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第二章 西欧

第10話 イギリス3(シェークスピア)

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 ストラットフォード・アポンエイヴォンの最終日は田園のサイクリングを楽しみながら、博物館になっているシェークスピアのお母さんの実家、奥様の実家を訪ねた後、シェークスピア劇を観劇する事にした。
 朝、親切な宿のおかみさんに相談したらすぐレンタサイクルショップに電話してくれ場所も教えていただいた。借りてすぐ、ヴィクトリア駅で会って昨夜も会った少林寺拳法の日本人にまた会った。昨夜はスコットランドからの帰りでユースホステルに宿泊すると言っていた。今日は日本人の女性連れだ。昨夜ユースに行くバスの中で会ったそうで、彼女は既に日本を発って8か月になるがまだ当分旅を続けるようだ。

 劇『ハムレット』の入場券を購入した後、シェイクスピアの奥様の実家を訪ねてみる。奥様は『アン・ハサウェイ(Anne Hathaway)』と言い、シェークスピアより8歳も年上だ。以前、野外博物館で見たのと同じような古い農具や生活必需品が数多く見られた。付近には同じようなわら葺屋根の家がずいぶん見られる。静かで良い所だ。

 続いて、シェイクスピアのお母さんの実家を訪ねてみる。途中の田園風景に心が和む。ここでは親切なおばあさんがいろいろと説明してくれた。20人もの召使いを雇うほど裕福な農家だったようで立派な古い農具などが多数見られた。誕生時の名は『メアリー・アーデン(Mary Arden)』と言うようだ。

 『ハムレット』は英語力がついて行かなかったが、入場料が高いだけあり見応え十分。ハムレット役のアクターは唾を飛ばしての熱演であった。

 翌日の朝食はアイルランドからシェイクスピア劇を観に来ているという中年のご夫妻と一緒だった。お2人は3日間で5つの劇を観る予定だそうである。かなりのシェイクスピアファンであろう。
 私が今朝出発する旨話すと、『これからどこへ…』と訊かれたので、『パリ』と答えるとその後の表現が実に面白い。日本で洋画でよく観た外人さん特有の大袈裟なジェスチャーを眼にして思わず苦笑いしてしまう。"Oh, Paris..."  と言いつつ両手を肩のあたりに上げ眼を細めながら軽く首を振る。その後、"And then Rome." と言うと同じように、 "Oh, Rome..."  と言いながら同じジェスチャーをされた。このイギリス(実際に訪れたのはイングランドだけだが)ではロンドンよりも静かなストラットフォード・アポンエイヴォンが気に入ってたのでつい "Is it quiet?" と訊いてしまった。流石にこれには眼を見開き笑いながら  
 "No, not quiet." 。それはまあ、そうでしょう。

 ストラットフォード・アポンエイヴォンでは宿の女将さんが親切で大変楽しく過ごす事ができた。チップを1ポンド置いて宿をでた。
 列車には予想通り昨日会った日本人女性も乗ってきた。レミントンでの乗り換えの時彼女も気づいた。ユースで知り合ったオーストラリアからの女性2人も一緒だ。2人は1年間の予定との事。

 オックスフォードで下車し、荷物はコインロッカーに預けた。日本人女性も下車したがここでお別れ。オックスフォードと言えばオックスフォード大学しか思い浮かばない。イギリスまできたので最後にオックスフォード大学の周囲をうろついてみようとの軽い気持ちである。
 下車してすぐに近くに居た人にどこにあるか尋ねたら、40ほどあるのでオックスフォード大学だけでは答えられないと言われ、ええっ!となった。それまで、学部ごとに校舎が違うだけで大学は1つだと、大きな勘違いをしていた。なんと恥ずかしい。40ほどのカレッジから成り立つ総合ユニバーシティーである。
 イギリスとイングランドとかオックスフォード大学とカレッジとかこの国はどうも解りにくい。
 予定の列車の時刻まで近くにあるカレッジの周辺を歩いてみた。中に入れるかは分らなかったが入らずに、周辺で街の雰囲気を楽しむだけにした。

 イギリス最後の夜である。ロンドンに戻ってきた。少し前に1週間滞在したホテルに宿泊している。明日は花の都パリ。憧れの街の一つでもある。どんな素敵な街なんだろう⁉
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