私のダイアリー

門脇 賴

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第一章 2025年(令和7年)

第4話 100匹のゴキブリの駆除より1匹のヤモリの救助

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 県営住宅に越してきてから10年になる。
 私は野外の昆虫は、蚊や蛭のような一部の例外は別として大概好きであるが、室内に無断で侵入してくるモノではアシダカグモだけは苦手中の苦手である。自分が物心ついた頃には父親が気味悪がって、必ず殺していたのをしょっちゅう見ていた所為であろうと思う。祖母も母も全然平気だったのであるが。

 苦手ではないが、蚊とゴキブリは当然嫌いである。そのゴキブリであるが、年間30匹ぐらいがゴキブリホイホイで駆除できていた。
 3年前のある日、ゴキブリホイホイの部屋の中に予想外のモノを見つけてしまった。ヤモリである。中にいるゴキブリ数匹はまだ蠢いているが、ヤモリは触ってみてもピクリともしない。ゴキブリとは生命力が違うようだ。
 ヤモリは大好きというほどではないが、好きな方である。掌に乗せた時など、少し吸い付くような足の感触がすごく心地よい。それを不覚にも殺してしまった。詫びの気持ちと後味の悪さが残った。

 100匹の害虫を殺して1匹の好きな虫も殺すよりは、101匹とも殺さない方を私は選ぶ。
 これは10人の有罪者を有罪にするとともに1人の無罪者も有罪にするよりは、11人とも無罪にする方を選ぶのと同じ原理であろう。

 その日からゴキブリホイホイは使えなくなった。1年半、ゴキブリとは同居した。むき出しの食べ物をキッチンに放置する事は無いのでそれ程は苦にならない。とは言え、衛生上よろしくない上、何よりもゴキブリを求めて一番苦手なヤツが無断侵入してこないとも限らない。

 ある日、行きつけのゼネラルストアで、1年間有効で置いておくだけでゴキブリが居なくなるという売り文句に引き寄せられゴキブリ駆除の商品を買った。使用してみて、1年間で6~7匹の死骸を見つけた。
 あとの20数匹はどうなったのだろう? 見えない部屋のどこかで昇天しているのか? それはそれで、あまり気持ちの良いことではない。

 ある朝、キッチンのフロアで潰れたゴキブリを発見した。どうも昨夜トイレに立った時、死骸を踏みつけたのではないかと思う。こうなると、駆除の仕方としてなら、ゴキブリホイホイの方がまだマシなように思う。

 さて、今年の夏はどうしたものか? いささか気になる昨今である。
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