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第四章 イタリア・ローマ

第33話 ローマの休日4(さよなら、ローマ)

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 航空券が再発行されれば、明日は帰国便に搭乗する事になる。
 今朝は約束通りに先ずパキスタン航空に真っ先に行ってみた。ポリスの証明が必要との事で警察署に行ったのは良いが間違って通過書を貰ってきて恥をかいてしまった。これは番号札のような物だ。何の質疑もなくくれるので変だなとは思ったが、せこいコソ泥の多いローマならではの事かと思いそこ迄疑問を持たなかった。
 再度コールして証明書を入手でき、夕方無事帰国用航空券は再発行して貰えた。古い航空券が使用された場合の支払い義務の誓約書にサインさせられたのがちょっと気になるが。

 夕食は少しだけ疑いを持っている絵描きさんに紹介されたオステリアで食べてみたが、ここも又すごく安くて良心的で良い店である。
 今宵はヨーロッパで過ごす最後の夜である。いろんな事があった4か月であるが、日本では味わえない貴重な体験だったと思う。ベッドに入るとそれらの事が次々と頭を巡るがいつしか眠りに落ちていた。

 翌日、14時40分ローマ発のカラチ行きに搭乗するはずだった。
 ところが…。

 カナダ・アメリカでは、物乞いやらホモは居たが盗難にも災害にも遭わなかった。だがヨーロッパでは物乞いは居るし泥棒は居るし災害にも遭ってしまったようだ。
 搭乗時刻が近づいているのに一向に表示がされない。何かアナウンスがあったのかもと思いそこらに居た従業員のおっさんに英語で訊ねてみたが、

”I don't speak English."

と無表情で返された。せめてその前に、"Sorry" ぐらい言えないのか⁉
 掲示板を見たり、アナウンスに傾聴したがよく解らない。
 暫くイライラした後、別の(たぶん)従業員に再度英語で訊いてみたが、同じ返事を同じような顔で返された。頭にきたので、つい

"You are Crazy!"

と言ったら、
”お~っ!” とかなり怒りの表情で睨まれた。知った事か! 頭に来てるのはこっちだ。
 こいつはそこそこ英語は解るようだ。理解はできるが話せないのか、それとも日本人を嫌っており非協力的なのか、或いは私を中国人と勘違いしているのか?
 いずれにしても、国際空港の従業員としては失格である。

『捨てる神あれば拾う神あり』
 心を落ち着かせようと思いながらアナウンスに注意をしていたら、

"Japanese are there." 

と、いきなり声を掛けられた。指さす方に眼をやると確かに日本人らしい男子が4人集まっている。何で今まで気が付かなかったのだろう?
 山で道に迷っている時、登山者に遇った気分だ。
 その『拾う神』にお礼を言うのも忘れ、すぐ仲間入りした。
 彼らの話によれば、ギリシアで地震があったそうである。アナウンスがあったのだろうが、自分はキャッチできなかったようだ。

 4人のうち1人はイタリア滞在1年でありビザ取得の為一時帰国するそうで、イタリア語はある程度話せるとの事。また1人はオックスフォード大学に1か月間留学した後、1か月はヨーロッパを回っていたというフリーのカメラマンでお喋りな50歳近いおじさんであった。
 
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