ってお出迎えする。
「リゼットよ、用意は出来たか?……」
「はい!ファーシリウス様お待たせしました。
ドレスと靴をご用意して下さり感謝申し上げます」
魔族式の挨拶がわからないので、昔に教えられたカーテシーをする。
「……」
シリウス様が無言で私をジッと見てくる。
もしかしてドレスが似合ってないとか?
それとも人間の挨拶の仕方がまずかったのかな?
私は少し焦って額に汗が出てきた。
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