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第二章
第13話 山本弁護士2
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村井氏が神野に代わって質問する。
「山本さん、そうすると弁護人費用はどのぐらいになりそう?」
「勝った場合は、最高でも20万までにします。負けたらその半分ぐらいに」
神野は費用に関しては少し安堵した。欲のない人だ。流石、村井邦彦の友達だ。こうなると、気になるのは勝算だ。神様が判決を下してくれるのであれば、100%勝てるが。
「負ける事も有りますか?」
「勝つつもりですが、裁判官も神様じゃないので絶対とは言い切れません」
「そうですよね。神様が天から裁判官に適切な助言をしてくれると良いですけどね」
「神様は居ないんで、我々が頑張るしかありません」
ここで、村井氏から質問が出る。
「山本さん、裁判は裁判官によって違いは出るかい?」
「ん、そうだね。一人、ちょっと面倒なのは居るね」
「どういう風に?」
「権威に弱い…と言うか、『長い物には巻かれろ』と言うか。それに、『疑わしきは罰せず』の基本原則を無視して、自分の勘を優先させたり」
「最悪じゃない」
「そんな判事が居るんですか?」
「早く引退してくれると良いんですが、なかなか辞めそうにありません」
「そいつが裁判官になっても勝訴する為には、『ストレッチングを覚えて貰おうとした理由』をきちんと解ってもらう必要があるな」
「そう、その通り。村井さん、貴方は弁護士の素質がありますよ」
「そうだ。村井さんに弁護人、頼もうか⁉ 無料でやってくれる?」
(村井氏、苦笑い)
苦笑いしながら、村井氏が神野に問いかける。
「ヒロさん、どう? 山本さんに弁護人依頼する気になったかい? 気になる事があれば、今のうちに訊きまくっておいたら良いよ」
「うん。裁判の仕組みというか、最初の裁判と高等裁判、最高裁の審議の違いを知ったのでどうしても最初の裁判に賭けたいですね」
「じゃあ、決まりだな」
「うん。山本弁護士、ぜひお願いします」
「分りました。ただその前に改めてもう一度、現場での行動、神野さんの推察を聴かせてもらえますか?」
神野が説明しようとした時、再度村井氏が質問する。
「ええっと、その前に山本さん、もう一つ質問」
「はい、何でしょう?」
「こういう事はできませんかねえ? 神野さんが国選弁護人を依頼する時、山本弁護士を指定する」
「基本的にそれはできません。知人弁護士を選任できるのは私選弁護人の場合だけです」
「どういう選任の仕方をするのかな?」
「私選弁護人を選任するのに心当たりの弁護士が居る場合は問題ないですね。私選弁護人を選任したいが心当たりの弁護士が居ない場合は、弁護士会に依頼して選任してもらいます。選任を断られた場合は、国選弁護人を選任する事になります。この場合、初めから国選弁護人を選任するのと同じですね」
「私選弁護人に選任されるのを断る弁護士が国選弁護人を断らないのは考えられないね。違う?」
「国から支給される額だけなので誰もやりたがらない。現場検証とか真剣にやってたら大赤字になってしまう」
「だから、初めから結果は見えてるわけだ」
「残念ながら…」
「なるほど。そういう事ですか、よく解りました。いろいろ勉強になりました」
この後、改めて神野はKスポーツクラブでの出来事、自分の推察をゆっくり話した。
山本弁護士は静かに聴き入っていた。
「神野さんは原告よりも本店長や受付のおばさんの意志が強いと考えているんですね?」
「そうです。脚と尻の付け根あたりに当たっただけで会員を訴えるなんて考えられない。でも、本店長やおばさんならひょっとするとひょっとするんじゃないかと」
「よく解りました。このご依頼、御受けいたします」
「有難うございます。よろしくお願いします」
「『弁護人選任手続き』の書類が送られてきたらすぐ手続きしてください。その後、私の事務所にN警察署で作成した各書類が送られて来ます。そこからがスタートです」
こうして、山本弁護士との初会合は終わった。
私選弁護人を選任すれば楽勝だとばかり思っていたが、そうでもないようだ。
