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第四章
第27話 打合せ(公判・原告尋問)
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第一回公判が終わって3週間が経過していた。そこでは、起訴事実の確認を行っただけである。明日が第二回公判・原告尋問が行われる日だ。それに備えて神野は最終確認に山本法律事務所を訪れていた。
Kスポーツクラブでの現場検証から数か月が経過していた。現場検証後も村井邦彦氏、仙人とは何度か電話で連絡を取り合っていた。特に仙人は現場検証に立ち合っただけに、裁判には興味津々だった。第一回公判では無観客だったが、2人とも原告尋問からは、毎回必ず傍聴に行くと言っていた。
いつも通り中本秘書がいつもの部屋に案内してくれる。今日もパンツスーツが決まっている。初対面の時から誰かに似ていると思っていたが、女優の吉高由里子に容姿も雰囲気も似ているようだ。
「ご苦労様です。コーヒーで良いでしょうか?」
「有難う。今日は少し砂糖を多めに頼んます」
「砂糖はいつもセルフですよ」
「えっ? あ、そうだった。そうでしたね。惚けてますね、私」
「明日の事で、緊張してますか?」
「ン…、いや、別に緊張はしてないと思いますが…、してるかな?」
「明日は原告尋問ですから、神野さんは緊張する事はないですよ。緊張するのは原告です」
「そうですね。まあじっくり聴かせて貰います」
美人秘書と入れ違いに山本弁護人が入って来た。一応、立ち上がって挨拶をする。
「どうも。明日はよろしくお願いします」
「あ、こちらこそ」
「ところで先生、さっき見事に秘書の方と入れ違いに先生が入室されたんですが、外で我々のやり取りを聴いてました?」
「ハハハ、いやあまりに楽しそうに話してたんで邪魔しちゃ悪いと思いましてね」
「何を、ご冗談を。実際のところ、私の緊張を解す為に秘書の方と話させました?」
「流石神野さん、よく気づきましたね。まあそれも秘書の仕事のうちです」
「いつも落ち着いてて頼りになりますね」
「言っときます。さて、今日は『原告尋問』に対する最終打ち合わせです。以前にも話してますが、公判の順序としては、最初に原告が虚偽を述べない旨の宣誓をします。それから検察官が尋問をしていきます。検察官の尋問が終われば、次に弁護人つまり私が原告に尋問します。最後に裁判官から確認の質問があって終了となります」
「あの原告の描いた図面の通り述べれば完全に虚偽になりますが、これはこちらから指摘できますか?」
「勿論指摘はできます、弁護人からですけど。場合によって偽証罪で訴える事もできますが、完全な証拠がないと立証するのは難しいですね。また立証できても、故意と認められない限り、偽証罪を成立させるのは難しいです」
「そうですか、ふうん」
「だけど、これを積み上げると供述内容の信憑性が疑われる事になります。裁判官の信用を失い不利になりますね」
「そうですよね……」
「私が予定している尋問とは別に、検察官からの尋問に対する答え方によって改めて尋問する事も出てくると思います。そこで神野さん、一つぜひやって欲しい事があります」
神野、真剣な表情になる。
「はい」
「原告の答えた内容に虚偽があれば、それをメモって欲しいんです。その時、私に分かるようにさり気なく左手の肘から先を立てるように軽く動かしてくれますか? こちらの予測してなかった虚偽発言があれば、追及の対象になります」
「なるほど、分かりました」
「それから公判終了後に、原告が虚偽した内容と事実を、尋問内容と共に一覧にしてパソコンに打ち込んで欲しい。それを後日見せて欲しいんです」
「分かりました。お安い御用です」
その夜、神野は村井邦彦氏、仙人に最終確認の電話を入れた。
仙人への電話の最後に、この一言を付け加えた。
「仙人、最後に一つ頼みがあるんだけど」
「え、何?」
「弁護人の先生にも村井さんにも内緒なんだけど………………………………」
「OK、ヒロさん、了解!」
Kスポーツクラブでの現場検証から数か月が経過していた。現場検証後も村井邦彦氏、仙人とは何度か電話で連絡を取り合っていた。特に仙人は現場検証に立ち合っただけに、裁判には興味津々だった。第一回公判では無観客だったが、2人とも原告尋問からは、毎回必ず傍聴に行くと言っていた。
いつも通り中本秘書がいつもの部屋に案内してくれる。今日もパンツスーツが決まっている。初対面の時から誰かに似ていると思っていたが、女優の吉高由里子に容姿も雰囲気も似ているようだ。
「ご苦労様です。コーヒーで良いでしょうか?」
「有難う。今日は少し砂糖を多めに頼んます」
「砂糖はいつもセルフですよ」
「えっ? あ、そうだった。そうでしたね。惚けてますね、私」
「明日の事で、緊張してますか?」
「ン…、いや、別に緊張はしてないと思いますが…、してるかな?」
「明日は原告尋問ですから、神野さんは緊張する事はないですよ。緊張するのは原告です」
「そうですね。まあじっくり聴かせて貰います」
美人秘書と入れ違いに山本弁護人が入って来た。一応、立ち上がって挨拶をする。
「どうも。明日はよろしくお願いします」
「あ、こちらこそ」
「ところで先生、さっき見事に秘書の方と入れ違いに先生が入室されたんですが、外で我々のやり取りを聴いてました?」
「ハハハ、いやあまりに楽しそうに話してたんで邪魔しちゃ悪いと思いましてね」
「何を、ご冗談を。実際のところ、私の緊張を解す為に秘書の方と話させました?」
「流石神野さん、よく気づきましたね。まあそれも秘書の仕事のうちです」
「いつも落ち着いてて頼りになりますね」
「言っときます。さて、今日は『原告尋問』に対する最終打ち合わせです。以前にも話してますが、公判の順序としては、最初に原告が虚偽を述べない旨の宣誓をします。それから検察官が尋問をしていきます。検察官の尋問が終われば、次に弁護人つまり私が原告に尋問します。最後に裁判官から確認の質問があって終了となります」
「あの原告の描いた図面の通り述べれば完全に虚偽になりますが、これはこちらから指摘できますか?」
「勿論指摘はできます、弁護人からですけど。場合によって偽証罪で訴える事もできますが、完全な証拠がないと立証するのは難しいですね。また立証できても、故意と認められない限り、偽証罪を成立させるのは難しいです」
「そうですか、ふうん」
「だけど、これを積み上げると供述内容の信憑性が疑われる事になります。裁判官の信用を失い不利になりますね」
「そうですよね……」
「私が予定している尋問とは別に、検察官からの尋問に対する答え方によって改めて尋問する事も出てくると思います。そこで神野さん、一つぜひやって欲しい事があります」
神野、真剣な表情になる。
「はい」
「原告の答えた内容に虚偽があれば、それをメモって欲しいんです。その時、私に分かるようにさり気なく左手の肘から先を立てるように軽く動かしてくれますか? こちらの予測してなかった虚偽発言があれば、追及の対象になります」
「なるほど、分かりました」
「それから公判終了後に、原告が虚偽した内容と事実を、尋問内容と共に一覧にしてパソコンに打ち込んで欲しい。それを後日見せて欲しいんです」
「分かりました。お安い御用です」
その夜、神野は村井邦彦氏、仙人に最終確認の電話を入れた。
仙人への電話の最後に、この一言を付け加えた。
「仙人、最後に一つ頼みがあるんだけど」
「え、何?」
「弁護人の先生にも村井さんにも内緒なんだけど………………………………」
「OK、ヒロさん、了解!」
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