方向が決定した事ではスッキリした。でも、冤罪が晴れてもその費用を自分が負担するのはいささか抵抗を感じずにはいられない神野であった。
「山本さん、そうすると弁護人費用はどのぐらいになりそう?」
「勝った場合は、最高でも20万までにします。負けたらその半分ぐらいに」
神野は費用に関しては少し安堵した。欲のない人だ。流石、村井邦彦の友達だ。こうなると、気になるのは勝算だ。神様が判決を下してくれるのであれば、100%勝てるが。
「負ける事も有りますか?」
「勝つつもりですが、裁判官も神様じゃないので絶対とは言い切れません」
「そうですよね。神様が天から裁判官に適切な助言をしてくれると良いですけどね」
「神様は居ないんで、我々が頑張るしかありません」
ここで、村井氏から質問が出る。
「山本さん、裁判は裁判官によって違いは出るかい?」
「ん、そうだね。一人、ちょっと面倒なのは居るね」
「どういう風に?」
「権威に弱い…と言うか、『長い物には巻かれろ』と言うか。それに、『疑わしきは罰せず』の基本原則を無視して、自分の勘を優先させたり」
「最悪じゃない」
「そんな判事が居るんですか?」
「早く引退してくれると良いんですが、なかなか辞めそうにありません」
「そいつが裁判官になっても勝訴する為には、『ストレッチングを覚えて貰おうとした理由』をきちんと解ってもらう必要があるな」
「そう、その通り。村井さん、貴方は弁護士の素質がありますよ」
「そうだ。村井さんに弁護人、頼もうか⁉ 無料でやってくれる?」
(村井氏、苦笑い)
苦笑いしながら、村井氏が神野に問いかける。
「ヒロさん、どう? 山本さんに弁護人依頼する気になったかい? 気になる事があれば、今のうちに訊きまくっておいたら良いよ」
「うん。裁判の仕組みというか、最初の裁判と高等裁判、最高裁の審議の違いを知ったのでどうしても最初の裁判に賭けたいですね」
「じゃあ、決まりだな」
「うん。山本弁護士、ぜひお願いします」
「分りました。ただその前に改めてもう一度、現場での行動、神野さんの推察を聴かせてもらえますか?」
神野が説明しようとした時、再度村井氏が質問する。
「ええっと、その前に山本さん、もう一つ質問」
「はい、何でしょう?」
「こういう事はできませんかねえ? 神野さんが国選弁護人を依頼する時、山本弁護士を指定する」
「基本的にそれはできません。知人弁護士を選任できるのは私選弁護人の場合だけです」
「どういう選任の仕方をするのかな?」
「私選弁護人を選任するのに心当たりの弁護士が居る場合は問題ないですね。私選弁護人を選任したいが心当たりの弁護士が居ない場合は、弁護士会に依頼して選任してもらいます。選任を断られた場合は、国選弁護人を選任する事になります。この場合、初めから国選弁護人を選任するのと同じですね」
「私選弁護人に選任されるのを断る弁護士が国選弁護人を断らないのは考えられないね。違う?」
「国から支給される額だけなので誰もやりたがらない。現場検証とか真剣にやってたら大赤字になってしまう」
「だから、初めから結果は見えてるわけだ」
「残念ながら…」
「なるほど。そういう事ですか、よく解りました。いろいろ勉強になりました」
この後、改めて神野はKスポーツクラブでの出来事、自分の推察をゆっくり話した。
山本弁護士は静かに聴き入っていた。
「神野さんは原告よりも本店長や受付のおばさんの意志が強いと考えているんですね?」
「そうです。脚と尻の付け根あたりに当たっただけで会員を訴えるなんて考えられない。でも、本店長やおばさんならひょっとするとひょっとするんじゃないかと」
「よく解りました。このご依頼、御受けいたします」
「有難うございます。よろしくお願いします」
「『弁護人選任手続き』の書類が送られてきたらすぐ手続きしてください。その後、私の事務所にN警察署で作成した各書類が送られて来ます。そこからがスタートです」
こうして、山本弁護士との初会合は終わった。
私選弁護人を選任すれば楽勝だとばかり思っていたが、そうでもないようだ。
方向が決定した事ではスッキリした。でも、冤罪が晴れてもその費用を自分が負担するのはいささか抵抗を感じずにはいられない神野であった。
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